DXの潮流、CDOの挑戦
2020.03.04
INDUSTRY REVIEW~業界有識者が「DXの現在と未来」を語る第2回
流経大・矢野教授「トラック積載率は40%、物流のIT化は非常に遅れている」
著者 Bizコンパス編集部
花王は、サプライチェーンマネジメントが機能している
――物流のサプライチェーン全体が標準化されるために必要なことはなんでしょうか?
矢野:ポイントになるのは、「荷主が物流を考える」ことです。たとえば、メーカーが製品パッケージを標準化すれば、倉庫内での画像認識によるピッキングや梱包は劇的に自動化が進むはずです。
そのために必要なのは、企業内、企業間での連携です。企業内でみると、営業販売部門は商品の種類を増やしたいものですし、生産部門はコストを下げるために大量生産を施行します。同じメーカー内であっても「店舗の棚で少しでも目立つようパッケージに独自性を出したい」という開発やマーケティング部門の意向があれば統一できない。こういった部門間での利害を調整する、さらに企業間の利害を調整してサプライチェーンマネジメント(SCM)を機能させていくことです。たとえば花王は、自社だけでなく取引先の小売の細かい情報を会社全体で共有しています。トヨタがジャストインタイムを実現できているのもサプライヤーとの企業連携によるところです。
――物流のIT化の先には、MaaSによるトラックやドローンの自動運転などデジタルテクノロジーによるロジスティクス変革の議論も盛んになっていますが、それによって物流現場は変わるのでしょうか。
矢野:トラックの一般道路での自動運転は、なかなか簡単にはいかないでしょう。新東名高速道路や新名神高速道路、港湾地区で自動運転のトラックを走らせるといったことはできるかもしれない。あるいはドローンを過疎地などで利用するといったことはあるかもしれませんが、全国すべてというのはまだ先の話でしょう。
とはいえ、現状、国内の物流業のデジタル化、IT化は周回遅れですが、決して衰退産業ではありません。物流業界以外のプレイヤーも参入し始めており、フロンティアともいえる分野です。アマゾンは、倉庫や在庫管理の自動化に膨大な投資をすることで、即日配送など物流面からECのビジネスモデルに付加価値をつけることで、物流のメガプラットフォーマーになりました。国内の物流も、今後、劇的に変革する可能性があり、成長のポテンシャルを大いに秘めています。
――本日はありがとうございました。
