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Bizコンパス

DXの潮流、CDOの挑戦
2021.04.23

INDUSTRY REVIEW~業界有識者が「DXの現在と未来」を語る第10回

三菱ケミカルHD浦本CDO「製造業DXは、現場改善と全体変革の“両利き”で加速する」

著者 Bizコンパス編集部

商品も顧客も違う、共通言語が異なる事業部をどう結びつけるか?

:三菱ケミカルホールディングスでは、DXグループ全体で3つのポートフォリオをサポートするものとして、「①共通ツール、②サービス環境、③知見(MCHCメソッド)」が挙げられています。冒頭で「デジタルプレイブック」について少し言及いただきましたが、これらについてより詳しく教えていただけないでしょうか。

浦本:私たちは、DXの活動を全社に拡張するために、MCHCメソッドとして、さまざまなドキュメントやツールを作成しています。その1つが一般にも公開している「機械学習プロジェクトキャンパス」です。

 機械学習など技術を用いたデータの可視化や分析は、どの会社でも注目していますし、比較的簡単にプロジェクトを始められるのではないでしょうか。しかしながら、何を持ってプロジェクトの成功とするのか (いつ終了するのか)、あるいは最終的にシステム化するのか、ワンショットの分析ができればよいのか。そもそも訓練データとしては何があって、正常なデータと異常なデータの比率はどれくらいなのか。そういったことが明確にならないまま、プロジェクトを走らせていることが散見されます。

 この問題を解決するために作ったのが、三菱ケミカルホールディングスグループで実際に進められている数十のプロジェクトからの知見をもとに作成した、機械学習プロジェクトキャンパスです。成功の指標がなければ、そのプロジェクトが成功したのか、あるいは失敗したのか判断できません。それによってプロジェクトがだらだらと続くことになってしまいます。機械学習プロジェクトキャンパスを使えば、プロジェクトの目的を明確化することが可能になり、こうした事態を防ぐことができます。

機械学習プロジェクトキャンパスは、プロジェクトで検討が必要な項目を12の要素に分け、すべて埋めることで成功に必要な要素を過不足なく検討できるツールとなっている。

 先ほどご紹介した「デジタルプレイブック」と呼んでいる、ビジネスパターン集もあります。三菱ケミカルには大きな事業部がいくつもあり、石油化学製品、フィルム、プラスチックなどの機能性商品など、それぞれで売っているものも、売り方も、購入してくださるお客さまも異なります。このようにビジネスが事業部によって大きく異なるため、一緒に取り組むときの共通言語がなかったのです。

 そこで共通言語としてさまざまなビジネスのパターンを用意して、そのパターンを組み合わせることでそれぞれの事業に合ったソリューションを創り出すようにしました。そのパターンを集めたものがデジタルプレイブックです。

 このデジタルプレイブックを用いて、事業部門と私たちが一緒にワークショップを開催しています。その中で、「私たちの事業部はこの2つのアイデアを組み合わせるとよさそうだ」などと考えられるようになるなど、共通言語としてうまく機能していると感じています。

 デジタルプレイブックを公開し始めたのは2018年からなのですが、もうひとつ「デジタルテクノロジーアウトロック」というものも作成してきました。デジタルテクノロジーアウトルックは「機械学習やブロックチェーン、量子コンピューティングといった最新技術が、世間一般的な評価ではなく、三菱ケミカルホールディングスの各事業会社にとってどんな意味合いを持つのか、また、そうした技術を今すぐ使うべきなのか」といった示唆をまとめたものです。それらを事業会社に提供することで、デジタル技術についての共通言語化の促進にも注力をしました。

:浦本さんは「もっとDXを身近に考えられる人材を育成したい」とも述べられています。そのあたりについてはいかがでしょうか?

浦本:DX人材の育成プログラムとしては「デジタルユニバーシティ」という取り組みをしていまして、昨年はかなり力を入れました。大きく3つのコースがあります。

 まず、DX推進の中核を担う「データサイエンティスト育成コース」では、Pythonなどのプログラムを書いてデータサイエンスを利用する人材を、週1回6カ月間程度の講座で育成します。そのデータサイエンティストと事業部門とをつなぐ役割として、事業部門長や企画人材を対象にした、プログラミングなしでデータサイエンティストの仕事を学ぶ数日間の講座も用意しています。

 会社全体の底上げのために、全社員向けのeラーニングのパッケージも作りました。昨年はコロナ禍の影響もあったのか、予想よりもダウンロード数が多かったです。今は社内限定ですが、機械学習プロジェクトキャンパスのように、より広く活用してもらいたいと考えていまして、3月には、内容を書籍としてまとめ『DXの教養 デジタル時代に求められる実践的知識』というタイトルでインプレス社と共著で出版しました。

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