自社のビジネスをDX(デジタルトランスフォーメーション)しようとしても、どこから手をつけたものかと、困っている人も多いでしょう。
DXは、その実行主体をどこに置くかによって、結果が大きく異なります。自社における課題が何なのか、それを解決するためにはどういうフォーメーションが最適なのか、といったようなことを事前に見極めることが重要となります。
本稿では DX の第一歩ともいえるデータ活用にフォーカスし、3回に渡って解説します。
第1回のテーマは「なぜデータ活用に注目が集まっているのか」です。DX を語る文脈においては、たとえばハイレベルなものでは、社内システムのマイクロサービス化や、投資比率の変更、アジャイルでの開発体制といったような、耳慣れないキーワードが踊りがちです。
しかし、 DXの“一丁目一番地”は、データ活用です。データ活用に関連するキーワードとしては、ビッグデータやデータサイエンス、更には AI やディープラーニングといったワードがあり、一緒に語られることが多いです。
DXは、業務変革というビジネス全体を捉えたワードです。それなのになぜ、ビッグデータやデータサイエンス、AIといったキーワードとともに語られるのか?そしてなぜ企業は、DX推進のためにデータ活用に力を入れる必要があるのか?解説していきます。
目次
かつてデータは「何かあったときのための保険」でしかなかった
IT化の進行により、ここ十数年のビジネスシーンでは、大量のデータが発生するようになりました。ここでいう“大量のデータ”とは、(当時の)既存のデータベースで扱うことが困難であるようなデータ量、たとえばペタバイト(PB、約1,125兆バイト)級のサイズのデータです。
具体的にどのようなデータが大量のデータになるのかというと、既存の社内システムで扱う顧客属性や契約情報などのデータを更に高精細化した詳細な履歴情報や、各種アプリケーションや装置が吐き出す生のメトリクス(指標)情報などです。IoTや OT (Operational Technology)といったものも、データの増加に一役買っています。
社会が大量のデータが生成される時代へと移り変わっていく一方で、そのデータを収容する社内の情報システムは、既存の企業ではなかなか改革が進みませんでした。というのも、大容量のデータが生成されるシステムは、監査やセキュリティを目的としたログ保存の用途が中心であり、どちらかというと「データを分析して、攻めに利用する」というよりは、「何かあったときのための保険」という“守り”の意味合いが強く、データの保存期間も、法令に定められた期間だけというケースが多く見られました。