経済産業省が2018年に発表した研究資料「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開』~」が、ビジネスシーンで大きな注目を集めています。
このレポートでは、日本でデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が進まなければ、2025年以降に、年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある、ということが警告されています。同レポートではこの大きな経済損失を「2025年の崖」と表現し、企業に対して、速やかにDXを推進するように求めています。
しかしながら、レポートの発表から1年以上経った現在、DXに成功した企業はあまり多くないようです。同省が2019年10月下旬に発表した「産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進」という文書では、“多くの企業ではDXを進めるために、デジタル部門を設置する取り組みが見られる”と評価しながらも、“実際のビジネス変革には繋がっていない“と、DXが進んでいない現状を指摘しています。
なぜDXは進まないのでしょうか? そして、日本企業が「2025年の崖」から落ちないためには、どうすれば良いのでしょうか。今回は、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)が開催した、DXに関するセミナー「Enterprise Cloudセミナー」にて解説された、日本企業でDXが進まない理由と、DXを推進するための環境をどのように構築するべきかについて紹介していきます。
日本でDXが進まない理由は「部門間のデータ連携」がないから
セミナーで最初に登壇したのは、NTT Comの飯塚淳史氏です。飯塚氏は、日本企業でDXが進まない理由の1つに「部門間でデータが連携されていないこと」を指摘。その具体的な例として、コンタクトセンターとマーケティング部門における、顧客情報の「断絶」を指摘しました。
「多くのコンタクトセンターでは、電話やWebサイト、メールなどでの問い合わせに対して適切に応対するために、CRMなどを利用して顧客情報を管理しています。一方マーケティング部門においても、販売機会の創出などを目的としてWebやSNSでキャンペーンなどを実施し、顧客情報を収集しています。
問題は、こうして収集された2つの顧客情報が、バラバラに管理されている点です。そのような状態では、顧客の行動を統合的に把握するような取り組みはできません。データのサイロ化(孤立化)を見直さないと、DXの本格展開も難しいでしょう。DXを実現するためには、社内外で生成・蓄積されたデータを、柔軟かつ安全に連携し、素早く利用するためのプラットフォームが必要になります」(飯塚氏)