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DXの潮流、CDOの挑戦
2021.06.04

共創によるビジネスイノベーション第7回

なぜ日本の“強い現場力”が、DXの足かせになるのか?『Why Digital Matters? ー“なぜ”デジタルなのか』著書・村田聡一郎さんインタビュー

著者 Bizコンパス編集部

 日本だけが世界の経済成長から取り残されている。なぜなら、いまだデジタルではなく、人を走らせる経営を続けているから。そして“現場が優秀すぎる”からだ――。

 刺激的かつ納得のロジックで話題となった『Why Digital Matters? ー“なぜ”デジタルなのか』。その著者がSAPジャパンの村田聡一郎氏です。2021年6月3日に開催されたC4BASEオンラインイベント『今さら聞けないDX~DXの必要性を今一度認識し「これから」を考える』に登壇した村田氏に、NTTコミュニケーションズの戸松正剛がインタビュー。イベント前に共有しておきたい課題と危機意識、そして希望について伺いました。

村田氏が登壇した6月3日のイベントは、C4BASEのサイトにて見逃し配信を行っています。さらに6月16日には、村田氏によるオンラインのカウンセリングセッションを開催します。詳しくは最終ページの案内をご覧ください。

現場のカイゼンによる一本足打法は限界だ

戸松:村田さんには、日本のDXの現状はどう見えていますか?

村田:コロナ禍に押されて急に進み始めた面はありますね。特にこうしたオンラインミーティングは劇的に普及しました。

 2000年頃、私はヒューストンに住んでいましたが、国土が広いアメリカでは当時から当たり前のようにテレワークが使われていました。その意味では日本は20年遅れでしたが、「対面ではなければ仕事ができない」神話が、いい意味で破壊されましたね。

村田 聡一郎 氏|SAPジャパン株式会社 インダストリー&バリューアドバイザリー統括本部 IoT/IR4 (Fourth Industrial Revolution) ディレクター  米国Rice UniversityにてMBA取得。米系IT企業・本社駐在、ITスタートアップを経て2011年SAPジャパン入社。SAP HANA、クラウド、IoTなどを利活用した顧客およびパートナーとの共同イノベーション事業開発に関わる。海外事例にも精通し、講演・執筆など多数。SAPグローバルの社内CSRコンテストOne Billion Livesの初年度Winnerとなり、地震防災ネットワーク構築活動「my震度」を立ち上げ。またこの活動で協業中の白山工業株式会社にて社外取締役に就任。現在トラック物流の効率化を促進するデジタルプラットフォーム「合い積みネット」の立ち上げ中。

戸松:一方でDXの必要性が叫ばれている割に「遅々として進まない」との声も多く聞こえます。

村田:全般的にみれば、日本のデジタル活用は残念ながら世界と比べて20年以上遅れています。ちょうど平成の30年間の日本経済の停滞とも重なる。実際、今になって「お祭り」のようにDXが囃し立てられているのは日本だけで、他国からすれば10年以上前に一回りしている内容ですからね。そろそろ目を覚ますべき時かなと。

戸松:村田さんは、日本のDXが遅れている大きな理由として、日本企業は“ヒトの力”“現場の力“が優秀過ぎるからだと指摘されています。製造業のカイゼンに代表されるような、現場のヒトたちのレベルの高さは、高度経済成長を支えた日本的経営の根幹でした。しかし、この「現場力の強さ」が、今はむしろアダになっていると。

戸松 正剛|NTTグループ各社にて主にマーケティング・新規事業開発に従事。直近ではスタートアップの成長・Exitの支援や、Jリーグ等プロスポーツ業界とのアライアンスも手掛ける。現在はNTTコミュニケーションズの新規ビジネスの共創コミュニティ「C4BASE」でマネージングディレクターを務める https://www.ntt.com/business/lp/mirai_biz.html。 同志社大学卒。米国ヴァンダービルト大学にてMBA取得。

村田:はい。高度成長期から90年代前半までは、あきらかに現場力こそが日本経済の牽引者でした。製造業が顕著ですが、それはサービス業でもホワイトカラーでもブルーカラーでも変わらない。

 問題が発生しても、現場にいる社員たちの「優秀さ」や「勤勉さ」、「長時間労働もいとわない労働観」が発揮されて、なんとか解決していってしまう。経営層が手を出さずとも、日々現場はカイゼンされて回っていく。この“最強の現場力”によって、日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われるまでになりました。

戸松:僕もアメリカに住んでいた時期があるので実感していますが、日本の「未来のために現在を犠牲にできる国民性」もあると踏んでいます。「未来がよくなるためなら、いま多少つらくても頑張る」とマシーンのように自分を動かす。それで結果も確実に出る時代だったし、経済全体も右肩上がりだったからなおさらですよね。「現場で一人ひとりが頑張ればなんとかなる」が、とても強いマインドセットになっていると思います。

村田:そうですね。日本はなまじ「カイゼン一本足」で世界トップクラスになってしまった。ところが、2000年頃を境に、世界の様相は変わりました。各国がデジタルという“第2の労働力”を取り入れ始め、「ヒト」と「デジタル」の両輪で生産性を伸ばし始めたのです。日本以外のG7各国の「名目GDP(※)」が2000年から2019年までの19年間で40%~100%増えているのに対し、日本はわずか6%しか増えていません。

※国内の生産数量に市場価格をかけて生産されたものの価値を算出し、すべて合計したもの。ここから物価の変動による影響を取り除いたものが「実質GDP」。

村田:そして「国民1人あたりGDP」は2000年の2位から右肩下がりで落ちつづけ、2018年には26位に。これは、現場の人たちが手を抜き始めたから……ではありません。日本の現場は相変わらず高い現場力を発揮していますが……。

戸松:変わったのは、それ以外の国々ですね。

村田:はい。欧米はもちろん新興国は、90年代後半から2000年代にかけてITやインターネットなどを活用し、ヒトに加えて「デジタル」に仕事をさせるようになりました。ソフト、ハード共に処理能力が飛躍的に伸びたこともありますが、何よりも他国は日本のずば抜けた「現場力」を真似したくてもできなかった一方、デジタルは誰でも「買ってくる」ことができたからです。

戸松:ところが、日本だけが、相変わらずヒトを走らせていた。

村田:ええ。いかに日本の現場力が強いとはいえ、24時間年中無休で働くデジタルとヒトが張り合うのは分が悪い。加えて日本の労働年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少に転じ、直近では「人手不足」が深刻になりました。ところが日本はもう50年以上カイゼン一本足でやってきていますから、現場も経営層のほとんども、現場力に頼る以外のやり方を知らないんです。

 日本には優れた現場力、カイゼン力があったが故に、逆にデジタルへのシフトには大きく取り残されてしまった。皮肉な話ですが、強みが弱みに転ずるのはよくある話でもありますよね。肝心なのは、「なぜそうなったのか?」を正しく認識すること。正しく認識できれば、対策も打てます。ひとことで言えば、「DXはカイゼンではない」んです。このあたりは、当日、セミナーでお話できればと思います。

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