ネイルプリンターの試作機を使った実証実験で高い評価を獲得し、プロジェクトは次のフェーズへ突入します。それは“もの”売りから“こと”売り、サブスクリプションのビジネスモデルの導入検討でした。
「長年、私たちはメーカーとして製品を量販店に置いて売るビジネスモデルでした。しかし、常にお客さまとつながり、多様なタッチポイントに対応するにはサブスクリプションモデルを確立すべきだと考えました。
そこで、相談したのがNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)です。サブスクリプションに特化した『Subsphere(サブスフィア)』を提供していることはもちろん、また多くのイノベーティブな企業が加盟する『C4BASE』を運営されていたことにも、可能性を感じました」(小野田氏)
C4BASEは大企業で新規事業やイノベーションを担当する約2,400名のビジネスパーソンが参加する、NTT Com主宰の共創コミュニティです。社会的に意味のある、価値のあることを生み出すことを目的に、各社のアセットを組み合わせた共創による新製品やサービスを創出する取り組みを行っています。

NTTコミュニケーションズ株式会社
C4BASE DX Lander
川島美由紀氏
カシオからの依頼を受けてコンサルティングを担当したNTT Comの川島美由紀氏は、提案のポイントは2つあったと振り返ります。
「まず、お客さまの抱える事業課題を把握し、サブスクリプションというビジネスモデルへの転換で必要なことや、どのようなターゲットを狙うべきかをステップ論でお話しさせていただきました。そして2つ目は、新たな化学変化が起こること目指し、さまざまなアセットをお持ちのC4BASEの会員様とカシオ様をマッチングすることを提案しました」

カシオ計算機株式会社
事業開発センター
ビューティー企画開発部
企画室
林加寿子氏
マーケティングの観点からプロジェクトに関わったカシオの林加寿子氏は、あえて日常的にネイルに対して積極的な女性を狙わないというターゲットを選定したと振り返ります。
「たとえばイベント好きなママや好きなキャラクターの“推し活”をしている女子、あるいは仕事柄や自分の爪に自信がなく、ネイルに積極的にはなれないOLなどのペルソナを設定しました」
色やデザインの自由度が高く、短期間で着替えられ、TPOに合わせて手軽に自己表現できるネイルプリンターの特性は、ネイルに関心の薄い層にも広く受け入れられると考えたのです。
そして2020年、流通業をはじめとするC4BASE会員との共創による実証試験の第2弾がスタートします。