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「役に立つ」より「意味を持つ」商品がイノベーションを生む
2019.12.06

共創によるビジネスイノベーション第1回

「役に立つ」より「意味を持つ」商品がイノベーションを生む

著者 Bizコンパス編集部

世界で売れるためには “感性的価値”が必要である

3番目に登壇したのは、セイコーウオッチ株式会社でデザイン部長を務める種村清美氏。同社は世界的にも珍しいマニュファクチュール(腕時計の駆動装置から自社で一貫製造する時計メーカー)の1つです。

 同社の高級腕時計のフラッグシップモデルが「グランドセイコー」です。1960年に「世界最高峰の腕時計をつくる」という意気込みのもとに誕生したグランドセイコーは、日本では高い評価を得ている一方で、世界的な認知度に課題があったといいます。

「これまでのグランドセイコーは“機能的価値”のみで売れていました。しかし、世界の高級腕時計市場に打って出るにはストーリー、フィロソフィといった“感性的価値”をいかに伝えられるかがポイントになります」(種村氏)

 感性的価値を訴求するために、種村氏が目をつけたのが、セイコー独自の駆動方式「スプリングドライブ」です。これは、秒針が「チッチッチ」と時間を刻むのではなく、ダイヤルの上を音もなく滑らかに流れるように動く点が特徴です。

 種村氏はこのスプリングドライブの感性的価値を世界にアピールするために、イタリアで開催される世界的デザインイベント「ミラノデザインウィーク」に出展することを計画しました。イベントでは、時の流れを感じさせる情緒的な映像をバックに、スプリングドライブが組み上がっていくプロセスを、12個のオブジェで表現しました。

 この展示は入場制限が出るほどの注目を集め、時計業界とは無縁なデザイン・アート系の雑誌など、多くのメディアに紹介されました。

「ともすれば日本の美意識は、『花鳥風月』『わびさび』といったようなアプローチになりがちですが、素直にものづくりを突き詰めれば、美意識は宿ります。今回はスプリングドライブという機能的価値を感性的価値に置き換えて発信したことが、良い結果を導いたと思っています」(種村氏)

「ビール業界を変えたい!」という思いが共感できるビールサーバーがある

 最後に登壇したのが、スプリングバレーブルワリー株式会社マーケティングディレクターキリンビール株式会社企画部主務の吉野桜子氏です。

 もともとキリンビールの社員だった吉野氏は、社長にクラフトビール(地ビール)事業の可能性を直談判。その結果、2015年に設立されたのがスプリングバレーブルワリーです。同社は現在、代官山、横浜、京都に醸造所併設の店舗を展開しており、多種多様なクラフトビールの飲み比べや、料理とのペアリングといった新しいビールの楽しみ方を提案しています。

「最近は“若者のビール離れ”とよく言われますが、まだ日本人の多くはビールの世界を知らないだけです。日本におけるビールは、仕事後に上司に酌をする、同僚と付き合いで飲むといった、会社生活のイメージが付きまといます。こうしたイメージを脱却して、価値観の多様化、ワークライフバランス、健康志向などにマッチする、新しい時代のビール文化を作っていく必要があると考えていました」

 同社のクラフトビール事業で特に活躍しているのが、最大4種類のクラフトビールが楽しめるビールサーバー「タップ・マルシェ」です。従来のビールサーバーよりも場所を取らず、複数のビールが飲み比べできることが受けて、現在では飲食店や居酒屋のみならず、映画館、スーパー銭湯、コワーキングスペースなどに広く導入されています。しかも、自社のみならず、他社ブランドのビールも扱っています。

「昔は、味が良ければビールは飲んでもらえました。そこに“情報”がプラスされ“頭”で感じるおいしさの時代に突入しました。

 現在は“口と頭と心”の時代です。日本のビールを変えていきたいというブルワリー(醸造所)の思いに共感する人が、タップ・マルシェで飲んでくれています。おいしいビールをつくる仲間同士で健全に競争し、手を取り合って、ワクワクするビールの未来を作っていきたいと考えています」(吉野氏)

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