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「役に立つ」より「意味を持つ」商品がイノベーションを生む
2019.12.06

共創によるビジネスイノベーション第1回

「役に立つ」より「意味を持つ」商品がイノベーションを生む

著者 Bizコンパス編集部

高速バスに女性客が増えたのは○○を改善したから

 小島氏のプレゼンが終わると、セミナーは本題である、ビジネスを“意味のあるもの”へシフトチェンジした、WILLER EXPRESS、カネカ、セイコーウオッチ、スプリングバレーブルワリーの担当者によるプレゼンテーションへと移りました。

 最初に登壇したのは、2006年に中長距離の高速バス事業に参入し、急速な成長を遂げているWILLER EXPRESS株式会社の平山幸司代表取締役です。業界では“後発組”に当たる同社は、市場に参入した際、従来にはなかったアプローチを取りました。

「私たちがまず取り組んだのは、車内のシートの改善です。従来のシートは狭く窮屈で、十分なプライベート空間も確保できていません。これらを解決することで単なる移動手段だった高速バスに“快適性”という新たな価値観がプラスできると考えました」(平山氏)

 同社が導入した初のオリジナルシートは、女性の寝顔を見られたくないという声を実現した「リラックス」です。このシートはベビーカーのフードのような「カノピー」で顔を隠せる構造になっています。

 そのほかにも、航空機のビジネスクラス並みの快適性を狙い、眠りのための機能が備わった「リボーン」などのシートを導入。これにより国内の高速バス事業は、年間309万人が利用するまで躍進。参入当初は、男性が利用する乗り物でしたが、利用者の7割が女性、5割が20代となりました。移動に“快適さ”という意味を持たせることで、高速バスを敬遠していた新たな顧客層の開拓に成功しています。

「私たちは創業20年に満たない新参者ですが、強みであるマーケティングの視点で事業を拡大してきました。これからもMaaSや自動運転などを含め、マーケティングと新たなテクノロジーにより、移動に新たな価値をプラスできるサービスを生み出していきたいと考えています」

なぜ化学メーカーが牛乳を作ったのか? しかも、なぜヒットしたのか?

 続いて登壇したのは、株式会社カネカのFoods & Agris Solutions Vehicle 乳製品事業開発Strategic Unit販促企画チームでチームリーダーを務める天川隼人氏です。化学メーカーとして知られるカネカは、SDGs(持続可能な開発目標)の視点から社会的課題の解決に向けた事業を展開しており、2018年からはその一環として、乳製品事業に参入します。

 カネカが乳製品事業に参入した背景には、日本で酪農家が激減し、生乳生産量も減っている背景があります。乳価は上昇しており、若者を中心とした牛乳離れなどから国内の牛乳市場は衰退しています。同社はこれを社会的課題としてとらえました。

「我々の事業は、乳製品を作って売るだけが目的ではありません。国内酪農家からの生乳の仕入れから、新商品の開発、生活者へのアプローチまでをワンストップで担う乳製品のプラットフォーム構築が狙いです」

 同社は乳製品事業として、まずは「牛乳」からスタート。しかし、コモディティ化した国内の牛乳市場に切り込むためには、正面からのアプローチからでは勝機は望めません。そこで新たな需要を掘り起こす「マーケットイン」の発想で、商品開発に取り組みました。

同社では、競合との差別化ポイントを「パン」と定めました。というのも、カネカはベーカリーや菓子店を対象とした業務向けのマーガリン、ショートニングなどの加工油脂やイースト菌などの食品素材において、国内で高いシェアを誇っていました。

「このような経緯から誕生したのが『パン好きの牛乳』です。牛乳単体なら濃いほうがおいしいといわれていますが、パン好きの方からは濃い牛乳はパンの味を邪魔するという意見が多く聞かれました。そこで、すっきりしてコクのある、パンの味を引き立てる商品を目指しました」(天川氏)

 牛乳ではなく、パンを前面に出す商品PRも功を奏しました。若い女性を中心にインスタグラムの投稿が急増。メディアに取り上げられる機会も増え、売り上げは順調に拡大しているといいます。

「ビジネスなので、酪農家の支援を通じながら利益を得ることも重要です。私たちは乳製品事業を200億円の規模に育てることを目指しています。そして日本ではブルーオーシャンである有機酪農、有機乳製品の分野に進出し、市場のプレゼンスを高めていきたいと考えています」(天川氏)

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