「先進的なビジネスアイデアがあるのに、予算がとれない……」
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進させる、新たなアイデアや技術を事業化するには継続的な「投資」が必要です。サーバーやネットワークなどのICTインフラ、PoC(試作開発の検証)でのAIやIoT、ビッグデータ解析、クラウドの活用などが挙げられますが、収益化の見込みが立っていない段階でこれらに大きな予算を投じるのは、難しい判断です。
そんな中でNTTコミュニケーションズ(以下NTT Com)が2019年3月に立ち上げたのが「Nexcenter Lab™(ネクスセンター・ラボ)」です。同ラボでは、ベンチャーやスタートアップを含む幅広い企業に対して、ICTリソースを必要な分だけ安価に提供するとともに、企業がPoCを通じて様々な企業とコラボレーションができる機会を作っています。
今回は、2019年10月の「NTT Communications Forum 2019」で講演されたNTT Comと日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)、レッドハットによるPoC事例を通じて、デジタルトランスフォーメーション(DX)につながる「イノベーションの起こし方」を紹介します。
大きな設備投資をしなくても、製品やサービスは開発できる
なぜNTT ComがNexcenter Lab™を立ち上げたのか、設立メンバーであるNTT国際通信の森田知樹氏は、以下のように説明します。
「企業の皆さまが何か新しい製品やサービスの開発プロジェクトを立ち上げるとき、新技術の検証やテスト開発、PoCが必要になると思います。しかし、そのためにはサーバーなどICTインフラへの設備投資やPoCを継続するための時間がかかることが、課題だと考えました。それらの課題を取り除き、大きな設備投資をしなくても、タイムリーに製品・サービスを開発できる環境を提供するために立ち上げたのが、Nexcenter Lab™です」
Nexcenter Lab™には、2つの特徴があります。1つ目は、NTTグループやコンセプトに賛同するパートナー企業が提供する、グローバルに利用可能なAI、IoT、ネットワーク、クラウド、データセンターといった最新ICTインフラや技術を備えていることです。
例えば、大容量データの高速並列処理を得意とするGPUサーバーを安定的・最適に運営するため、サーバールームには30KW以上を冷却できる水冷式ラックが設置されています。また、多数のパートナー企業が提供するサーバー機器やソフトウェア、AIの技術活用のユースケースモデル、実構築コンサルティング支援など、Nexcenter Lab™では幅広い分野のコンテンツが提供され、PoCの実施や新技術/サービスの開発・検証をすることができます。
2つ目は、オープンイノベーションを促進するコミュニティ活動の場が提供されていることです。森田氏は、「施設内にはプレゼンテーションスペースがあり、パートナー企業によるセミナーや勉強会が随時開催されています。これらの交流に加え、Nexcenter Labではパートナー企業のご紹介や企業のPoC等のご要望に応じたマッチングを提供しており、企業間の協業や共同PoCを支援しております」と説明。森田氏は、それによって、HPE、レッドハットによるコラボレーションPoCの取り組みが生まれたといいます。