ServiceNowを活用した、人手を介さない「ゼロタッチオペレーション」を実現するために、小山氏は以下の4点に留意したといいます。
1つ目は「手順の整理」です。5,000ページにもおよぶ手順書を、そのままシステムに投入するわけにはいきません。開発の効率化を図るため、最初に手順の分類を行いました。
「サーバー、ストレージ、ネットワークといった項目ごとに、単純な故障と複雑な故障に分類しました。復旧パターンを整理・分類し、共通項をまとめることで開発工数を減らすように心がけました」
2つ目は「データインポートの容易化」です。ゼロタッチオペレーションシステムを開発するにあたり、運用に必要な膨大なデータをCMDB(構成管理データベース)にインポートする必要がありました。しかし、データには取り込みやすいデータとそうではないデータがあったといいます。
「システムがそのまま読めるデータは取り込みやすいのですが、問題は人間だけが読めるデータです。たとえばエクセルで管理されたデータなどは、読みやすいようセルを統合し、色分けを行っている場合がありますが、そのままシステムに取り込むことは困難です。そこで変換ツールを活用することで、インポートを行いました」
3つ目は「オープンソースの活用による開発の簡易化」です。
「本来であれば、ServiceNowとEnterprise Cloudをダイレクトに接続すればいいのですが、それを実現するには、多くの開発工数がかかることがわかりました。そこでServiceNowとEnterprise Cloudとのつなぎにオープンソースの構成管理ツール「Ansible」を活用し、開発の簡易化、工期短縮を図りました」

4つ目は「運用保守で培った知見の導入」です。
複数のシステムを操作することによる誤操作を回避する機能、大規模故障時の暴走抑止機能、復旧措置が失敗してもリトライする機能などは、長年の運用から学んだノウハウをシステム化したものです。
「たとえばサーバーのリブート(再起動)で復旧しないケースでも、少し時間をおいてリトライすると立ち上がることがあります。これはサーバーのステータスが変化することで起こる事象ですが、“ゼロタッチオペレーション“システムにも、そうした知見を組み込んでいます」