SaaS型ITサービスマネジメントプラットフォーム「ServiceNow」は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進のためのプラットフォームが容易に構築できることから、多くの企業で導入が進んでいます。
特に、定型タスクを自動化するような、社内IT運用プロセスの効率化や見える化の実現に貢献するITSM(ITサービスマネジメント)の用途においては特にシェアが高く、ある統計によるとグローバルでは約5割、日本国内で約4割のシェアを獲得しています。
なぜServiceNowは、世界でも日本でも選ばれるのでしょうか?今回は、2019年6月に開催された「業務プロセスDXセミナー」の講演にて語られたServiceNowの特徴、企業に選ばれる理由について解説します。
セミナーに登壇した、ServiceNow Japan株式会社の谷田貝直人氏は、ServiceNowはもともとITサービスマネジメントの分野ではなく、ビジネス環境全体を包含する、もっと大きな思想から誕生したといいます。
「ServiceNow創業者のフレッド・ルディは、企業で働く普通の人々の日常業務の生産性を高めるaPaaS(PaaS型アプリケーション開発プラットフォーム)としてServiceNowを世に送り出しました。しかし提供当初は、aPaaSの価値がなかなか理解されにくかったようです。
そこで使用例として、社内IT運用プロセスの効率化や見える化などを実現するITSM(ITサービスマネジメント)を提案したところ、大きな反響を呼びました。このITSMをSaaSとして提供したことで、ServiceNowの認知度が高まりました」
現在、同社では、ServiceNowについて“企業で働く普通の人々の働き方を変えて、より付加価値の高い作業へとリソースを集中させる“という価値を提供するプラットフォームと定義しています。
「ServiceNowが目指しているのは、従業員の働き方改革を推し進め、さらには顧客の満足度を高めるDXを支援することです
働き方を変えるプラットフォームの構築においては、3ステップでのDXの推進が重要になります。まず業務の生産性を変革するDX、続いて従業員の体験を高度化するDX、そして顧客エンゲージメントを再構築するDXです。
たとえばコンシューマーの領域ではiPhone、Amazonの登場で電話や買い物の概念が大きく変わりました。一方でビジネスの領域ではメール、チャットの登場で業務は変わりましたが、まだまだ変革の余地を残しています」(谷田貝氏)
ServiceNowで創業より根強い人気を持つ看板ソリューションが、先述した「ITSM」です。冒頭でも触れた通り、グローバルでは約5割、日本国内で約4割のシェアを占めています。
なぜServiceNowがここまでのシェアを獲得できているのでしょうか。谷田貝氏はその理由について、さまざまなサービスを1つのデータベース上にまとめ、横断的かつ効率的に自動化できるソリューションであることを指摘します。
「ServiceNowが評価されている要因としては、社内のあらゆる部署で機能するサービスを、多彩なツールを組み合わせることにより実現できることにあります。しかも、1つのデータベース上で実行でき、サービス管理者や利用者、上級管理職といった立場に応じて、必要なデータを必要なかたちで共有できます」
ServiceNowの利用イメージ

ServiceNowはクラウドで提供されますが、利用者ごとに個別のインスタンス(仮想サーバー)が用意されています。
「アプリケーションを実装したデータベースを各ユーザーごとに1セットずつ割り当てています。バージョンアップの際も、ユーザーの都合のいいタイミング、たとえば業務に影響の出ない営業時間外などに実行できます。
SLA(サービス品質保証)については、サービス稼働時間は99.8%と定められていますが、実際それ以上の稼働率で運用しています。ServiceNowでは、データベースを収容するデータセンターを冗長化し、相互でデータを同期しているので、非常に高い信頼性、可用性を実現しています」
谷田貝氏はさらに、導入のしやすさも特徴として挙げました。
「導入を決断してから場合によっては、3カ月という短期間で実装できることも、ServiceNowの特長です。しかも、導入後9カ月で“元が取れる”という調査結果もあります。
ある日本企業のケースでは、サイロ化したITのプロセスを、ServiceNowのプラットフォーム内で標準化し、標準プロセスに当てはまらない部分は、カスタマイズで対応していますが、導入は短期間で完了しました。はじめにインシデントや問題管理、続いて変更、リリース管理、最後にCMDB構築、ディスカバリーを行いましたが、それぞれのプロジェクトを3か月単位で実行し結果を確認して次のプロジェクトを実施しています」
多くの日本企業で導入が進んでいるServiceNowですが、ServiceNow社が“日本最大級のユーザー”として認定しているのが、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)です。
NTT Comは導入効果として、「申請業務の自動化」、「セキュリティインシデント対応の自動化」それぞれの時間を大幅に短縮でき、「アジャイル型開発体制の整備」では短期間での対応件数を増加させることにつながったと言います。
中でもセキュリティインシデント対応の自動化により、以前は平均70分かかっていたところを平均5分まで、と14分の1に短縮できた事例は驚異的です。
NTT ComにおけるServiceNowの導入効果例

「自社内のIT基盤はもとより、当社が提供するネットワークやクラウド、音声システムといった様々なサービスの運用プラットフォームなどにServiceNowが組み込まれています。
これまでServiceNowを使い込んできたことで蓄積した知見、ノウハウを生かしたServiceNowの導入支援ができることが当社の強みです。」(NTT Com 廣瀬亮氏)
またNTT Comは、ServiceNowの国内最大級のユーザーとして、より安定した場所で重要なデータを保管したいと考えていました。このような意向と、市場のニーズを受け、ServiceNow社は日本国内でのデータセンター開設を決定しました。
「これまで当社を含め日本のお客さまがServiceNowを利用するには、海外のデータセンターを使うしかありませんでした。しかし、もうすぐ当社の東京、大阪にあるデータセンター『Nexcenter』で利用できるようになる予定です。日本国内にデータ保持ができることにより、今後ますますServiceNowの導入は加速していくと考えています」(廣瀬氏)
日本の電力・通信インフラは世界でもトップクラスです。また、治安も良いため、政情面での不安もほとんどありません。安定した国内で、データを保持・運用できることは、機密保持という面でも、大きなメリットといえそうです。
また、NTT Comは、ServiceNowのユーザーであると共に同社の協業パートナーでもあります。自社での利用や、ServiceNowの導入実績を評価され、日本企業としては初の“Service Provider Partner of the Year 2019”を受賞しました。

「5月にアメリカのラスベガスで開催された2万人規模のServiceNowアニュアルイベントで当社の実績が認められ、 “Service Provider Partner of the Year 2019”を受賞したことを嬉しく思います。当社にはユーザーとして培ってきた知見や、お客様への導入実績が数多くあります。これらをベースとしたServiceNowソリューションの提供を、今後も積極的に展開していきたいと思います」(廣瀬氏)
NTT Comが提供するServiceNowソリューション
