それでは、DXを見据えたときにIT部門の業務をどのように変えていくべきなのでしょうか。この点に関し、欧州で多くの企業にマネージドサービスを提供しているNTT Managed Services EMEA S.A.U.の弓場淳次郎氏は「まず自分たちの手にITを取り戻すべき」だと話します。

NTT Managed Services EMEA S.A.U.
Director of Global Business Development
弓場淳次郎氏
「欧米も含めて、多くの企業のIT部門はさまざまな業務をアウトソースしています。その結果、自分たちのIT環境がどうなっているのか把握できなくなってしまっているケースが少なくありません。
このような状態を放置すれば、LOB部門が自分たちに必要なビジネスアプリケーションをクラウドで勝手に構築するといった事態を招いてしまい、IT部門の存在意義が問われることになってしまいます」
たとえば新たにビジネスアプリケーションを構築する際、それに対応したベンダーに運用を丸ごと任せるといったケースは少なくないでしょう。しかし、ベンダーに運用を丸投げしてしまうと、何かあった場合、ベンダーの言いなりにならざるを得ません。
このリスクはM&Aによって他社を買収した場合などに露呈します。買収をした企業は早急にシナジーを生み出そうと考えるため、自社と買収先のシステム運用の一元化を図ります。しかし、自社と買収先それぞれのアウトソースベンダーが異なっており、なおかつ主導権をベンダーに握られていては運用の一元化は極めて困難です。場合によっては運用が複雑化し、さらなるコスト負担をベンダーに求められる可能性もあります。
「アウトソーシングでは、基本的に費用さえ負担すればこちらの要望にすべて対応してくれます。とはいえ運用を丸投げすれば当然主導権を手放すことになり、自社で蓄積されるべき知見もアウトソース先に流出してしまいます。
欧米企業では、こうした状況に対する強烈な反省が広がっており、アウトソースではなくマネージドサービスを選択する企業が増えています」(弓場氏)