Enterprise Cloud マネージドvプラットフォームを利用して実際にDR構成を構築する場合、まずNTT ComのVPNサービスである「Arcstar Universal One」を利用し、ユーザー拠点とクラウドを接続します。その上でVMwareのテクノロジーであるvCloud Availabilityを利用し、オンプレミス側からクラウドへ、仮想マシンをレプリケーションします。
レプリケーション後、クラウド側をDR構成のバックアップサイトとして使えるほか、クラウド側をメインサイトにして完全移行することももちろん可能です。
vCloud Availabilityの利点として、NTT Comの上原崇史氏は構築の手軽さを挙げます。
「vCloud Availabilityであれば、オンプレミス環境に『vCloud Availability Appliance』というVM(仮想マシン)をデプロイするだけで、クラウド環境との間でDR構成が組めるようになります」
操作が直感的にできることもメリットです。GUIで簡単にオンプレミスの仮想マシンをクラウドに転送できる上、任意のタイミングでフェイルオーバーしたり、元のオンプレミス側に処理を戻したりすることができます」
このようにレプリケーションでシステムを二重化してDR構成とした場合、ネットワーク設定が問題になることが少なくありません。具体的な課題の一つとして考えられるのはネットワークにおけるゲートウェイの設定です。
オンプレミスとクラウドの2つの環境を使ってシステムを二重化した場合、メインとバックアップ、それぞれのシステムのゲートウェイは、その接続環境に合わせて設定しなければなりません。
しかし単純にシステムを複製した場合、ゲートウェイのIPアドレスは同じになるため、複製先であるバックアップシステムのゲートウェイはクラウド側にあるにもかかわらず、オンプレミス側のゲートウェイに接続する形になってしまいます。このため、災害発生時などにメインサイト利用からバックアップサイト利用に切り替えるタイミングでゲートウェイを切り替えなければなりません。

しかしNTT Comの西田洋一氏によれば、Enterprise Cloud マネージドvプラットフォームを活用したDR構成であれば、ゲートウェイの切り替えは不要になるといいます。
「我々がご提案するDR構成は、複製元であるオンプレミスのゲートウェイも、あらかじめクラウド側のゲートウェイを利用するように設定しておくというものです。そうすることで、メインサイトのトラフィックはオンプレミスとクラウドをつなぐL2を介して、バックアップサイトのトラフィックはそのままクラウド上のゲートウェイに流れる形となり、デフォルトゲートウェイの設定を変える必要がなくなります。

しかもこの構成であれば、オンプレミス環境とクラウド環境で利用するインターネット接続回線は1回線で済むため、ネットワークコストの削減にもつながります」
さらにメインサイトからバックアップサイトに切り替える場合、通常はシステムのIPアドレスを変更する必要も生じますが、VMwareがライセンスフリーで提供している「NSX Edge」を利用することにより、これも不要になると続けます。
「NSX Edgeを利用すれば、オンプレミス環境とクラウド環境のL2接続が可能になります。こうすれば切り替え時のIPアドレス変更は不要ですし、クラウドとオンプレミスをハイブリッドで運用するような構成も可能になります。企業のクラウド活用促進に有効であると考えています」(西田氏)
なお、DR以外のEnterprise Cloud マネージドvプラットフォームの具体的なユースケースとしては、オンプレミスとクラウドを併用するハイブリッド構成が考えられます。
基本的にはオンプレミス環境でシステムを運用しつつ、システムを構成するサーバーの一部をクラウド側で運用するといった形です。またオンプレミスを利用しつつ、データの参照などの用途はクラウド側のシステムで担い、処理を分散するといった使い方も考えられるでしょう。