システムの二重化にかかるコストを削減する方法としては、構成をシンプルにする方法があります。たとえばデータの同期などを行わず、メインサイトのデータのバックアップだけを行っておき、トラブルが生じたときにバックアップサイトのシステムで復元するといった方法です。これならシステム構成の複雑化を避けられ、コスト負担を軽減できる可能性も高まるでしょう。しかしメインサイトからバックアップサイトへの切り替えに時間がかかる場合もあり、ダウンタイムの長さから業務に支障をきたしてしまう可能性があり、ビジネスの種類によっては許容できない場合もあります。
クラウドを利用し、コストを削減するのも一つの選択肢です。具体的には、メインサイトをオンプレミス、バックアップサイトをクラウド上に構築します。その上でCPUやメモリといったリソースを柔軟に変動できるクラウドのメリットを生かし、平常時はクラウド上のバックアップサイトを最小限のリソースで運用、必要になったときだけ適切なリソースを割り当てるようにすれば、インフラコストを抑えてシステムを二重化することが可能です。
クラウドであれば、オンプレミス-オンプレミスのシステム二重化と同様、データの同期も可能であり、メインからバックアップに切り替えるような環境も整えられます。
このようにクラウドを利用すればインフラ周りのコスト削減は可能です。しかしデータの同期やメインからバックアップへ切り替えるための仕組みの構築といった負担が生じる点は変わらず、ゼロからシステムを二重化しようとすると、やはり相応のコストを覚悟しなければならないでしょう。
またクラウドロックインの問題も懸念されます。特定のクラウドサービスを利用した形でバックアップサイトを構築すれば、別のクラウドサービスに移行することが難しくなり、システム運用やDR対策がそのクラウドサービスを提供するベンダーの意向に左右されることになりかねません。
このような課題を解決するサービスの一つがVMwareの「vCloud Availability」です。これにはVMware vSphere環境同士で仮想マシンをレプリケーションし、さらにデータ同期などシステムの二重化によるDRを実現するための機能を備えています。このような、オンプレミス環境とクラウド環境間をvCloud Availabilityで同期することができるクラウドサービスを使ってシステムを二重化すれば、手間を掛けずにシステムを二重化し、DR対策を強化することができます。
またVMwareはすでに多くの企業のインフラで使われているため、従来の運用スキルを活用できるメリットがあることに加え、VMware vSphereのレイヤーが入ることでクラウドロックインを避けられる利点もあります。
さらに、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)では、このvCloud Availabilityの仕組みを利用した新たなクラウドサービスとして「Enterprise Cloud マネージドvプラットフォーム」の提供を予定しています。後編ではこのサービスの開発者より具体的なサービスの内容、メリットなどを紹介します。