国内最大手の計測・制御機器メーカーとして、日本だけでなくワールドワイドに事業を展開している横河電機(YOKOGAWA)では、今、重要施策の1つとして「OPEX(オペックス)ビジネスの拡大」を掲げています。
OPEXビジネスとは、既設設備の生産性向上や課題解決、運用保守を目的とするビジネスのこと(OPEX = Operational EXcellence)。同社が展開する、顧客に納品した制御システムを遠隔監視するためのリモート保守サービス「VPSRemote」も、OPEXビジネスに該当します。
同社は年間100システムのペースで、VPSRemoteの拡販を目指しています。しかし、より便利なサービスにするため、同時にVPSRemoteのリニューアルにも取り組んでいます。
そこで同社が導入したのが、企業の社内業務プロセスをDX(デジタルトランスフォーメーション)し、より効率的な運用に貢献する「ServiceNow」でした。
なぜ横河電機は、ServiceNowを選んだのでしょうか。そして、ServiceNowに変えたことで、どのような効果があったのでしょうか。開発メンバーに話を聞きました。
【横河電機について】
1915年(大正4年)9月1日、東京・渋谷に「電気計器研究所」として設立。以降、創業者である横河民輔が掲げた「品質第一主義 パイオニア精神 社会への貢献」を創業の精神として、計測、制御、情報の技術を軸に、最先端の製品、ソリューションを産業界に提供している。URL:https://www.yokogawa.co.jp/
複雑化した業務プロセスでは、どうしても間違えてしまう
横河電機で、VPSRemoteの開発・運用を一手に担う部署が、ライフサイクルサービス事業部です。同部の野田孝司氏は、VPSRemoteの価値と役割を「安定した操業の支援」であると指摘しました。
「お客さまに納入した制御システムは、10年、20年後も使われ続けます。我々は、制御システムを末永く使っていただくため、維持・改善に関するトータルソリューションを提供しています。
その中心的な役割を担うのがVPSRemoteです。このサービスは、顧客と横河電機をセキュアな回線で接続し、システムトラブル時の迅速な復旧支援、稼働情報の収集・分析による予防保全、継続的な課題の抽出・改善による安定した操業支援を行います」
しかしながら、最近は国際規格「ITIL」に準拠するような安定した運用や、より高品質なサービスマネジメントを求める声が高まっており、それらの基準に対応することが課題となっていました。
こうした背景もあり、同社はまず、従来のVPSRemoteの課題であった、複雑化した運用基盤の改善に着手。将来新しいサービスが出ても、容易に適用可能な仕組みを構想します。
「従来はいろいろなシステムを組み合わせていたため、業務プロセスは複雑になっていました。しかも、世界中の担当拠点が受けたオーダーを、すべて私たちの部署で承認を受けて対応するため、そのオーダーに対するレスポンスも遅くなっていました」(野田氏)
対応業務を担当する宮岡淳子氏によると、レスポンスが遅くなる背景に、現場では面倒な作業が増えていたことがあったといいます。
「従来までは、海外・国内からのオーダーを取りまとめ、それらをシステムに登録し、ライセンスも付与することや、メールベースで届く問い合わせの対応は、すべて手作業で行っていました。そのため現場はつねにバタバタしているため、入念にチェックしているつもりでも、残念ながらライセンス番号の入力ミスなどが起きていました。
顧客や担当拠点からも、“フォーム入力の項目数が多すぎる”、“使い勝手の悪い操作性を改善してほしい”という声が上がっていました」(宮岡氏)
とはいえ、現行システムの改善をするためには、対規模な改修を伴うため、気軽には直せません。従来は内製によるスクラッチ開発だったので、市場が求める内容、タイミングで開発成果を投入するには難しいのが実情でした。
ライフサイクルサービス事業部では、このような課題を解決するために、複数のシステムが自動で連携でき、世界中の担当拠点が自らの判断でオーダーや復旧などの対応がスムーズにできる仕組みを構築することを決意します。