――東南アジアにおける、スタートアップのトレンドはどのようなものでしょうか。
スタートアップ側に焦点を当てると、環境変化をビジネスチャンスと捉え、テクノロジーを通じて新たなビジネス領域に踏み出すトレンドが随所にみられます。
例えば、インドネシアを代表するユニコーン企業のGoJekは4月に中小企業向けにPOS端末を展開するMoka(インドネシア)を買収し、既存の金融サービスの提供を拡大しました。GoJekと双璧をなすGrab(シンガポール)も、6月にフィリピンでGrabPayカードを発売するなど、東南アジアのデジタル決済市場は盛り上がりを見せています。
――新型コロナウイルスに関連したスタートアップ企業も生まれていたりしますか?
新型コロナウイルスに立ち向かう、多くのスタートアップが生まれています。ヘルスケア分野の隆盛は東南アジアにおいても大きなトレンドです。
新型コロナウイルスの遺伝子検査サービスを提供する「Acumen Research Laboratories」(シンガポール)、IoTを活用した顔認証機能付き体温センサーや、マスクの着用状況の感知機能を開発し、インドネシア政府にも採用されている「Qlue」(インドネシア)、オンライン診療サービスを提供しマレーシア保健省と協業する「Doctor On Call」(マレーシア) *4などが代表例として挙げられます。
――東南アジアで“スタートアップ熱”が高い背景には、何があるのでしょうか?
膨大な内需とインターネットの普及が要因の一つかと思います。東南アジアには世界人口の10%が集まり、その平均年齢はわずか29歳です。また過去10年で17%のCAGR(年平均成長率)という驚異的な速度で増加したインターネットユーザーは4億人に上ります。
このように東南アジアのスタートアップエコシステムはコロナ禍でも力強い成長を続け、同地域内のファンドに限らず、欧米系、中華系、日系のVC、Corporate Venture Capital(以下、CVC)から熱い視線を受けています。
ユニコーン企業も堅調に増えています。昨年は過去最高の4社(BIGO、OVO、ZILINGO、TRAX)が加わり、東南アジア発は計14社(2019年時点)になりました。出資総額は過去4年で250億ドルを超えています。潤沢な市場、豊富な労働力、そして社会・通信インフラの急速な発展に支えられ、今後も多くの魅力的なスタートアップが現れると予想されます。
*4 Doctor On Call は2日目のマッチングイベントに参加予定