――東南アジアはそれほどスタートアップ熱が高い地域なのでしょうか? 現地スタートアップのエコシステムでは、新型コロナウイルスによる影響は出ていないのでしょうか?
世界的には、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、多くのスタートアップが資金調達難・需要減に苦しんでいます。2020年第一四半期においては、スタートアップがベンチャーキャピタル(以下、VC)から調達した資金は世界全体で20%減少し、全体の72%が売上を落としています*1。
他方、東南アジアのスタートアップ投資は力強い成長を続けています。WHOがパンデミックを宣言した2020年3月から、同年7月までの東南アジアにおけるVC投資額は、前年同期比3倍の52.3億ドルに成長しました。中でも、インドネシアにおけるVC投資熱は全く衰えず、前年同期比6倍を記録しました*2。
7月には、世界最大のVC、Sequoia Capital(米国)が、東南アジア向けの新ファンド設立を発表しました。同社が「パンデミックによって大幅なコース変更となりつつも、東南アジアテック系新興企業の新しい、強気のサイクルが間もなく始まるだろう」と語るように、東南アジアのスタートアップ投資は、今後さらに盛り上がりを見せることが予想されます。
――国別に見ると、どのような傾向があるでしょうか
国別にVC投資額をみると、TEMASEK(シンガポール)をはじめとする政府系ファンドが強いシンガポール(67億ドル、2019年)と、東南アジアトップのユニコーン企業数を誇るインドネシア(27億ドル、2019年)が群を抜いています。以降、数百万~数億ドル規模のVC投資額をもつベトナム、マレーシア、フィリピン、タイが続きます*3。
*1 Startup Genome「Global Startup ecosystem report」
*2 公益社団法人 日本経済センター「コロナ後のイノベーション・ハブ」
*3 White star Capital「SEA Venture Capital Landscape 2020」