まず初めに、そもそもクラウド化すべきか否か、クラウド化するとしたらどのようなクラウドを選ぶべきかを検討する必要があります。ここで重要なのは、システムごとに最適なプラットフォームを選択することによって個別最適に陥らないこと、そして必ずしも全システムを同一プラットフォームに集約することが最適解と考えないことです。これらはクラウド化の効果を限定的にしてしまう原因となります。
たとえば、既存のオンプレミスシステムから新しいクラウドインフラに移行するといった場合に、システム特性を無視してインフラありきで移行を進めると、クラウドが提供するメリットを享受できない場合があります。プラットフォーム選定の際には、業務目線、そして運用者や利用者の目線からどのような要件やメリットを望むのかを考えます。その上で、それらが得られる最適なプラットフォームはどれかを見極め、選定していくことが大切です。
【ポイント1】導入検討:マルチクラウド活用ポイント

具体的には、すべてのシステム・業務について『ピーク性』『トラフィック量』『停止スケジュールの必要性』『CPU コア数に応じた課金型ライセンスの利用状況』などの特性を多角的、定量的に診断して選定していきます。
それでは、実際のインフラ選定の事例を見ていきましょう。あるユーザー企業では、データセンターの老朽化に伴う新しいインフラへの移行を検討していました。システムを利用する各部門が運用管理も担うことになっていたため、オンプレミスやプライベートクラウド、パブリッククラウドなど、システムによってインフラが個別最適で構築されていたほか、運用方法もバラバラでコスト効率が非常に悪い状態でした。
移行のプロジェクトを担当したNTTコミュニケーションズは、新しいインフラデザインのコンサルティングフェーズから着手しました。全システムの棚卸しを行い、各システムの特性に合わせて、プライベートクラウドが最適なシステム、パブリッククラウドを利用するシステム、オンプレミスで運用するシステムに分類しました。そして類似特性を持つシステムはクラウドを活用してリソースを効率的に集約していきました。
実際の構成としては、パブリッククラウドについては以前から利用していた「Amazon Web Services(AWS)」を利用、プライベートクラウドはNTTコミュニケーションズの「Enterprise Cloud」を使って再構築、オンプレミスについてはそのEnterprise Cloudと接続できるNTTコミュニケーションズのデータセンターを利用するという形です。このように、全体最適の観点から見直すことで、パフォーマンスに影響を与えることなく、物理サーバーの台数を10分の1に減らし、コスト効率を大幅に高めることに成功しました。
【ポイント1】導入検討:利用シーン
