クラウドのメリットを最大限に生かすには、オンプレミスとは異なるクラウド特有のアーキテクチャにシステムを最適化するという視点が欠かせません。とはいえ、システム最適化を図るには相応の開発リソースと時間が必要となるため、企業のIT環境における運用負荷の軽減やコスト削減が課題となってきます。そこで、ひとまず現状のままクラウドに移行し、その上でクラウド最適化を目指すというのがリフト&シフトの基本的な考え方です。
この新たなトレンドにおいて、大きな鍵を握っているのがVMwareです。同社のプロダクトはサーバー仮想化の考え方が広まった当初から仮想化基盤として多くの企業に広まり、現在でもプライベートクラウドの構築・運用基盤として広く使われています。最近になり、このようにオンプレミスで運用しているVMware環境をそのままクラウドに移行できるというサービスが続々と登場していると、林氏は指摘しました。
「背景にあるのは、VMwareをオンプレミスで残すことに企業側が負担を感じるようになったことです。そこでVMwareが『VMware Cloud on AWS』という、AWS基盤ベースのサービスをつくりました。また、マイクロソフトは『VMware virtualization on Azure』、IBMは『VMware on IBM Cloud』といった形でクラウドベンダーがVMwareのサービスを打ち出しています」
クラウド移行を考える際、VMware環境で稼働している仮想サーバーをそのままクラウドに移行できれば、負担を抑えた形でクラウドシフトを実現することが可能です。そこでクラウドベンダーは自社のサービス上でVMware環境を用意し、クラウド移行の負担を軽減できるサービスとして打ち出しているというわけです。こうしたサービスはRackspaceやCenturyLinkといったクラウドベンダーもリリースしているほか、日本においてもNTTコミュニケーションズが2018年8月に「VMware Cloud Foundation」と「VMware Hybrid Cloud Extension」を採用したサービスを提供開始しました。富士通株式会社もサービス提供を予定しています。
基幹系を中心としたオンプレミスシステムのクラウド移行
