モード1のクラウド化を推進せよ(前編)

クラウドへの移行で検討したい「4つの選択肢」

2018.08.24 Fri連載バックナンバー

「モード1」と呼ばれる従来型のシステムをクラウドに移行する手法として、昨今注目を集めているのが「リフト&シフト」と呼ばれている方式です。その背景にある考え方や、多くの企業で使われているVMware環境からのクラウド移行について、NTTコミュニケーションズ株式会社のクラウド・エバンジェリストである林雅之氏にお話を伺いました。

 

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あらためて高まるクラウド利用への意欲

 クラウドはすでに多くの企業で活用され始めていますが、その一方で、オンプレミスで運用されているシステムもまだまだ多いのが現状です。こうしたシステムをどうするのかについて、IDC Japanは、ユーザー企業にアンケートした結果を「2018年 国内クラウドインフラストラクチャに関するユーザー動向調査結果」として公表しています。

 その内容を見ると、一部の環境をクラウドサービスに移行すると回答した企業が30%、ほぼ全部の環境をクラウドサービスに移行すると回答した企業は11.4%で、合計すると40%を超える企業が何らかの形でクラウドへの移行を考えているという結果となっています。

クラウドサービスへの検討は4割超

 クラウドへ移行する理由として最も大きかったのは運用負担の軽減(70.5%)で、ハードウェアコストの削減(49.2%)、セキュリティ強化(32.1%)といった理由が続いています。運用負荷やコストを含めた全体最適を見据え、オンプレミスからクラウドへの移行を前向きに捉えている企業が増えていることがわかるでしょう。

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTTコミュニケーションズ)のクラウド・エバンジェリストである林雅之氏は、このようにクラウド活用に向けた意識が各企業で高まる中、「リフト&シフト」が新たなトレンドになっていると指摘します。

「既存のオンプレミスシステムの互換性と継続性を重視して、できるだけ変更を加えることなくクラウドに移行し、その後システムをクラウドに最適化する。このリフト&シフトによるクラウド移行のニーズが高まっています。これを受け、クラウドベンダーでも積極的に対応が進められている状況です」

各ベンダーが取り組む「VMware」への対応

 クラウドのメリットを最大限に生かすには、オンプレミスとは異なるクラウド特有のアーキテクチャにシステムを最適化するという視点が欠かせません。とはいえ、システム最適化を図るには相応の開発リソースと時間が必要となるため、企業のIT環境における運用負荷の軽減やコスト削減が課題となってきます。そこで、ひとまず現状のままクラウドに移行し、その上でクラウド最適化を目指すというのがリフト&シフトの基本的な考え方です。

 この新たなトレンドにおいて、大きな鍵を握っているのがVMwareです。同社のプロダクトはサーバー仮想化の考え方が広まった当初から仮想化基盤として多くの企業に広まり、現在でもプライベートクラウドの構築・運用基盤として広く使われています。最近になり、このようにオンプレミスで運用しているVMware環境をそのままクラウドに移行できるというサービスが続々と登場していると、林氏は指摘しました。

「背景にあるのは、VMwareをオンプレミスで残すことに企業側が負担を感じるようになったことです。そこでVMwareが『VMware Cloud on AWS』という、AWS基盤ベースのサービスをつくりました。また、マイクロソフトは『VMware virtualization on Azure』、IBMは『VMware on IBM Cloud』といった形でクラウドベンダーがVMwareのサービスを打ち出しています」

 クラウド移行を考える際、VMware環境で稼働している仮想サーバーをそのままクラウドに移行できれば、負担を抑えた形でクラウドシフトを実現することが可能です。そこでクラウドベンダーは自社のサービス上でVMware環境を用意し、クラウド移行の負担を軽減できるサービスとして打ち出しているというわけです。こうしたサービスはRackspaceやCenturyLinkといったクラウドベンダーもリリースしているほか、日本においてもNTTコミュニケーションズが2018年8月に「VMware Cloud Foundation」と「VMware Hybrid Cloud Extension」を採用したサービスを提供開始しました。富士通株式会社もサービス提供を予定しています。

基幹系を中心としたオンプレミスシステムのクラウド移行

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ゼロダウンタイムでクラウドに移行する技術も登場

 このように各クラウドベンダーは、オンプレミスのVMware環境をそのまま移行するためのサービスを積極的に展開していますが、細かく見ていくとサポートしている機能などにおいて違いがあるのがわかります。その一例として挙げられるのが「HCX(Hybrid Cloud Extension)」のサービスです。

 HCXはVMwareの新たなテクノロジーであり、オンプレミスのvSphereの環境から、最新バージョンのVMware Cloud Foundationなどへ安全に移行できるVMwareのサービスです。このHCXがサポートされていれば、オンプレミスのVMware環境のワークロードを物理サーバーから別の物理サーバーへ移行するのと同じイメージで、オンプレミスからクラウドへとワークロードを移行することができます。

 見逃せないのは、ワークロード移行時のダウンタイムを最小化できる点です。特にシステム停止が大きな影響を及ぼすシステムにおいて、HCXのこのメリットは極めて大きいでしょう。

 さらにクラウドベンダーを選ぶ際には、VMwareだけでなく、さまざまなサービスやアーキテクチャを適材適所で使えるかどうかも重要です。たとえばリフト&シフトであってもすべてのシステムをクラウド化できないといった場合、既存のデータセンターとのコネクティビティが重要なポイントとなります。また適材適所でクラウドサービスを使い分けるのであれば、それぞれのサービスに対して閉域網で接続できれば便利でしょう。このように、多角的な視点でクラウドサービスを捉え、自社に最適なものを選ぶべきではないでしょうか。

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“4つの選択肢”で見極める、自社に最適なクラウド移行方法

 クラウドベンダーが提供するサービスを活用し、オンプレミスで運用しているVMware環境のワークロードを移行すれば、負担を抑えながらクラウドへのシフトを実現することができます。とはいえ、それ以外にもさまざまなアプローチが考えられると林氏は指摘しました。

「アーキテクチャの変更をできるだけ避け、オンプレミスで運用しているシステム全体をそのままクラウドに移行するアプローチのほか、アプリケーション単位で切り分けて個別にクラウド化することも考えられます。クラウド移行時にアーキテクチャを刷新し、『モード2』の新たなアプリケーションとして開発するといった判断もあります。しかし、アーキテクチャ刷新のハードルは高く、大きな負担を伴うことになります。」

 このように話した上で、自社のシステムにとって何が最適かを十分に検討した上で判断するべきだと続けました。

クラウド移行におけるアプリケーション・システム別
アプローチ例(モード1のケース)

「アプリケーション単位でクラウドに移行するか、システムをリフト&シフトでクラウドへ移行するのか、それともクラウド移行に伴いシステムを刷新するかなど、具体的なアプローチは十分に検討すべきでしょう。それぞれのアプローチ方法のメリット・デメリットを理解し、アセスメントを実施した上で選択していくことが大切です」

 次回は、2025年問題で揺れるERP環境のクラウドシフトについて、引き続き林氏にお話を伺っていきます。

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Bizコンパス編集部

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