インターネットサービスを支えるネットワーク基盤

アカマイが打ち明けるCDNプラットフォームの裏側

2018.07.20 Fri連載バックナンバー

 安定したインターネット上でのサービス提供のため、多くの企業で活用されているのがアカマイ・テクノロジーズのCDN(Contents Delivery Network)サービスです。1998年に創業した同社は、コンテンツ配信のためのサーバーを世界各地に配備し、多くのユーザーからのコンテンツ要求に迅速に対応し続けています。そのプラットフォームの裏側について、アカマイ・テクノロジーズ合同会社の高梨 斉氏、道向 新氏にお話を伺いました。

 

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快適なWebサイトアクセスを実現するCDNの仕組み

 Webサイトにアクセスする際、コンテンツがなかなか表示されずフラストレーションがたまったという経験を持つ人は少なくないでしょう。コンテンツの表示に時間がかかる要因は多々あり、場合によっては長々と待たされることがあります。たとえばWebサーバーが物理的に遠い場所にあれば、ネットワーク遅延によってコンテンツのダウンロードに時間がかかります。またWebサーバーに多くのユーザーが殺到し、途中のネットワークが混雑していたり、あるいはサーバーの負荷が異常に高まったりするケースでも、コンテンツがなかなか表示されないといった事態が発生します。

 このような課題を解決するため、Webサイトやオンラインサービスを提供している多くの企業で使われているのがCDN(Contents Delivery Network)と呼ばれるサービスです。これはオリジナルWebサーバーにあるコンテンツを一時的に保存(キャッシュ)するエッジサーバーを世界各地に分散配置し、ユーザーからアクセスがあるとオリジナルのWebサーバーではなく、エッジサーバーから配信するという仕組みです。

 ユーザーがWebサイトにアクセスしようとした際、接続先となるエッジサーバーにはユーザーから近い場所のものが選ばれるため、ネットワーク遅延による影響を最小限に抑えられます。ユーザーの位置などによって接続するエッジサーバーは異なるため、特定のネットワークだけが混雑して通信速度が低下することはありません。さらに複数のサーバーにアクセスが分散するため、高負荷状態でレスポンスが低下するといったことも避けられます。このような仕組みにより、CDNは快適なWebサイトへのアクセスを実現しているのです。

増え続けるトラフィックに対応可能なプラットフォームの構築を

 このCDNサービスを提供するために、世界最大の配信プラットフォームを構築しているのがアカマイ・テクノロジーズ合同会社(以下、アカマイ)です。同社のサービスは数多くのグローバルプレイヤーに採用されており、世界中のユーザーに膨大な量のコンテンツを配信しています。

 アカマイが構築するコンテンツ配信プラットフォームは、世界各地に配置されたエッジサーバーと、顧客が持つオリジンのWebサーバーからのコンテンツ取得に利用されるIPトランジットなどから構成されています。このIPトランジットの重要性について、アカマイ・テクノロジーズ合同会社の高梨 斉氏は、次のように説明します。

「アカマイ自身はコンテンツを持っておらず、さまざまな場所に遍在するお客さまのコンテンツを取得し、エンドユーザーの近くにあるサーバーでキャッシュした上で配信することになります。この際、各地にあるコンテンツを効率よく取得するために、IPトランジットは非常に重要な存在となります」

 このようにキャッシュしたコンテンツの配信を制御する際には、コンテンツの種類も考慮されていると言います。

「私たちはさまざまなコンテンツを扱っていますが、その配信の制御においてはパフォーマンスとコストが大きな要素になります。たとえばECサイトなどのサービスでは、クリックした瞬間にパッと表示することが求められます。表示に時間がかかれば、ユーザーは別のサービスに移ってしまうことになり、売り上げの低下につながりかねません。そこで、こうしたコンテンツはパフォーマンスを優先して配信します。一方、ビデオオンデマンドサービスなどのコンテンツは、容量が大きいのでパフォーマンスが必要だろうと思われるのですが、実はコスト優先で配信しています。ビデオオンデマンドであればサーバー側と端末側の双方でバッファリングができるため、意外と制御しやすいトラフィックなのです。こういった形でコンテンツの種類も考慮しつつ、さまざまな工夫を図ることで配信を最適化しています」(高梨氏)

 総務省の調査によれば、日本のブロードバンド契約者数の総ダウンロードトラフィックは推定で年間約10.8Tbpsであり、1年前から約31.6%増加しているとしています。2020年に向け、この数値は今後も増加し続けていくのは間違いないでしょう。アカマイ・テクノロジーズ合同会社の道向 新氏は、こうしたトラフィックの増加にも適切に対応していきたいと話します。

「昨今のトラフィックの増加を考えると、インフラのキャパシティを毎年1.5倍程度に増強する必要があります。お客さまの期待に応え続けるために、この設備増強を継続して行っています」

アカマイのCDNサービスを支えるネットワーク

 前述したように、CDNサービスの提供においては世界各地に配置されたエッジサーバーが大きな役割を担っていますが、オリジナルのWebサーバーからコンテンツを取得したり、あるいはエッジサーバー間で通信を行ったりするためにはネットワークが必要不可欠です。このネットワークの重要性について、高梨氏はインターネット上でグローバルにサービスを展開しているプレイヤーと比較し、次のように話しました。

「NetflixやYouTube、あるいはFacebookといった、一般にOTTと呼ばれるプレイヤーと比較して、アカマイはインターネット上に広く行き渡って存在するコンテンツを取得する必要があります。ここがOTTプレイヤーとの大きな違いであり、その意味でCDNプラットフォームにおけるネットワークは非常に重要になっています」

 アカマイでは、そのネットワークを複数の通信事業者から調達していますが、その1社として大きな存在感を示しているのがNTTコミュニケーションズです。道向氏はNTTコミュニケーションズのネットワークを次のように評価しました。

「CDNプラットフォームにおいて、当然パフォーマンスというのはすごく重要です。バックボーンで使うネットワークを提供していただく通信事業者はいくつかありますが、しかしながら、パケットロスの比率が高いなど、場合によっては思うような品質が得られないこともあります。しかしNTTコミュニケーションズは、良好なレスポンスが得られるほか、パケットロスも少なく、品質の高いネットワークを提供していただけます。またTier1プロバイダということで、圧倒的な帯域を確保されていることも我々にとって大きな魅力です」

 Tier1とはほかのISPに対してバックボーンネットワークを提供する立場で、NTTコミュニケーションズはアジアでは有数のグローバルTier1キャリアとなっています。そのネットワーク資源を提供することにより、NTTコミュニケーションズはアカマイが運営するCDNプラットフォームを支えているというわけです。

クラウド配信プラットフォームのイメージ

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悪質化するDDoS攻撃に対処するためのサービスも提供

 このようなCDNサービスのほか、アカマイではセキュリティサービスも提供しています。具体的なサービスとしては、膨大な量のトラフィックをWebサーバーに送り込み、正常なWebサイトの利用を妨害するDDoS攻撃からの保護、さらにはWebアプリケーションに対する攻撃を防ぐクラウド型のWAFサービスなどがあります。

 セキュリティサービスを提供することになったきっかけとしては、アカマイ自身が、セキュリティを取り組むべき課題だと捉えていたからだと言います。高梨氏は「コンテンツを効率よく配信するためにはセキュリティ対策も重要です。特にDDoS攻撃を受けると、パフォーマンスを維持して配信することができなくなりますので」と、セキュリティ対策の必要性を強調します。

 その対策として大きな効果を発揮しているのは、全世界23万台以上のエッジサーバーを擁する超大規模分散型アーキテクチャーです。仮にDDoS攻撃が行われたとしても、その通信のほとんどが世界各地に点在するエッジサーバーで吸収されるため、オリジナルのWebサーバーが高負荷状態に陥ることを避けられます。また同社のCDNプラットフォームを使えば、オリジナルのWebサーバーから離れたところで攻撃を遮断できるため、インターネット接続回線の輻輳も回避することが可能です。

 アカマイが提供するセキュリティサービスは、こうした独自のアーキテクチャーを活用した形で実現されています。セキュリティサービスを提供する理由について、高梨氏は「CDNサービスをご利用いただければ、我々のサーバーの背後にオリジナルのWebサーバーを隠すことができます。とはいえ、それだけでは守り切れない部分もあるため、DDoS攻撃を緩和する技術を持った企業とM&Aを行い、セキュリティサービスを提供しています」と話します。

 DDoS攻撃は以前から行われていましたが、攻撃の規模は年々増加傾向にあり、昨今では金銭を支払わなければDDoS攻撃を仕掛けるといった脅迫が金融機関に対して行われるなど、より悪質化している状況です。さらにWebアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃もやむ気配がありません。セキュリティサービスの提供を通じ、このような状況に対応していきたいと話すのは道向氏です。

「サイバー攻撃はさまざまな場所で発生しており、多くの企業が被害を受けています。我々にはDDoS攻撃に対抗できるインフラがあるほか、Webアプリケーションに対する攻撃に対応できるクラウド型のWAFも提供しています。これらの提供を通じ、安全かつ快適にインターネットを利用できるように今後も努力していきたいと考えています」

 なお2018年4月には、同社のコンテンツ配信プラットフォームが使われたインドのクリケット国内リーグのストリーミング配信サービスにおいて、1,030万人という最大同時視聴者数を記録しました。「インドではクリケットのファンが多く、試合中継は大人気のコンテンツとなっています。このストリーミングにはアカマイのプラットフォームが使われていたのですが、これはアカマイが配信したスポーツイベントの中で最大規模でした。こうしたストリーミング配信は世界中で広まっているため、我々としても2020年に向けて、インパクトの大きいイベントをサポートしていきたいと考えています」(道向氏)

 ちなみに、グローバルで見ると大きなスポーツイベントがあるときはインターネットのトラフィックは大幅に増加するとのことですが、テレビ放送による中継が主になる日本では、逆にトラフィックが低下すると言います。しかし今後はテレビ放送のインターネット同時配信が広まる可能性が高く、日本でも多くの人が世界的なイベントをインターネット経由で見ることになるかもしれません。そうなれば、アカマイが提供するCDNサービスの存在感はますます高まることになるでしょう。

 デジタライゼーションが進む現在、ビジネスにおいてWebサイトが果たす役割は拡大し続けています。そのWebサイトへの快適なアクセスを実現し、そしてDDoS攻撃をはじめとするサイバー攻撃から保護することを考えた際、アカマイが提供するサービスは極めて大きな価値を持つのではないでしょうか。

 

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。

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Bizコンパス編集部

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