デジタルビジネス変革期のサービスマネジメント

知っておきたい!「ServiceNow」導入とIT運用の勘所

2018.06.15 Fri連載バックナンバー

 デジタルを活用した新たなサービス創出が求められる現在、ビジネスにおけるプラットフォームの根本的なモダナイゼーションが求められています。そのような潮流を受けて、国内外で急速にシェアを拡大しているのが「ServiceNow」です。人気の秘密を2018年4月25日に開催された、日経ビジネスオンライン×ServiceNow Japan主催セミナー「加速するデジタルトランスフォーメーション 新たな価値創出を可能にするサービスマネジメントとは」の講演から探っていきます。

 

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デジタルビジネス変革期のIT部門に問われる資質

 最初に、ServiceNow Japan株式会社(以下、ServiceNow Japan)の久納信之氏が登壇し、「デジタルビジネス変革期に求められるサービスマネジメント・プラットフォームとは?」と題した講演を行いました。

 まず、久納氏が指摘するのは、ビジネス側(事業部門など)から期待されるIT(部門)の責務に変化が出始めていることです。これまでのITは、主にシステム構成の刷新による“コスト”削減やセキュリティ対策による“リスク”低減が期待されていました。しかし、最近では事業部門が求めるサービスをすぐに投入できる“スピード”に加え、使いやすさ、便利さといった“ユーザー体験”が、コストやリスクよりも重要視される傾向にあるといいます。

 このITの責務が逆転した背景には、「モノからコトへ」と、ビジネスの主流がサブスクリプション型にシフトしていることが挙げられます。Uber、Amazonといったディスラプターと呼ばれる企業が登場し、スマートフォンで容易に利用できるサービスを、圧倒的なスピード感で投入し、新たなユーザー体験を創造しました。

 久納氏はスポーツ用品メーカーを例に、サービスの重要性を解説します。ポイントはモノ(製品)にサービスという付加価値を持たせることです。

「たとえば、お店でジョギングシューズを購入したとします。そのシューズの購入者に対して無料スマホアプリが提供され、ユーザーの目的に合わせて最適なトレーニング方法、サプリメントなどを提案してくれます。さらにアプリを使って必要な商品を会員割引で買い足すこともできます。この場合、シューズ(の性能)が“コアサービス”、アプリによる提案が“実現サービス”、追加の商品を割安で購入できることが“強化サービス”の位置づけになります」

 この複数のサービスで構成される新たなサービスの考え方はIT部門になじみ深いITIL(ITサービスマネジメントのベストプラクティス)の定義と同じです。

複数のサービスから構成されるサービス?

「私が強調したいのは、すでにITサービスマネジメント(ITSM)の世界では先に説明したようなことを当たり前にやっていたということです。たとえばERPをサービスとして社内構築する際に、付随してオペレーションのサービスが存在し、さらに使いやすいユーザーインターフェイス、サービスデスクといったサービスも必要になります。ビジネスの戦略に基づきITの戦略を立て構築、展開してオペレーションで継続的に改善する。この考え方はビジネスもサービスもまったく同じです」

 つまり、IT部門のこれまでの経験をデジタルビジネス変革期に活用できるというのが久納氏の見立てです。

ITSMの枠を超えるプラットフォーム「ServiceNow」とは

 ITSMで培った経験、スキルを新たなサービス創出に役立てるために、まず必要となるのは「ITの枠を超えたサービスマネジメントを企業文化として根付かせること」と、久納氏はアドバイスします。

 IT部門がITSMで蓄積した経験やスキルが、あらゆるサービスマネジメントに応用できることを社内に周知し、認知してもらうことが重要になるのです。続いて必要になるのが既存のビジネスプラットフォームを見直し、すべてのビジネスプロセスをひとつに統合することだと久納氏は提言します。つまり従来のITSMの領域を拡大し、社内向け・社外向けサービスで活用できる基盤整備が必要なのです。

 現在このようなニーズを満たすソリューションとして急成長を遂げているのがSaaS型サービスマネジメントプラットフォーム「ServiceNow」です。

「ITSMの領域のみならず、社内には人事、経理、法務などのたくさんのサービスが独立して存在しています。これらのサービスを構造的な情報として1つのデータべース上にまとめ、横断的かつ効率的に自動化できるツールです。ITSMはもちろん、社内のエンタープライズ領域、社外のビジネス領域の対応も可能になります」

 その際、取り組みの指針として久納氏が挙げるのが「Think Big IT」と題した4つのキーワードです。

Think Big IT

 久納氏の講演は、IT部門に向けた力強いエールで締めくくられました。

「主役であるIT部門がデジタルビジネス変革期を主導するためには、イノベーション、スピード/アジリティ、シナジー、グローバルの視点が重要だと思っています。ぜひともサービスマネジメントを企業文化として根付かせ、ServiceNowのようなツールでプラットフォームを整備してください。いまこそIT部門はITSMのベストプラクティスを使って、ビジネスサービスマネジメントを社内で主導すべき時期を迎えているのです」

「ServiceNow」導入の障壁をクリアするために

 続いては、NTTコミュニケーションズ株式会社 マネジメントサービス部 平松太一氏が「ITSMモダナイゼーション―実践と日本での使い方」と題した講演を行いました。平松氏は、グローバルエリアの運用監視アウトソーシングサービスを担当しており、数年前からServiceNowの問い合わせが増えているとのことです。

「よく耳にするのが『海外の現地法人がServiceNowを使っているので導入したいが、機能が豊富すぎて必要な機能がわからない』『グローバルの統一オペレーションプロセスや統一品質をつくるのが大変』『社内データを海外のサーバーに置くのは抵抗がある』などの声です」

 

 

日本のお客さまから聞くServiceNowのチャレンジ

 こうした要望を受けて、NTTコミュニケーションズでは2016年12月にServiceNow Japanとのパートナー契約を締結しました。そこには、Self Hostedに関する契約も含まれていました。

「これは私たちの日本国内にあるデータセンターにServiceNowの基盤を構築し、国内の環境で利用可能にするものです。このサービスは、2017年10月より提供を開始しています」

 国内基盤におけるサービスの提供により、金融・公共分野など、国外へのデータの移動を望まないといったニーズに対応。さらにコンサルティングや導入支援、運用までを含めた一元的なサポートを加えることで、さまざまな業務プロセスをデジタル化・最適化し、業務の精度と効率性の向上に貢献するサービスになっています。

 ServiceNowを提供するためには、その中身を熟知しておく必要があります。そこで平松氏は、実際にServiceNowを導入して、社内のコンタクトセンターが抱えるシステムの課題を解決できないかと考えました。

「コンタクトセンターのオペレーターの要望は、より直感的に操作できる仕組みが欲しい、即時機能追加で、お客さまの要望に迅速に対応したいというものでした。一方システム開発者にとっては、ウォーターフォール型で開発を行っていたため、何がオペレーターのUX向上につながるのか要件を検討するにも時間を要してしまう、スピーディな機能追加は困難という課題がありました」

 平松氏は、この案件にServiceNowを導入した印象を明かします。

「ITILのべストプラクティスが網羅され、最小限のカスタマイズで使えるので、ゼロからの作りこみが不要で、オペレーターに操作してもらいながら調整していくアジャイル開発が簡単にできるようになりました。そのうえ豊富なコミュニティが存在するので、事例などのナレッジをベースに問題を早期解決できることも魅力でした。迅速かつ手軽に開発ができるため、プロトタイプは数週間で完成しました。特別なスキルが無くても、トライアルしながら開発が進められたのは大きいと感じています」

ServiceNow使ってみた

 新しいコンタクトセンターは既存のCTIシステムなどをAPIで連携し、チケット起票、担当者の割振りからレポート機能までがServiceNowで自動化されています。これにより情報・タスクの一元化、見える化が可能になり、リアルタイムのコミュニケーションを実現。オペレーターのUX向上はもとより、お客さまユーザーのUX、CSの向上にもつながっています。

開発したコンタクトセンターシステム

 この取り組みについて平松氏は次のように評価します。

「APIが充実しているので既存システムとの連携が非常に容易でした。特別対応が必要なユーザーからの問い合わせに対しては、チケット起票時に画面通知が出せるので、的確な対応ができるようになったこともポイントです。その一方で、苦労した点もあります。アップデート時のリグレッション試験は大変で、ここは導入時に留意すべきでしょう。さらにSelf Hostedは初挑戦だったため技術者が不足しており、内部でエンジニアを育成して解決しました。自社でSelf Hostedに取り組む際には、想定しておくべきです」

 社内での手応えを感じた平松氏が次に取り組んだのが、グローバルで事業を展開する製造業A社へのServiceNow導入でした。

「製造業A社の課題は3つありました。『申請業務の自動化と見える化』『セキュリティインシデント対応の自動化と見える化』『アジャイル開発体制の整備』でした。ServiceNow導入後には、それらの課題に対して、大幅な時間短縮や、開発開始後の要件追加が可能な開発体制を構築できたといった効果が得られています」

製造業A社へのServiceNowの導入効果

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「ServiceNow」のグローバル連携を強化するヒント

 加えて、平松氏はServiceNowの付加価値としてNTTコミュニケーションズが提供する、グローバルな拠点間連携を強化する2つのサービスを挙げます。

「1つ目は、ITSMモダナイゼーションを進めるうえで、極力人手をかけないこと。“攻め”の領域にIT人材を集中させるために、“守り”の領域をアウトソースするという選択肢を持つことです。

 こうした要望に対してNTTコミュニケーションズではServiceNowを中心に据え、複雑化するIT環境をグローバルにワンストップで運用・監視・保守するトータルマネージドサービス「Global Management One」を提供しています。このサービスの導入により、トラブルシューティングの時間短縮や人為ミス回避による品質の向上、システム運用標準化の推進、工数削減における運用コストの削減といったメリットが生まれます」

「ServiceNow」を中心に据え「Global Management One」を提供

 もう1つは、ニューラル機械翻訳(NMT)技術を搭載したエンジン「COTOHA Translator™」を核とする「AI翻訳プラットフォームソリューション」です。ITに関する専門用語を網羅して日本語と英語が超高精度で翻訳できるため、ServiceNowに組み込むことで日本と海外ブランチ間で円滑にチケットのやり取りができるようになります。

 続いて平松氏が「ServiceNow」とのセット提供を考えているのは「多言語対応ヘルプデスクサービス」です。これは各国のシステム管理者のみならず、エンドユーザーからのITに関する問い合わせ窓口をグローバルで一元提供するものです。「問い合わせ対応はもちろん、現地ベンダーへの手配も現地語で行います。ServiceNowを使いながらグローバルガバナンスを統一した高品質な運用体制で提供できることもポイントです」

 最後に、平松氏はServiceNow導入において明暗を分けるポイントを語ります。

「繰り返しになりますが、どのライセンスをどの範囲で使っていくかの見極めが重要です。突き詰めればServiceNowを実際に利用して、ある程度の知見を持っているパートナー選定が大切になります。私たちは社内利用で蓄積したノウハウがあるため、導入時の勘所などのアドバイスが行えます。さらに現地法人との密な連携についてもServiceNowでプラットフォームを統一し、Global Management Oneでプロセス、ガバナンスを統一して、マルチリンガル対応で運用のお手伝いもできます。日本国内のデータセンターでServiceNowが利用できることも強みです。当社はネットワークの会社でもありますので、インターネット接続に不安を感じるのであれば閉域網でのアクセスにも対応できます。まずは、お気軽にご相談ください」

 事業部門の期待に応えるIT部門の本領を発揮するために、まずはServiceNowを熟知し、経験豊富なパートナー選びが大前提となります。その際、海外拠点との柔軟な連携を考えるのであれば、翻訳や多言語対応のサービス利用に加えて、現地ベンダーとのコネクションといったグローバル対応力、そして事業継続の観点から日本国内でのデータ管理の可否なども併せて確認しておくべきかもしれません。

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。

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Bizコンパス編集部

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