IoT導入にまたとない追い風!

攻めのITへの投資を支援する「IoT投資減税」とは

2018.04.25 Wed連載バックナンバー

 今夏、久しぶりのIT関連税制として施行される予定となっているのが「コネクテッド・インダストリーズ税制」(IoT投資減税)です。これはIoTにかかわる投資を対象に特別償却や税額控除の措置が講じられるものであり、2018年度の税制における目玉として大きな注目を集めています。この税制の狙いについて、経済産業省情報技術利用促進課(ITイノベーション課)の課長である中野剛志氏にお話を伺いました。

 

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日本企業の先進的な取り組みを阻むレガシーシステムの存在

 IoTデジタル・トランスフォーメーションといった新たなトレンドが登場し、企業のIT環境は大きく変わろうとし始めています。しかしながら、これらの新たな取り組みを進める際、老朽化した基幹系システム(レガシーシステム)が障壁となるケースが少なくありません。たとえばIoTを活用したシステムを新たに構築して業務改善を図ろうとしたが、レガシーシステムと融合することができず、思うような効果を得られないなどといったケースが考えられます。

 しかし、海外ではこうした壁を乗り越えて新たな技術を活用したことで大きな成果を生み出した事例が数多く登場しています。ドイツのある自動車部品メーカーでは、各生産ラインの設備をつないで受注データと製造データの連携・分析によって生産効率を最適化するとともに、新たに多品種少量生産を実現し、生産性を最大30%向上させたとしています。

諸外国の事例(ドイツ、自動車部品メーカー)

 同じくドイツの衣料品メーカーでは、靴の素材や足の形状などに関する詳細データを活用し、ロボットを使って生産するスピードファクトリーを実現しています。これによって国内での高品質・短時間での製造が可能となり、リードタイムを従来の18カ月から数週間にまで短縮しました。

諸外国の事例(ドイツ、衣料品メーカー)

 経済産業省の中野剛志氏は「たとえば設備産業では国際競争が激しい一方、韓国や中国といった国では巨大新興企業も競争に加わり始めているのです。」とした上で、レガシーシステムの課題を次のように指摘します。

「日本の大企業は初期のシステム導入、そのオープン化、そして現在のクラウド化という3つのステップを踏んできましたが、レガシーシステムという負の遺産がない海外の新興企業は、いきなりクラウドで最新のシステムを構築することができるわけです。たとえば鉄鋼で言えば、高炉の制御にAIを活用するといったことに素早く取り組めます。しかし日本企業はレガシーシステムが隠れた不良債権のようなものになっていて、それを撤廃しなければ先に進めない。こうした状況に強い危機意識を持っています。」

 さらに日本では、少子高齢化に伴う労働力人口の減少が現実的な課題となっています。中野氏は「IoTをはじめとするテクノロジーの積極的な活用は、人手不足問題の解消にも有効であり、ニーズは大きいと思っています。」と期待を示します。

先進的な取り組みを積極的にサポートする経済産業省

 このIoTなど新たなテクノロジーの活用はすでにグローバル全体で進んでおり、この波に乗り遅れることになれば国際競争力の低下にもつながりかねません。

 そこで経済産業省で打ち出されたのが、リアルデータの共有や利活用、データ活用に向けた基盤整備、そして世界各国との協力強化によるさらなる展開を見据えた「Connected Industries(コネクテッド・インダストリーズ)」と呼ばれる政策です。これは、事業所・工場や技術・技能などのデータを連携して有効活用することで、技術革新や生産性向上、技能伝承などを図り、課題解決を目指す取り組みとなっています。

Connected Industriesの考え方
~我が国産業が目指す姿(コンセプト)~

 さらに税制面においても、新たな技術であるIoTの活用を後押しするための検討が進められてきました。その成果として生み出されたのが「コネクテッド・インダストリーズ税制」です。

「革命を起こすほどに生産性を向上するためには、ITの活用が欠かせず、現状で言えば自然とIoTに目が向くことになるでしょう。そうした動きを後押しするために、コネクテッド・インダストリーズ税制が税制大綱で決定されました。2003年度に施行されたIT投資促進税制以来となるIT関連の税制の新たな創設であること、企業規模を問わないため大企業であっても受けられること、適用期限が2020年度末までの3年間と通例よりも長いことが大きなポイントとなっています。」(中野氏)

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条件を満たせば税額控除は最大で5%に!

 コネクテッド・インダストリーズ税制は、一定のサイバーセキュリティ対策が講じられたデータ連携・利活用によって生産性を向上させる取り組みを対象に、センサーやロボット、システムなどの導入に対して特別償却30%または税額控除3%の措置を受けられるというものです。また平均給与等支給額の対前年比増加率が3%以上の条件を満たせば、税額控除の割合は5%となります。

IoT投資の根本強化
(コネクテッド・インダストリーズ税制の創設)

 この税制措置を受けるには、取り組み内容に関する事業計画を作成し、主務大臣の認定を受ける必要があります。その要件は、①データ連携・利活用に関する一定の取り組みであること、②セキュリティ面で配慮されていること、そして③生産性向上目標として、労働生産性の年平均伸率が2%以上および投資利益率の年平均が15%以上のいずれも達成が見込めることという①~③すべてを満たすこととなっています。

 なお対象となる設備について、中野氏は「たとえばロボットにセンサーを付けてネットワーク経由で情報を収集し、その内容をAIで解析して製造現場にフィードバックする。そういったシステムに係わる設備投資はすべて税制の対象になります」と説明します。最低投資合計額は5,000万円以上となっていますが、本格的にIoTに取り組むのであれば決して高いハードルではないでしょう。

 当然ですが、コネクテッド・インダストリーズ税制は業種による制限もありません。製造業における取り組みが先行しているイメージのあるIoTですが、サービス業や金融業、建設業、農業など、すべての産業がこの税制の対象となります。これも見逃せないポイントではないでしょうか。

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“レガシーシステムとの決別”に活用できる税制

 このコネクテッド・インダストリーズ税制によってIoTへの取り組みを促進することに加え、冒頭で解説したレガシーシステムの刷新も視野に入れられていると中野氏は話しました。

「レガシーシステムからの脱却には数年を要し、さらに大規模であれば莫大な費用が必要となるため、大企業であってもなかなか踏み切れないのが現実ではないでしょうか。経済産業省としては、この問題を除去しない限り先に進めないのではないかと考えています。コネクテッド・インダストリーズ税制は、基幹系システムを刷新してIoTを活用するための基盤を整えるチャンスだと捉えていただきたいと思います。」

 レガシーシステムから脱却することができれば、その運用保守に携わっていた人材に別の分野で活躍してもらうといったことも視野に入るでしょう。特に日本ではユーザー企業におけるIT人材の不足が叫ばれていますが、このような配置転換を実現すれば、そうした問題の解消にも近づきます。

 いずれにしても、レガシーシステムからの脱却まで含めてIoTへの取り組みを進めようとすれば、当然ながら投資額は相当な規模になります。その負担を軽減できることを考えれば、コネクテッド・インダストリーズ税制は力強いサポートと言えるのではないでしょうか。

 また、適用期間が3年間と長い税制は珍しく、将来に向けたIT投資の費用対効果を高める上で有効なのは間違いありません。このコネクテッド・インダストリーズ税制を活用して多くのメリットを享受するためにも、レガシーシステムの刷新を含めた計画の立案を急ぎたいところです。

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
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Bizコンパス編集部

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