続いての講演は「デジタル変革を実現するキーファクター『ICT運用改革』のはじめかた」と題し、NTTコミュニケーションズの竹内規晃氏が登壇しました。まず竹内氏はDXを定義します。「新たなテクノロジーの台頭は雇用を奪うばかりではなく、新たな雇用を生み出す効果もあります。たとえばIoTなどでデバイスが増えていくと保守や修理の対応には人手が必要です。そうした私たちの身の回りの雇用、生活の変化を踏まえてITを活用してビジネスプロセスを改革、ビジネスモデルを創出することがDXと言えます」
続いてDX推進における体制に竹内氏は言及します。「必要となるのはリーダーシップを発揮する経営トップ、DXの統括・推進を行うキーマンとなるCDO、そしてCDOのもとでDXを推進していくITとビジネスの双方に長けたDX推進メンバーが必要です。この3つの柱でDXを進めていくのがセオリーになります」
DX推進体制イメージ

さらに竹内氏は「第23回 企業IT動向調査2017(16年度調査)」(2017年5月:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)のデータを例示し、DXにはIT部門の協力が不可欠だと明かします。「7割以上の企業がIT部門中心もしくは事業部門との共同で進めていくべきだと考えています。さらにこうした体制とともに重視すべきは『デザイン思考』という考え方です。ユーザーを理解し、技術を目利きし、価値を生み出すデザイン思考ができるデジタル人材の確保がDXの推進では重要になってきます」
体制とともに

DX推進ではIT部門が重要な役割を担い、いかにデジタル人材を確保するかがポイントとなります。しかし、一方で多くの日本のIT部門は既存システムの運用業務で手一杯の状況にあると竹内氏は指摘します。「グローバル化による商圏の拡大、ICTを適用する範囲の拡大、シャドーITやコンプライアンス対応などが要因となり、日々、運用業務の負荷は増大し、人材不足は深刻化しています。今後ますます人材不足は加速すると考える経営者も少なくありません」
ICT人材の不足

ITエンジニアを新たに確保すれば問題は解決しそうですが、実はここにも大きな問題があります。それは、日本でのITエンジニアの人数が圧倒的に少ないことです。竹内氏は「グローバル化を支えるIT人材確保・育成施策に関する調査」(2011年3月:独立行政法人 情報処理推進機構)のデータを示し、日米の違いを挙げます。「ITエンジニアの人数で比較すると日本とアメリカでは3倍以上の開きがあります。しかも、アメリカはユーザー企業側に多くのエンジニアが集中していることに対し、日本ではITサービス企業に集中しています。日本企業が新たな人材を確保するのは極めて困難なのです」
このような困難な状況においても、強力にDXを推進する事例を竹内氏は紹介します。デジタル化の遅れに危機感を感じた経営トップがシステム運用の自動化を決断。攻めの新サービスを具体化するCDOが運用自動化による稼働削減に取り組み、浮いた人員をデジタル人材としてDX推進メンバーにシフトするというものです。人材確保が困難な状況でIT部門の人材を最大限に活用するために、システム運用の自動化に取り組んだことがポイントになっています。
ある金融機関さまのDX推進体制
