デジタルを活用して新たなサービスやビジネスモデルを創出したり、既存のビジネスを改革したりするデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きが各分野で活性化しています。デジタル化の進展により企業経営はどう変わるのか。どのようにDXの第一歩を踏み出すべきか。そして、実現に向けてITインフラをいかに活用すべきか。そのヒントを日経BP総研主催セミナー「加速するデジタルトランスフォーメーション~新たな価値創造への挑戦~」の講演から探っていきます。
日本企業のデジタル化を阻む2つの障壁
最初の講演は「日本企業のデジタルトランスフォーメーションを加速するには」と題し、野村総合研究所の譲原雅一氏が登壇しました。まず譲原氏が提示したのはデジタル改革に前向きな企業のCIO、IT部門長などを対象に行った「デジタル化の進展に対する意識調査」の結果です。ここで明らかになったのは7割強が「デジタル化の進展により既存ビジネスに影響がある」、約6割が「新たな競合が業界の垣根を超えて出現する」と的確に分析しつつも、約9割が「欧米に比べて対応が遅れている」と回答していることでした。
日本の対応が遅れている要因としては、デジタル化を阻む障壁として「法規制」と「レガシーシステム」が挙げられました。譲原氏は「約半数がデジタル先進国のアメリカと違って日本は法規制が障害になると回答し、また、7割近くが長年使用してきたレガシーシステムがデジタル化の進展を阻む足かせになると感じていると回答しています」と補足します。レガシーシステムに関する煩雑な運用業務の改善、あるいは新たなシステムとの連携などは、多くの日本企業が取り組むべき喫緊の課題と言えるでしょう。
こうした課題を解決し、「デジタル化を推進するには自社単独では困難、他社との連携が必要」とした回答は9割近くを占めました。さらに、どんな相手と手を結ぶべきかを質問したところ、最も多かった回答が「ITベンダー」(約7割)、続いて「他業界の企業」(約6割半)でした。CIOやIT部門を対象にした調査であるため、ITに関する課題を解決するITベンダーが最上位になっていますが、ここで注目すべきは他業界の企業と連携したいという声が多かったことです。
譲原氏は「すでにデジタル化で成功している欧米企業の多くは異業種との連携によりイノベーションを生み出しています。今後の日本企業はITベンダー、異業種などと柔軟に連携したエコシステムの構築でデジタル化に取り組んでいくと推測されます」と分析します。