加速するDXの波に乗り遅れないためにどうすべきか

デジタル変革のためにIT人材を確保する一手とは

2018.02.02 Fri連載バックナンバー

 デジタルを活用して新たなサービスやビジネスモデルを創出したり、既存のビジネスを改革したりするデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きが各分野で活性化しています。デジタル化の進展により企業経営はどう変わるのか。どのようにDXの第一歩を踏み出すべきか。そして、実現に向けてITインフラをいかに活用すべきか。そのヒントを日経BP総研主催セミナー「加速するデジタルトランスフォーメーション~新たな価値創造への挑戦~」の講演から探っていきます。

 

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日本企業のデジタル化を阻む2つの障壁

 最初の講演は「日本企業のデジタルトランスフォーメーションを加速するには」と題し、野村総合研究所の譲原雅一氏が登壇しました。まず譲原氏が提示したのはデジタル改革に前向きな企業のCIO、IT部門長などを対象に行った「デジタル化の進展に対する意識調査」の結果です。ここで明らかになったのは7割強が「デジタル化の進展により既存ビジネスに影響がある」、約6割が「新たな競合が業界の垣根を超えて出現する」と的確に分析しつつも、約9割が「欧米に比べて対応が遅れている」と回答していることでした。

 日本の対応が遅れている要因としては、デジタル化を阻む障壁として「法規制」と「レガシーシステム」が挙げられました。譲原氏は「約半数がデジタル先進国のアメリカと違って日本は法規制が障害になると回答し、また、7割近くが長年使用してきたレガシーシステムがデジタル化の進展を阻む足かせになると感じていると回答しています」と補足します。レガシーシステムに関する煩雑な運用業務の改善、あるいは新たなシステムとの連携などは、多くの日本企業が取り組むべき喫緊の課題と言えるでしょう。

 こうした課題を解決し、「デジタル化を推進するには自社単独では困難、他社との連携が必要」とした回答は9割近くを占めました。さらに、どんな相手と手を結ぶべきかを質問したところ、最も多かった回答が「ITベンダー」(約7割)、続いて「他業界の企業」(約6割半)でした。CIOやIT部門を対象にした調査であるため、ITに関する課題を解決するITベンダーが最上位になっていますが、ここで注目すべきは他業界の企業と連携したいという声が多かったことです。

 譲原氏は「すでにデジタル化で成功している欧米企業の多くは異業種との連携によりイノベーションを生み出しています。今後の日本企業はITベンダー、異業種などと柔軟に連携したエコシステムの構築でデジタル化に取り組んでいくと推測されます」と分析します。

デジタル化ではIT部門の立ち位置が重要に

 今回の調査ではデジタル化の取り組み状況についても質問しています。他社に比べて「かなり進んでいる」「ある程度進んでいる」と回答した約3割をトップランナーと位置付け、デジタル化が進んでいる企業にはどのような傾向があるのかを譲原氏は分析します。

 「トップランナーはデジタル化の影響を経営層や事業部門で共有し、すでにデジタル戦略の策定を終えています。しかもIT投資におけるデジタル化への投資比率が高く、IT部門と事業部門の共同チームで戦略を推進している傾向が見受けられます。さらにレガシーシステムから脱却している、あるいはレガシーシステムと連携したデジタル施策も進めているのです」。デジタル化の推進にも、レガシーシステムからの脱却にもIT部門の力が不可欠となるため、IT部門が非常に大きな役割を担うことになると譲原氏は指摘します。

 ここで譲原氏はデジタル化の推進とレガシーシステムからの脱却、この困難な課題を解決した欧米企業の事例をいくつか挙げます。1つ目は「自社内のIT部門に対して能力開発を行い、その一部をビジネス部門に送り込みIT部門との連携を強化した」自前調達パターン。続いて「IT部門とは別にM&Aでデジタル人材を確保し、相互を連携させた」外部調達パターン。最後は「IT部門がレガシーシステムと接続するクラウド基盤を構築、自社サービスのAPIを公開して広くパートナーを募った」エコシステム構築パターンです。ポイントはデジタル化の取り組みにおいてIT部門をどのポジションに据えるかにあります。

 デジタルビジネスの推進はスピード勝負と考える譲原氏は、こう締めくくります。「今後は異業種から参入するディスラプターの脅威を正しく認識し、迅速に対抗策を考える必要があります。その際には基幹システムと連携したスピード感のある製品やサービス開発が必須となり、IT部門が大きな役割を担います。日本のIT部門はレガシーシステムの維持管理、運用スキルが高く非常に優秀です。彼らをうまく活用してデジタルサービスへ対応させていく。ハードウェア、クラウドの知識だけではなく、ソフトウェアの開発などにも広く関われるよう変革していく必要があります。組織の風土改革を含めてIT部門のデジタル対応策を考えていくべきです」

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IT部門の稼働増大、人材不足を解決するには

 続いての講演は「デジタル変革を実現するキーファクター『ICT運用改革』のはじめかた」と題し、NTTコミュニケーションズの竹内規晃氏が登壇しました。まず竹内氏はDXを定義します。「新たなテクノロジーの台頭は雇用を奪うばかりではなく、新たな雇用を生み出す効果もあります。たとえばIoTなどでデバイスが増えていくと保守や修理の対応には人手が必要です。そうした私たちの身の回りの雇用、生活の変化を踏まえてITを活用してビジネスプロセスを改革、ビジネスモデルを創出することがDXと言えます」

 続いてDX推進における体制に竹内氏は言及します。「必要となるのはリーダーシップを発揮する経営トップ、DXの統括・推進を行うキーマンとなるCDO、そしてCDOのもとでDXを推進していくITとビジネスの双方に長けたDX推進メンバーが必要です。この3つの柱でDXを進めていくのがセオリーになります」

DX推進体制イメージ

 さらに竹内氏は「第23回 企業IT動向調査2017(16年度調査)」(2017年5月:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)のデータを例示し、DXにはIT部門の協力が不可欠だと明かします。「7割以上の企業がIT部門中心もしくは事業部門との共同で進めていくべきだと考えています。さらにこうした体制とともに重視すべきは『デザイン思考』という考え方です。ユーザーを理解し、技術を目利きし、価値を生み出すデザイン思考ができるデジタル人材の確保がDXの推進では重要になってきます」

体制とともに

 DX推進ではIT部門が重要な役割を担い、いかにデジタル人材を確保するかがポイントとなります。しかし、一方で多くの日本のIT部門は既存システムの運用業務で手一杯の状況にあると竹内氏は指摘します。「グローバル化による商圏の拡大、ICTを適用する範囲の拡大、シャドーITやコンプライアンス対応などが要因となり、日々、運用業務の負荷は増大し、人材不足は深刻化しています。今後ますます人材不足は加速すると考える経営者も少なくありません」

ICT人材の不足

 ITエンジニアを新たに確保すれば問題は解決しそうですが、実はここにも大きな問題があります。それは、日本でのITエンジニアの人数が圧倒的に少ないことです。竹内氏は「グローバル化を支えるIT人材確保・育成施策に関する調査」(2011年3月:独立行政法人 情報処理推進機構)のデータを示し、日米の違いを挙げます。「ITエンジニアの人数で比較すると日本とアメリカでは3倍以上の開きがあります。しかも、アメリカはユーザー企業側に多くのエンジニアが集中していることに対し、日本ではITサービス企業に集中しています。日本企業が新たな人材を確保するのは極めて困難なのです」

 このような困難な状況においても、強力にDXを推進する事例を竹内氏は紹介します。デジタル化の遅れに危機感を感じた経営トップがシステム運用の自動化を決断。攻めの新サービスを具体化するCDOが運用自動化による稼働削減に取り組み、浮いた人員をデジタル人材としてDX推進メンバーにシフトするというものです。人材確保が困難な状況でIT部門の人材を最大限に活用するために、システム運用の自動化に取り組んだことがポイントになっています。

ある金融機関さまのDX推進体制

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自動化の実装で押さえるべき要点

 IT部門の負荷を軽減し、DXに人材をシフトするために自動化は非常な有効な手段です。しかし、自社内で自動化に挑戦する企業の多くが直面する壁があると竹内氏は指摘します。「さまざまな機器やシステムで個別に自動化を進めていくと、すぐに効果は得られます。それをネットワーク、クラウド、アプリケーション、セキュリティなどを束ねたシステム全体の自動化に持っていくところで壁にぶつかります。なぜならシステムやプロセス間をつなぐために人手の稼働が必要になり、人材の稼働が減らず人為的なミスも発生するため、自動化の効果が実感できなくなってしまうためです。この自動化の歯車を噛み合わせるには、プロのマネジメントスキルが必要になります」

 そこで、自動化実装の有効な一手となるのが外部パートナーへのアウトソーシングです。どこまで人手を介さない自動化を実現できるかがパートナー選定のポイントになります。竹内氏が自動化実装の有効な手段のひとつとして挙げるNTTコミュニケーションズの「Global Management One」は、複雑化するIT環境をグローバルにワンストップで運用・監視・保守するトータルマネージドサービスです。

Global Management One [GMOne]

 「このサービスの最大の特長はオペレーション自動化プラットフォームです。NTTコミュニケーションズにはプロの自動化エンジニアが多く在席しており、これまで多くの案件で標準化・自動化を提供してきた実績があります。そのナレッジをデザイン思考で自動化プラットフォームに反映させ、これまでに2万を超えるスクリプトを実装している状況です。もちろん、人手はほぼ不要であり、統合データベース上でシステムやプロセス間を連携させた自動化が実現できます」

強みの自動化基盤

 続いて竹内氏は1つの導入事例を例示します。ネットワーク、クラウドから各種機器まで約1,500台からなるシステム基盤を自動化したケースです。これらのモニタリングから故障復旧までを自動化プラットフォームで人手を介さずに自動対応しています。

情報系A社さま導入事例

 竹内氏は3つの大きな導入効果を挙げます。「1つめはオペレーションミスの撲滅による平均復旧時間(MTTR)の短縮です。続いては、オペレーター稼働の削減であり、これまでの故障対応に対する7割近くの削減実績があります。最後にUIを変えずに早期導入できること。トレーニング、周知などの必要もありません。こうした効果によりお客さまは戦略的な領域に人材をシフトしてDXを効率的に推進されているのです」

導入効果

 DX推進のカギとなるのはビジネスプロセス改革、ビジネスモデルの創出です。これらをけん引するにはデザイン思考を持ったデジタル人材が不可欠であるため、IT部門が非常に重要な役割を担います。しかし、実際の運用現場では人材不足、オーバーワークが慢性化しており、人材を割り当てることは困難でしょう。そこで、運用業務を自動化することがDX推進の大きなポイントとなります。自動化においては豊富なナレッジを持つパートナー選びが重要になり、どこまで人手をかけずに運用プロセスを横断的に自動化するかが成否を分けるポイントとなります。そして社内のリソースをデジタル人材にシフトさせることが、DX推進の大前提となるのではないでしょうか。

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。

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Bizコンパス編集部

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