ビジネススピードを加速するIT基盤(第6回)

“攻めのIT”を実現する「Cloud Foundry」解説

2017.10.13 Fri連載バックナンバー

 クラウドサービスは、CPUやメモリ、ストレージといったサーバーリソースを提供するIaaS、IaaSにOSやミドルウェア、開発環境などを加えたPaaS、そしてアプリケーションソフトウェアをサービス化したSaaSに大別されます。これまで3つサービスの中で目立っていたのはIaaSやSaaSでしたが、デジタルトランスフォーメーションの時代を迎えて急速にPaaSの注目度が高まっています。そこで企業のPaaS活用の支援で多くの実績を持つPivotalジャパンの市村友寛氏に、PaaSが注目される背景や、PaaSを実現するプロダクトである「Cloud Foundry」について伺いました。

 

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大手自動車会社での採用が続く「Cloud Foundry」

 ソフトウェアの開発および実行に必要なOSや各種ミドルウェアを提供するPaaSは、昨今デジタルトランスフォーメーションを実現するためのプラットフォームとして注目を集めています。PaaS環境を実現するソフトウェアの1つとして、オープンソースで開発が進められているのが「Cloud Foundry」です。当初VMwareによって開発が行われていましたが、その後VMwareとEMCが設立したPivotal Softwareに移管され、現在はCloud Foundry Foundationと呼ばれるコミュニティによって管理されています。

 Cloud FoundryはNTTコミュニケーションズの「Enterprise Cloud 2.0」やIBMの「IBM Bluemix」、SAPの「SAP Cloud Platform」といった商用クラウドサービスで採用されているほか、個別に導入する企業も続々と現れています。

 自動車業界での事例の中でも、ドイツのフォルクスワーゲンと並び特徴的なのが、アメリカの自動車メーカーであるフォード・モーターです。自動車業界では現在、デジタル技術を活用して新たなユーザー体験を提供するための取り組みが積極的に進められています。フォード・モーターでは、モバイルを中心とした新たなユーザー体験を提供するべく、スマートフォン向けのアプリとして「FordPass」を提供しました。このアプリは、駐車場の検索やエンジン始動をはじめとする自動車をコントロールする機能を備えています。

 このスマートフォンアプリのバックエンドシステムとして活用されているのがCloud Foundryです。その背景について、Pivotalジャパン株式会社の市村友寛氏は次のように解説しました。

 「モバイルアプリの提供においては、品質を高めれば高めるほどバックエンドにかかる負荷も増していきます。さらにモバイルアプリのグローバル展開まで考えると、バックエンドはより大きな負荷に耐えられる必要があります。それを踏まえた上で、フォード・モーターはモバイルアプリのプラットフォームとしてCloud Foundryを採用しています」

DevOpsやマイクロサービスといった最新のトレンドに対応

 Cloud Foundryのメリットとして、開発と運用のそれぞれの担当者が連携してシステムを開発する「DevOps」、リリースサイクルの短縮やコードの品質向上を図る「CI(Continuous Integration)」/「CD(Continuous Delivery)」、複数の細かな部品を連携することでシステムを構築する「マイクロサービス」との相性のよさも挙げられます。

Pivotal導入事例からみるトレンド

 デジタル技術を駆使して継続的に価値を提供するためには、開発したソフトウェアをリリースして終わりではなく、継続して運用に取り組み、改善し続けることが求められるでしょう。その際、開発と運用の壁を取り除き、両者が同じ目標に向かって協力するというDevOpsの考え方は極めて大きな意味を持ちます。同様に、テストの自動化などによってリリースサイクルを短縮するCI/CD、システムの柔軟なアップデートを可能にするマイクロサービスの考え方も、継続的な価値提供を可能にするものだと言えます。

 このような新たな考え方を採り入れる上で、サービス管理機能や迅速なアプリケーションの展開とプロビジョニングなどの機能を備えるほか、マイクロサービスのためのフレームワークまで標準実装しているCloud Foundryは、デジタルトランスフォーメーションに取り組む上で大きな力となります。

マイクロサービスとプラットフォーム

クラウドネイティブアプリケーションの開発を支援する取り組み

 デジタル化が進む今後の社会で勝ち残っていくためには、強みを生かすためのソフトウェア開発が差別化のキーファクターとなります。そこでポイントとなるのがアジャイル開発です。短期間のサイクルを繰り返すことでソフトウェアを開発する手法として、アジャイル開発はすでに多くの企業で採用されています。前述したフォード・モーターにおいても「開発手法としてアジャイル開発、特にXP(Extreme Programming)リーンソフトウェア開発と呼ばれる手法を採り入れ、短期間でサービスインを実現しています」と市村氏が述べるように、新しい開発手法を採用しました。

 アジャイル開発で開発サイクルのスピードを高め、さらにマイクロサービスを採り入れると、個々のソフトウェアが作られたり削除されたりするタイミングも早くなります。そのたびに、アプリケーションより下位のレイヤーの要素をいちいちセットアップするのは大変です。しかしCloud Foundryであれば、その辺りがすべてオートメーション化されているため、ミドルウェアの選定やセットアップといったオーバーヘッドを解消できます。ミドルウェア以下のレイヤーの環境を統一できることもメリットと言えます。オープンソースとして開発が進められているCloud Foundryであれば、ベンダーロックインの不安もありません。

 NTTデータとPivotal、Intel、そしてNTTコミュニケーションズの4社は、アジャイルやCloud Foundryのメリットを採り入れ、クラウドネイティブアプリケーションの開発を支援するためのソリューションの提供に向けた検討を進めています。たとえばIoTでセンサーから送られてきたデータを処理するといった流れを実現するためのコンポーネント群を再利用可能な形で提供し、ユーザーは目的に応じて利用するといった形が検討されています。

コンポーネントの論理構成例(IoTプラットフォーム)

 特に共通的に利用される機能は、ユーザーごとに個別に開発するよりも、コンポーネントとして提供されているものを使う方が効率的でしょう。こうしたコンポーネントをマーケットプレースなどの形で提供し、それを利用することで全体最適を図ることがソリューションのポイントとなっています。

 さらにNTTグループでは、アジャイル開発のトレーニングラボを作り、そこで育成プログラムを提供するための計画も進められています。トレーナーのもと、プロジェクトマネージャーと開発メンバー、運用チームといったところが一体となり、1つのシステム開発を実体験しながらアジャイル開発を学ぶといった形が考えられているようです。アジャイル開発は従来のウォーターフォール型の開発とは考え方が大きく異なるため、習得に苦労するケースは珍しくありません。こうしたトレーニングコースが提供されていれば、無駄に苦労することなくアジャイル開発を自社に採り入れられるのではないでしょうか。

Cloud Foundryがもたらす新たな価値の創造

 Cloud Foundryによるプラットフォームの刷新、さらにはDevOpsやアジャイル開発、マイクロサービスといった新たな考え方が生まれた背景には、デジタルトランスフォーメーションの時代を迎え、迅速かつ柔軟にソフトウェアを提供し、新たな価値を創造することに対するニーズの高まりが挙げられます。そのような営みをCloud Foundryはどのようにサポートするのでしょうか。

 「OSやミドルウェアといった基盤部分を抽象化することで、開発や運用に携わる人々の負担を軽減し、競合との差別化を図る部分に注力するといった部分にCloud Foundryは極めて有効だと考えています。開発と運用に携わるそれぞれの人たちが行っていた作業の大部分を自動化し、捻出された時間で競合との差別化につながる価値を生み出していく。それがCloud Foundryがもたらす大きなメリットです」(市村氏)

参考) Pivotal Cloud Foundry

モード2のシステムが求めるインフラの要件

 クラウドやネットワークといったITインフラも大きく様変わりしつつあります。特に昨今ではSoftware Defined技術が広まり、クラウドに接続するためのネットワークをAPIで制御するといったことが可能になってきました。

 多くの企業がクラウドシフトを推し進め、利用範囲を拡大した結果、クラウドに接続するためのネットワークにも変化が求められています。具体的には、安定性のさらなる向上やセキュリティの強化といったものが挙げられるでしょう。これを満たすネットワークとして、キャリアが持つ閉域ネットワークを利用するクローズドVPNがあり、実際に多くの企業がクローズドVPNを使ってクラウドに接続しています。

 しかしながら、モード2と呼ばれるデジタルトランスフォーメーションを実現するためのシステムで利用することを考えた場合、ネットワークの設定や帯域幅の変更に数週間を要するなど、従来のクローズドVPNには課題があったことも事実です。しかし昨今では、Software Defined技術を用いることで、クラウド上のサーバーと同様に、APIを介してソフトウェアでネットワークを制御できるクローズドVPNサービスが登場しています。このサービスを利用すれば、ネットワークまで含めた柔軟なインフラ運用が可能となります。

 その具体的な手段として挙げられるのが、NTTコミュニケーションズの「SD Network Service(以下、SD-NS)」や「SD-WANソリューション」です。同社の本田忠俊氏は、これらのサービスを提供する狙いを次のように説明します。

 「これまでのネットワークサービスは、設定の変更などはすべてお客さまからオーダーをいただき、我々が処理するという形で行っていました。それをお客さま自身がAPI経由で制御できる形にしたのがSD-WAN、SD-NSです。今後、ネットワークを含めたインフラもモード2のシステムが求める要件に対応することが求められるでしょう。それに対し、ソフトウェアでインフラ全体をコントロールできるという世界を私たちは目指しています」

 従来の業務アプリケーションに代表されるモード1※のシステムだけでなく、モード2※のシステムまで視野に入れてインフラを選択するのであれば、制御の迅速性や柔軟性といった視点もインフラ選びにおいて欠かせなくなることは明らかなのではないでしょうか。

※モード1/モード2:ガートナー社の提唱する、デジタルトランスフォーメーション時代のICTの二つの側面、すなわちバイモーダルなIT。基幹系業務アプリケーションのような従来型のシステム(モード1)とデジタルトランスフォーメーションを通じて新たな事業を拡大するためのシステム(モード2)を指す。System of Records(SoR)/System of Engagement(SoE)、あるいは、“守りのIT”/“攻めのIT”と呼ばれることもある。

参考記事)ガートナーも提唱、バイモーダルは“侍と忍者”!?

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Bizコンパス編集部

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