ビジネススピードを加速するIT基盤(第4回)

ハイブリッドICT時代の基幹システム専用クラウド活用

2017.09.20 Wed連載バックナンバー

 「モード2」と言われるビジネスのデジタル化によって、今後ICTインフラがさらに複雑化することは避けられないでしょう。その適切な制御を考えたとき、拠点展開やアプリケーション開発の制約とならないようクラウドとネットワークを一体でソフトウェアで管理・運用する技術の役割がより重要となってきます。

 ここでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代のICTインフラのあり方、そしてモード1とモード2の連携・使い分ける上での「基幹系システム専用クラウド」という新たな選択肢について、2017年8月に開催されたSAP Forum Tokyoで登壇したNTTコミュニケーションズ ICTコンサルティング本部の戸川浩一氏の講演をもとに解説します。

 

ITインフラは「モード1」と「モード2」がクロスする

 ガートナーが提唱するバイモーダルITでは、業務の効率化や合理化のために導入されてきた既存のシステムを「モード1」、デジタル技術を駆使して新規ビジネスの創出を目指す新しいシステムが「モード2」と分けています。

 このように特性の異なるシステムのインフラを構築する際、モード1は閉域ネットワークなどを利用したセキュアで信頼性の高い環境、モード2はオープンネットワークであるインターネットを活用した柔軟性の高いインフラとして整備するのが一般的な考え方でした。しかしNTTコミュニケーションズの戸川浩一氏は、このような現状が変わりつつあると指摘します。

 「モード1の基幹システムだからといって閉域ネットワークで固めてしまうと、目的別のネットワークが乱立する状態になってしまいます。モード2についても、オープンなネットワークを使えばいいという簡単なものではありません。たとえば工場内にIoTセンサーを組み込むといった場合では、閉域ネットワークを使ってセキュアなインフラを構築したいでしょう。さらに言えば、モード1のシステムにモード2で得られたデータを流し込み、従来とは別の角度で分析を行うといった営みも考えられます。このように、インフラの観点で言えばモード1とモード2がクロスするというのが現在の大きな流れになっています」

ハイブリッドICTは避けられない

 

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ソフトウェア技術により俊敏にITインフラを制御

 ネットワークが複雑化すれば、インフラの構築や運用管理はこれまで以上に難しいものとなるでしょう。加えて、モード2では新たなシステムの開発や既存アプリケーションのアップデートが急激な勢いで行われるため、さらに難易度が増すことになります。

つぎはぎ・手さぐりでは限界

 このような状況下でITインフラを適切に管理するためのキーテクノロジーとして挙げられるのが「Software Defined(SD)」です。

 「アプリケーションをソフトウェアでコントロールするように、ネットワークインフラについてもソフトウェアで管理するというのが現在のトレンドです。これによってアプリケーションからインフラまでを俊敏かつガバナンスが効いた形でコントロールし、事業サイドの要請に応えていく。こうした世界が求められていると私たちは捉えています」

インフラもソフトウェアで管理

 こうしたニーズに応えるため、NTTコミュニケーションズで提供しているのが「Software-Defined Network Service(SD-NS)」と「SD-Exchange」です。両者に共通するコンセプトは、仮想化技術を使ってサーバーやネットワーク、ストレージなどを抽象化し、ソフトウェアによって操作するという「SDx(Software Defined Everything)」であり、SD-NSとSD-Exchangeはいずれもネットワークインフラにおける課題をソフトウェアで解決します。

ハイブリッドICT環境をマネジメントするサービス
SDx(Software Defined-Everything)

 SD-NSはVPNサービスとインターネットといった複数のネットワークを利用し、通信内容に応じてトラフィックを振り分けることにより、セキュリティと柔軟性を併せ持ったコスト効率の高いWANを構築するというサービスです。特に昨今はクラウド利用の増加により、ネットワーク帯域が不足しているといったケースが少なくありません。とはいえ、安易な帯域拡大は当然ながらコスト負担が増加します。SD-NSはこういった課題を解決しつつ、ソフトウェアによる制御で柔軟な運用を可能にします。

 現在のITインフラにおいて欠かせない存在となった、クラウドと接続するネットワークの柔軟性を高めるためのソリューションがSD-Exchangeです。対応するクラウドサービスはNTTコミュニケーションズの「Enterprise Cloud」や「Amazon Web Services」などがあり、これらに接続するネットワークの一元的な管理をソフトウェアで実現しています。

IaaSの世界では基幹系システムの移行が本格化

 同様に物理サーバーをソフトウェアで制御するIaaSの世界では、ERPをはじめとする基幹系システムの運用が本格化し始めています。実際、ERPの代表的な存在である「SAP ERP」をクラウド上で運用するといった事例は続々と現れており、今後この流れが加速するのは間違いないでしょう。

 昨今では、基幹系システムの運用に特化したIaaSも現れ始めています。その1つとして戸川氏が説明したのは、NTTコミュニケーションズが提供するクラウドサービスであるEnterprise Cloudに新たなメニューとして追加された「Enterprise Cloud for SAPソリューション」です。

 「このサービスでは、Virtustream社のテクノロジー、さらにその親会社であるDell EMCのハイパーコンバージドインフラなどを採り入れています。Virtustreamは欧米において『Virtustream Enterprise Cloud』というサービスを提供している会社であり、ホステッドプライベートクラウドのカテゴリにおいて、調査会社であるフォレスターからリーダーとして評価されています。またSAP HANA Enterprise Cloudのプレミアムパートナーでもあり、SAPにも精通している企業です」

Enterprise Cloudのラインナップ

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基幹系システム専用クラウド【特長1】標準メニューにDR構成を組み込んで災害対策を実現

 サービスの特長となっているのは、最高99.999%のSLAを実現している点です。基幹系システムがトラブルなどによって停止した場合の影響は極めて大きいことから、できるだけ稼働率を高めたいと考えるのは当然でしょう。しかし多くのパブリッククラウドがSLAで定める稼働率は99.95%程度であり、不安が残るのも事実でした。これに対し、Enterprise Cloud for SAPソリューションはワンランク上の稼働率を実現しています。

新サービスの特徴/信頼性

 災害対策として、DR構成を標準メニューとして提供していることも見逃せないポイントとなっています。

 「ホットスタンバイ構成でDRを実現しようと考えても、従来はコストの関係で単純にデータだけを遠隔地で保存していたというお客さまが多いと思います。しかしEnterprise Cloud for SAPソリューションでは、標準メニューとしてDR構成を提供しており、選択していただくだけで東京と大阪の2つのデータセンターを使ったDR構成を実現できます。利用しているのはストレージレベルのレプリケーション技術であり、RPO(Recovery Point Objective:目標復旧時点)は15分、RTO(Recovery Time Objective/目標復旧時間)は約1時間となります」

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基幹系システム専用クラウド【特長2】まさに使った分だけ課金、真の従量課金制を可能にした「μVM」

 サービスのアーキテクチャーにも工夫が凝らされています。一般的にパブリッククラウドでは、原則としてシェアードアーキテクチャーの中で仮想ファイアウォールの組み込みも利用者の設計次第となりますが、本サービスでは、用途別にゾーンが物理的に独立し、ゾーン間のトラフィックも必ずファイアウォールを通過するアーキテクチャーで、高い信頼性とセキュリティを実現しています。

 料金体系にも特長があります。一般的なパブリッククラウドでは、選択したインスタンスのタイプの利用時間によって料金が定まります。その利用時間の中に使用率が低いアイドリング状態があっても、インスタンスタイプごとに定められた料金を支払わなければなりません。

 一方、Enterprise Cloud for SAPソリューションでは、実際のリソース使用量を自動的に計測し、その使用した分だけを課金対象とする、真の従量課金制となっています。これを可能にしているのがVirtustream社の特許技術である「μVMテクノロジー」であり、これはCPUやメモリなどの利用量をチェックし、課金単位である「μVM」に変換します。このような課金体系のため、あらかじめ過剰なリソースを確保しておく必要がなく、コスト最適化が図れるというわけです。

新サービスの特徴/経済性(μVM課金)

 デジタルトランスフォーメーションの時代を迎え、現在のIT部門がモード1とモード2の双方に適切に対応することを考えたとき、全システムを1つのクラウド基盤で運用するのではなく、基幹システム向けには最適化されたクラウドを選択することで安定運用やコスト削減を図りつつ、Software Defined(SD)技術をインフラに組み込んでハイブリッドICT環境をマネジメントしやすくすることが鍵となるのではないでしょうか。

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Bizコンパス編集部

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