エンタープライズ向けミドルウェアやアプリケーションの世界で大きな存在感を放っているオラクルでは、「Oracle Cloud」としてクラウドサービスを展開しています。企業ITの世界を知り抜いたオラクルならではのクラウドサービスであり、すでに多くの企業が活用し始めています。このOracle Cloudの特長、なかでもプラットフォームとインフラストラクチャをクラウドで提供するPaaSとIaaSについて、さらにNTTコミュニケーションズが提供する「Multi-Cloud Connect for Oracle Cloud」への期待について、日本オラクル 執行役員 クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud Platformソリューション営業本部 本部長の竹爪慎治氏に伺いました。
わずか2015年第4四半期から2017年第2四半期までの間に、PaaSの新規ユーザーが1,700%、IaaSに至っては2,300%増加と、日本におけるユーザー数を一気に伸ばしているクラウドサービスが「Oracle Cloud」です。
オラクルではエンタープライズシステムの多くで使われている「Oracle Database」のほか、ERPパッケージである「Oracle E-Business Suite」、ハードウェアとソフトウェアを一体化した「Oracle Exadata Database Machine」に代表されるエンジニアドシステム製品など、エンタープライズ向けのプロダクトを幅広く展開しています。こうしたプロダクトをクラウド上でも利用可能にするのがOracle Cloudです。
日本オラクル株式会社 執行役員 クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud Platform ソリューション営業本部 本部長の竹爪慎治氏は、Oracle Cloudの特長について「ほかのクラウドベンダーとの違いとしては、やはりIaaSからPaaS、そしてSaaSのすべてのレイヤーでクラウドサービスを提供していること、それが私たちのサービスの大きな強みであると考えています」と話し、各々のレイヤーの特長を次のように説明しました。
Oracle Cloudの戦略

「まずIaaSについて言えば、すでにオンプレミスでオラクルのプロダクトをご利用されているお客さまの要件にきちんと応えられるインフラとして提供していますし、今後も継続的に拡張していきます。PaaSレイヤーでは、Oracle Database、あるいはアプリケーションサーバーであるOracle WebLogic Serverなどをご利用されているお客様が、マイグレーションの負荷を最小限に抑えてクラウドに移行できるように、オンプレミスとクラウドで同じアーキテクチャを使っていることがポイントです。このため、オンプレミスとクラウドのいずれであっても、同じ知識・ノウハウを使って開発や運用が行えます。SaaSはERPやHCM(Human Capital Management)といった基幹系の領域、さらには営業、マーケティング、カスタマーサービスを支援するクラウドなど、さまざまなビジネスをカバーするポートフォリオを提供していることが特長です」
Oracle Cloud Platformの戦略

お客様の環境(データセンター)でOracle Cloud の機能を利用することができる、「Oracle Cloud at Customer」も特徴的なサービスでしょう。こちらはOracle Cloud で提供されているサービスをお客様の環境で利用できるというものです。注目したいのは料金体系で、自社のデータセンターに設置して使いつつ、Oracle Cloudと同様にサブスクリプションモデルで利用することが可能です。つまりライセンス費用を支払ったり、またハードウェアを購入して資産として所有したりすることなく、Oracle Cloudのサービスを使えるというわけです。
オラクルがご提供する3種類の活用形態

このサービスが特に大きな意味を持つのは、外部への持ち出しが厳しく制限されたデータを扱うシステム、あるいはネットワーク遅延の影響が大きいシステムを構築するケースでしょう。このような場合、ファイアウォールの外側にあり、また社内ネットワークに比べて遅延が大きくなるクラウドサービスでのシステムの運用は厳しく、必然的にオンプレミスを選択せざるを得ません。しかしOracle Cloud at Customerであれば、ファイアウォールの内側で運用する形であり、データを外に持ち出す必要もなく、またネットワークの遅延も気にせず利用することが可能です。
Oracle Cloud Machineのメリット

さらにOracle Cloud at Customerとクラウド上で提供されているOracle Cloudの各サービスを組み合わせるといった形も考えられるでしょう。たとえば基幹系システムなど継続的に運用することが前提のシステムはOracle Cloud at Customerを利用しつつ、新たなサービスを提供するためのインフラなど、スピードが求められる場面ではOracle CloudのIaaSやPaaSを使うといった形です。もちろん、既存のオンプレミスのシステムとOracle Cloud をつなぐということも十分に想定されます。
こうしたデータセンター内のオンプレミス環境と、Oracle Cloudの接続に使うネットワークには、お客さまによってさまざまな要件があると竹爪氏は話し、パートナーシップの重要性を語りました。
「ネットワークに対するさまざまな要件に個別に対応するためには、当然お客さまに要望を伺った上でインテグレーション作業を行う必要があります。その際、オラクルがネットワークについてSIをするというのは困難です。そういった場面で、ネットワークにおいて豊富な実績とノウハウを持つNTTコミュニケーションズと協業という形で一緒にやらせていただくと、要件を満たした形でシームレスにつなぐことができます。そして、私たちオラクルも得意分野でお客さまに価値を提供できる。その意味で、今回の『Arcstar Universal One』における『Multi-Cloud Connect』の協業は非常に意味があると考えています。
竹爪氏が話す協業とは、NTTコミュニケーションズが提供するVPNサービスであるArcstar Universal Oneにおいて、Oracle Cloud と接続する「Multi-Cloud Connect for Oracle Cloud」オプションを提供したことを指します。Arcstar Universal Oneでは、「Enterprise Cloud」をはじめとする自社のクラウドサービスに加え、「Microsoft Azure」や「Amazon Web Services」との接続を可能にするオプションサービスを提供していますが、その1つとしてOracle Cloudが加わったというわけです。
サービス提供イメージ

「Multi-Cloud Connectのようなサービスがなければ、たとえばOracle Cloudを提供する環境で専用線の接続点を用意したとしても、そこに対してつなぎ込む部分でインテグレーションにかかるコストと時間がかかるほか、さらに品質を担保することも容易ではありません。しかしMulti-Cloud Connectがあることで、ネットワークのプロフェッショナルであるNTTコミュニケーションズの知見をユーザーが利用できるというメリットは大きいと感じます。また我々としても、Oracle Cloud の各サービスにおいて、Multi-Cloud Connectと組み合わせることによりセキュリティや安定性といった面で、お客さまの要望に応えられるのは大きなメリットです」(竹爪氏)
Oracle CloudではIaaS/PaaS/SaaSの各レイヤーでサービスを提供するだけでなく、デジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みも加速しています。竹爪氏は「デジタル化に向けたストラテジーに対して、コストを最適化した上ですばやく立ち上げられるかという部分がプラットフォーマーとしての役割だと思います。オラクルがそこに1枚付け足しているのは、それを既存のシステムとシームレスにつなぎ込んでいくという部分です」と、デジタルトランスフォーメーションの時代におけるOracle Cloudのアドバンテージを説明しました。
マルチクラウドの時代を迎え、今後ユーザーはこれまで以上に各クラウドサービスの特性を理解し、相互間接続による使い分けることが求められるようになるのは間違いないでしょう。その点について考えを及ぼすとき、今回紹介したOracle Cloud の数々の特長、そしてそこで提供される各サービスを安全に使えるMulti-Cloud Connect for Oracle Cloudの存在は意識しておくべきではないでしょうか。
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