ビジネススピードを加速するIT基盤(第15回)

Office365やG suite等の利用増によるネットワークトラブルの解決策

2018.06.01 Fri連載バックナンバー

 昨今、多くの企業が、生産性向上や働き方改革を目的に、「O365」「G suite」といったSaaS型クラウドサービスの導入を積極的に進めています。しかし、そうしたクラウドサービスを導入したことで、ネットワークの遅延などが発生するケースもあり、本来の目的に貢献できないという問題がしばしば起きています。このような問題の打開策について見ていきます。

 

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なぜネットワークのトラブルは発生し、IT部門のせいにされるのか

 そもそもOffice365、G suiteなどのクラウドサービスを利用すると、なぜ「レスポンスが遅い」「接続が切れる」といったトラブルが起こるのでしょうか。多くの企業では全事業所からのインターネット接続を本社やデータセンターに集約し、ファイアウォールなどで一元的にセキュリティを確保しています。そのようなネットワーク構成の企業において、通信量やセッション数の多いクラウドサービスを多数の社員が一斉に利用すると、セキュリティ処理の負荷が増大して本社やデータセンターの通信にボトルネックが発生し、利用するアプリケーションの速度が遅くなります。事業拠点と本社を結ぶWAN回線や、本社のFW/Proxyなどの機器、全社のトラフィックが集中するインターネット回線は、SaaS利用にあたって必要なスループットや帯域を想定しきれていないことが多いからです。

G suite、Office365利用におけるネットワークトラブルの仕組み

 Office365やG Suite等のアプリケーションの不調は業務効率の悪化に直結するため、その場合のクレームの矛先はIT部門に向かうこともあります。しかし、実際にクレームが寄せられて初めて、クラウドサービスが実装されたことをIT部門が知るケースもあると、NTTコミュニケーションズの沢田裕太氏は指摘します。

「Office365、G suiteなどの導入は事業部門の主導で行われることが多く、導入においてはスピード感が重視され、IT部門は蚊帳の外に置かれてしまうことがあります。事業部門の視点で見ると、クラウドサービスが先でネットワークは後回しにされる傾向があります。ネットワークはつながって当たり前という認識で導入が進むため、いざ使う際に問題が起きてIT部門が責められるのです」

 とはいえ、クラウドサービスの利用を制限することは、経営課題の解決を妨げることになりますので、今後さらに利用が拡大することを想定してWANの構造そのものを見直す必要があります。このボトルネックを解消する手段の1つとして注目されているのが、ローカルインターネットブレイクアウト(LBO)です。これは各事業拠点で利用する特定のクラウドサービスのトラフィックに限ってセンター拠点を通さず、拠点から直接インターネットに逃がすというものです。Office365、G suiteなどのクラウドサービスは提供元のサービス事業者がセキュリティを確保しており、通信も暗号化されているため、ブレイクアウトさせてもセキュリティ上の問題はないという考え方です。

ローカルインターネットブレイクアウト(LBO)のイメージ

ネットワークサービスの死角“仕様からはみ出る1割”が明暗を分ける

 しかしながらIT部門がLBOに取り組もうとすると、もうひとつ大きな問題が起こり得ます。LBOの実装に向けて、最初にIT部門が頼りにするのは、ネットワークサービスを提供する事業者です。とはいえ事業者へ問い合わせると、「ネットワークサービスプロバイダの対応領域はレイヤー3までです。上位のアプリケーションの利用の仕方までを勘案した上で、そういったソリューションを検討するには、個別設計を行う必要があります」と回答されることが多いでしょう。一般的にネットワークサービスは規約に則ったサービスの型が決まっており、少しでもサービス提供領域からはみ出ると、高額な個別対応の領域になってしまいます。

 ネットワークサービスを企画する立場から、沢田氏は事情を明かします。

「かつては約款に定めた通りの仕様に従ってネットワークで拠点間を結べば、それでお客様の要望を満たすことが出来ました。しかし現在は、クラウドサービスを通じてさまざまなアプリケーションを利用するため、ネットワークへの要望が多様化しております。そのため仕様の範囲内で9割の要望に対応できても、残り1割の要件のためにカスタマイズを必要としてしまうケースが増えています」

 この問題はLBOに限ったことではありません。ネットワークの冗長化、セキュリティ対策、ネットワークや機器の更改、Wi-Fi導入などは、1割でも仕様から外れた要件があると、高コストなカスタマイズを必要としてしまうことも少なくありません。

 高コストでも構わないと決断したIT部門が頼りにするのは、日ごろから付き合いのあるベンダーやSIerでしょう。ところが、ここにも一件落着とはならない事情があると沢田氏は指摘します。

「トップからボトムまで業務全体を俯瞰的に見ないと、クラウドサービスの遅延を解消する最適解を導き出すことができません。ネットワークインテグレーションとして発注を行うと要件の再定義が必要になり追加の費用を要求されることもあるでしょう」

 クラウド接続の最適化といったネットワークへの新たな要求に、多くの企業のIT部門が頭を抱える事態が起きています。解決にはネットワークサービスのスタンスを新たに作り直す必要がありました。

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その“1割”を解決!IT部門必見の新サービス

 これまでネットワークサービスは仕様で定型化、仕様を少しでも超える要望はフルカスタマイズが必要というように、分離された状態でITシステムが構築されていました。紳士服でいえば既製品のスーツが好みでなければオーダーメイドのスーツしか選択肢がない状況です。

 そのような中サービスの規約を見直し、セミオーダーのスーツとなり得る新たなサービスが登場しました。NTTコミュニケーションズの「Network Support Services(NSS)」です。これは同社が提供するネットワークサービスのオプションとして提供されるもので、従来の定型化されたネットワークサービスではカバーできない個別対応が必要な“1割”の部分を、セミカスタマイズにより解決します。

Network Support Services(NSS)の概要

 このサービスは、SIにハードルの高さを感じる中堅・中小規模の企業におすすめしたいと同社の岡崎直人氏は語ります。

「定型化されたネットワークサービスには、“低コスト”や“イージーオーダー”といった良い面はたくさんあります。それをベースにしつつ、仕様からはみ出る部分をセミカスタマイズで対応することで、案件全体をカスタマイズ対応するよりも手軽に利用できる点がポイントです。これまでのネットワーク構築実績をもとに、よくあるケースはすでにパターン化してあるので、スピーディに対応することができます」

 このサービスにより人材不足に悩む企業のIT部門の業務をバックアップできると岡崎氏は考えています。

「従来のようにネットワークはキャリア、機器はベンダー、システムはSIerではなく、ネットワークをベースとしながら、それに付随するさまざまな相談、構成検討、構築、請求の窓口を一元化できるサービスになっています。LBOならば、アプリケーションのトラフィックが可視化できるルーター、お客さま側でネットワークの設定変更ができるポータルサービス、回線に接続されるルーターまでを、機器の設計から運用保守までをネットワークサービスの一環として対応することができます。ネットワークサービスの仕様を超えた要望に柔軟に対応できる、いわばかゆいところに手が届くサービスだと考えています」

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ルーター1台、LBOのトライアル…部分利用できる“本当の価値”とは

 実際にNSS導入により可能になることを、SEを担当する同社の廣瀬亮氏が解説します。

「以下のケース1では、オレンジの破線がLBO実装のための個別対応が必要な部分であり、NSSを活用する拠点です。実際にお客さまの現場にお伺いして、基幹系システムの通信は閉域網、Office365、G Suiteはインターネットに振り分けてデータセンターのボトルネックを解消できるかどうかを検証します。効果を確認できたら他拠点に全面展開し、確認できない場合は次の選択肢を試していくのです」

 

 

 

ケース1(LBO対策)

 沢田氏は、このスモールスタートによる検証こそがLBOでは重要だと指摘します。

「Office365、G suiteの通信だけを切り分けるといえば簡単なのですが、ベンダーによってLBOには“癖”があるので、必ずしも成功するとは限りません。スモールスタートで効果を検証して導入する方が、我々も安心して提案できます。ネットワーク設計の知見を生かし、クラウドサービスを含むシステム全体を見据えて、カスタマイズやチューニングを実施しながらお客さまに最適な環境を検討し、全面展開していくことがクラウドアクセスの最適化を成功させるセオリーとなります」

 このようなLBO、クラウドセキュリティといったトレンドへの個別対応に加えて、細かな要件のオーダーを受けることも多いと廣瀬氏は語ります。

「拠点のルーターが1台だけEOLを迎えるので対応してほしい、構成図、設定情報が不明な古いOSが設定されたネットワーク機器を更改してほしいといった要望にも対応可能です。IT部門の抱えるさまざまな課題を、気軽に相談して解決できることがNSSの大きな特長といえるでしょう」

 沢田氏は、NSSのようなサービスは国内キャリア初だと明かします。

「これまでスイッチやLANなどのコンポーネント単位での対応はありましたが、お客様の業務全体を見据えたきめ細やかな対応を気軽に行えるサービスはありませんでした。ネットワークはキャリアだからわかる長所短所が多く、SIerが受託する案件のネットワーク部分をNSSが担うケースも複数件いただいております」

 SIerのみならず、サービサーやプラットフォーマーとして新たなビジネスを展開していく企業をもサポートできるNSSですが、メインとなるターゲットはIT人材不足に悩む中堅・中小規模の企業にほかなりません。これまでサービスでは提供できなかった“1割”をサポートし、IT部門を攻めの業務に集中させ、事業の成長をサポートすることが最大の目的となります。お悩みを抱えるIT部門の担当者は、まずは一度検討してみてもいいのではないでしょうか。

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。

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Bizコンパス編集部

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