しかしながらIT部門がLBOに取り組もうとすると、もうひとつ大きな問題が起こり得ます。LBOの実装に向けて、最初にIT部門が頼りにするのは、ネットワークサービスを提供する事業者です。とはいえ事業者へ問い合わせると、「ネットワークサービスプロバイダの対応領域はレイヤー3までです。上位のアプリケーションの利用の仕方までを勘案した上で、そういったソリューションを検討するには、個別設計を行う必要があります」と回答されることが多いでしょう。一般的にネットワークサービスは規約に則ったサービスの型が決まっており、少しでもサービス提供領域からはみ出ると、高額な個別対応の領域になってしまいます。
ネットワークサービスを企画する立場から、沢田氏は事情を明かします。
「かつては約款に定めた通りの仕様に従ってネットワークで拠点間を結べば、それでお客様の要望を満たすことが出来ました。しかし現在は、クラウドサービスを通じてさまざまなアプリケーションを利用するため、ネットワークへの要望が多様化しております。そのため仕様の範囲内で9割の要望に対応できても、残り1割の要件のためにカスタマイズを必要としてしまうケースが増えています」
この問題はLBOに限ったことではありません。ネットワークの冗長化、セキュリティ対策、ネットワークや機器の更改、Wi-Fi導入などは、1割でも仕様から外れた要件があると、高コストなカスタマイズを必要としてしまうことも少なくありません。
高コストでも構わないと決断したIT部門が頼りにするのは、日ごろから付き合いのあるベンダーやSIerでしょう。ところが、ここにも一件落着とはならない事情があると沢田氏は指摘します。
「トップからボトムまで業務全体を俯瞰的に見ないと、クラウドサービスの遅延を解消する最適解を導き出すことができません。ネットワークインテグレーションとして発注を行うと要件の再定義が必要になり追加の費用を要求されることもあるでしょう」
クラウド接続の最適化といったネットワークへの新たな要求に、多くの企業のIT部門が頭を抱える事態が起きています。解決にはネットワークサービスのスタンスを新たに作り直す必要がありました。