AzureおよびAzure Stackを活用し、企業インフラとして最適な、新たなハイブリッドクラウド環境を構築することを考えるとき、Azure Stackに適した品質と運用を確保できるデータセンターの選択はもちろん、パブリックに提供されるAzureとデータセンターに設置したAzure Stackとを、いかにスムーズに連携させるかがひとつのポイントとなってきます。データセンターとデータセンター、あるいはデータセンターとパブリックなクラウドを柔軟に接続する仕組みが重要になってくるわけです。
このような課題について、「Nexcenter」と「SD-Exchange」という解決策を提示したのは、NTTコミュニケーションズの井上雅夫氏です。
Nexcenterは同社が提供するデータセンターの高品質ブランドであり、SD-Exchangeはそこで提供されるネットワークサービスです。ソフトウェア技術を使ってネットワークをコントロールするSDNの技術を応用し、コロケーションやさまざまなクラウドサービスへの柔軟な接続を可能にするというもので、パブリックに提供されているAzureへの接続サービスの開発も進められています。つまりこれを利用すれば、AzureとAzure Stackを設置したデータセンターとの間を閉域ネットワークで結び、管理ソフトウェアやコーディングによる自動連携で自由にパブリックとプライベートの両空間を行き来するといったことが可能になります。Azure Stackでシステムを動かしつつ、そのレプリケーション先としてパブリッククラウドのAzureを利用するといったことも実現するわけです。
企業インフラの最適化を行う場合、グローバル全体での統合も視野に入ってくるでしょう。グローバル全体でのインフラの一元化が可能となれば、ガバナンスの強化やコスト最適化に大きく近づくことになります。Azure Stackを活用すれば個々の拠点ごとにプライベートクラウド環境を構築し、さらにAzureと統合するといったことは可能です。とはいえAzure Stackの設置場所として拠点ごとに品質やAzureとの接続方法が異なるデータセンターを利用すれば、ネットワークの複雑化を招く可能性があるほか、運用レベルの統一を図ることも難しくなるでしょう。これに対して井上氏は、NexcenterとSD-Exchangeはグローバル環境で活用できるサービスだとした上で、Azure Stack環境をグローバルに展開、統合していくフェーズにおけるインフラ選択のポイントについても指摘します。
「NTTコミュニケーションズでは、グローバルで140以上のデータセンターを『Nexcenter』のブランド名で展開しています。アメリカやヨーロッパ、東南アジア各国、さらにインドや中国、オーストラリア、日本の主要都市へ展開しており、これらのデータセンターにおいてSD-Exchangeサービスを提供しています。つまり、どの地域にAzure Stackを設置した場合でも、Azure Stack同士、あるいはAzure StackとAzureとの間をSD-Exchangeで効率的に連携させることができます。さらにNexcenterはグローバル統一の設備基準とサービス運用基準を定めているため、これを利用していただくことでグローバルのどこででも最適な形でAzure Stackを運用していただくことが可能です」


NTTコミュニケーションズでは、SD-Exchangeに加え、VPNサービスである「Arcstar Universal One」の「Multi-Cloud Connect」オプションにおいても、閉域網経由でのAzure接続を提供しています。このように多様なサービスを必要に応じて使い分けられるのは、グローバル全体でのAzure Stack活用を考える上で大きなメリットとなります。

また同社は、Azure Stackを運用するためのインフラを提供するにとどまらず、Azure Stackのマネージドサービスの提供も予定しています。これはヒューレット・パッカード・エンタープライズのアプライアンス製品を用いたものであり、すでに金融機関をはじめとしたいくつかの企業とPoCを進めていると井上氏は説明します。Azure Stackの活用を検討する上で、こちらも興味深いサービスとなるでしょう。
プライベートクラウドとパブリッククラウドの双方を活用したこれからのITインフラを考える上で、Azure Stackがもたらす価値は極めて大きいのは間違いないでしょう。ただし、それを積極的に活用するのであれば、Azureとの接続から運用やセキュリティまで含めて、トータルでITインフラを見直す必要があります。導入に際しては、こういった点も相談できるベンダーをパートナーに選ぶことが重要ではないでしょうか。
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