2015年6月に構築に着手し、10月に社内利用でのトライアル利用を開始、まもなく安定して利用できる環境が整い、ファーストユーザ獲得に至ります。満を持してセールスを開始したものの、当初は苦戦を強いられます。神保氏は当時の苦労を振り返ります。
「既存のお客さまをDCANに置き替えるのではなく、DCANのメリットを訴求できる新規のお客さまを探すところから始めました。長年ネットワークを提供してきたプロの事業者として、新たな需要の開拓は重要です。しかしお客さまや社内の営業に、従来の個別手配によるネットワーク再販とDCANの違いをなかなか理解してもらえませんでした。お客さまの拠点からサービスまでを一元提供でき、高い信頼性で「EINS WAVE」と接続できるDCANの持つメリットを社内外に啓蒙活動して、ようやく1年後あたりから軌道に乗ってきました」
啓蒙活動が功を奏し、DCANの売り上げは次第に増加。提供開始から3年で契約数は目標値を突破。これは同社が想定していた年間1,000回線程度の目標値を大きく上回る結果です。しかも大半がリプレイスではなく新規導入であることを考えれば、かなり大きな成果と言えるでしょう。このヒットの理由を神保氏は以下のように分析します。
「導入が加速した一因は、DCANがTISインテックグループのデータセンターに広がったことです。これまでにもグループでの協業はあったのですが、統合された通信基盤をベースに私たちとグループ会社が互いのサービスプラットフォームを、異なるエリアや用途で販売できるようになったことが大きいと思います」
各種サービスを1つのバックボーンへ統合できる「DCAN」

たとえば、インテックが提供するIaaS「EINS/SPSシリーズ」は、大半の顧客がセットでDCANを導入していると言います。またデータセンター構内からAzure、AWSといったパブリッククラウドサービスへの接続も増大しています。さらにDCANでの拠点間接続に加え、東京と大阪のデータセンターでIaaSを契約して冗長化するケースも増えており、BCP、DR対策を強化するソリューションとして根付きつつあります。
鍛原氏はサービスを提供する側にも大きなメリットが生まれたことを実感しています。
「DCANを自社構築していちばん良かったのは、能動的なアクションが取れるようになったことです。たとえば、お客さまの厳しい納期を受けてモバイル回線で暫定的に接続し、次に本丸の専用線を引き込むようなことが柔軟にできるようになりました。これまではキャリアさんに問い合わせなければ判断できなかったことが、私たちの判断で迅速に対応できるようになったことは大きいですね。サービス利用を前提としたネットワークを提供し、ワンストップで運用するという攻め方ができるようになりましたので」。もちろん一元提供によりシステム全体の構成が可視化できたため、故障切り分け、復旧対応がスムーズになったことは言うまでもありません。