ビジネススピードを加速するIT基盤(第12回)

インテックがネットワークを一元提供する狙いとは

2018.02.28 Wed連載バックナンバー

 データセンターやクラウドサービスを提供するITベンダーにおいて、顧客と自社サービスを結ぶネットワークについては、各通信キャリアから個別調達することがほとんどでしょう。しかしインテックは、自社独自のネットワークブランドを立ち上げました。そこにはどのような狙いがあり、どのような効果をもたらしているのでしょうか。

【株式会社インテックについて】

1964年の創業以来、株式会社インテック(以下、インテック)はコンピュータ・ユーティリティ社会の実現を目指し、1980年代よりVANサービスの提供を開始するなど顧客と自社サービスを結ぶネットワーク事業に注力してきました。現在、同社では富山、東京、大阪に配置したデータセンター間を広帯域ネットワークで接続した広域仮想クラウドサービス「EINS WAVE(アインスウェーヴ)」を基盤としてEDIIaaS、ハウジング、セキュリティなどの多様なサービスを提供しています。

 

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BCP需要、クラウド普及に伴う通信基盤の構築が急務に

 インテック ネットワークサービス部長 鍛原卓氏は「EINS WAVE」提供の背景を説明します。

「東日本大震災以降、多くのお客さまに『データは自社で持つより預けたほうが安心』といった意識が強まったことを受けて、データセンター間を接続する広域仮想クラウドサービス「EINS WAVE」の提供を開始しました。さらに近年のクラウド化の波により、社内リソースを外部に預けるニーズはますます高まりつつあります」

 一方でサービスニーズの高まりに伴い、大きな課題も顕在化していました。それは顧客とデータセンター間を接続するネットワークにあったと鍛原氏は指摘します。

「従来私どものサービスとお客さまをつなぐネットワーク回線については各キャリアに手配して設計・構築する個別対応をしており、コスト試算やバックアップ構成の設計などサービス導入時の管理が非常に煩雑でした。またキャリアごとに独自のルールやマナーがありますので、導入後のトラブル発生時の切り分けや復旧対応もその都度大変な作業になります。また、IT-BCPの観点においても、信頼のおける冗長性を持ったネットワークは必須です。そこで、お客さまと私たちのサービスをつなぐ自社ネットワーク構築を決断したのです」

 そこで同社では自社のデータセンター間ネットワークバックボーンとキャリアのバックボーンとを多重化・相互接続してお客さま拠点等の接続を実現する新たなネットワーク基盤の構築構想を立てます。その狙いについて、同ICTサービス課長 神保岳大氏は「非常に信頼性の高いネットワークを介して、私たちの提供するデータセンターやサービスに直結できること。これがお客さまにとっては大きなメリットになると考えたのです」と解説します。さらに同社では新たなネットワーク基盤の構築により、自社のみならずグループ企業のリソースやサービス連携を強化する計画も持っていました。

 

新たなサービスを理解させる周知の重要性

 新たなネットワーク基盤の構築に向けて、同社ではネットワークパートナーの選定を開始します。各社からの提案内容に大きな差異はなかったため、最終的な決め手は過去の実績やフットワーク、技術力も含め“本当に信頼できるかどうか”だったと鍛原氏は明かします。

「各社から提案されたネットワークの機能面、コスト面では差異がありませんでした。従来よりEINS WAVEのデータセンター間ネットワークのバックボーンにはNTTコミュニケーションズを利用しており、障害発生時は、速やかに技術スタッフを同行して駆けつけてくれたフットワークと技術力を高く評価しました」

 続けて神保氏も「カタログのスペックで出てくる話より、さらに深いところまで掘り下げて、検討しました。サービスというよりも、むしろ最も信頼性の高いキャリアという視点で選んだといっても過言ではありません」と補足します。

 こうして同社ではNTTコミュニケーションズの「Arcstar Universal One」および「Arcstar Universal One モバイル」をバックボーンに組み込んだ、新たなネットワーク基盤「DCAN」構築プロジェクトは始動。インテックの各種サービス、グループであるTIS株式会社の各種サービス、Microsoft Azure、Amazon Web Servicesといったパブリッククラウドサービスと顧客のIT環境がワンネットワークで提供できる環境が整いました。

DCANのサービス提供イメージ

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顧客層の拡大で目標値を上回るヒットに

 2015年6月に構築に着手し、10月に社内利用でのトライアル利用を開始、まもなく安定して利用できる環境が整い、ファーストユーザ獲得に至ります。満を持してセールスを開始したものの、当初は苦戦を強いられます。神保氏は当時の苦労を振り返ります。

「既存のお客さまをDCANに置き替えるのではなく、DCANのメリットを訴求できる新規のお客さまを探すところから始めました。長年ネットワークを提供してきたプロの事業者として、新たな需要の開拓は重要です。しかしお客さまや社内の営業に、従来の個別手配によるネットワーク再販とDCANの違いをなかなか理解してもらえませんでした。お客さまの拠点からサービスまでを一元提供でき、高い信頼性で「EINS WAVE」と接続できるDCANの持つメリットを社内外に啓蒙活動して、ようやく1年後あたりから軌道に乗ってきました」

 啓蒙活動が功を奏し、DCANの売り上げは次第に増加。提供開始から3年で契約数は目標値を突破。これは同社が想定していた年間1,000回線程度の目標値を大きく上回る結果です。しかも大半がリプレイスではなく新規導入であることを考えれば、かなり大きな成果と言えるでしょう。このヒットの理由を神保氏は以下のように分析します。

「導入が加速した一因は、DCANがTISインテックグループのデータセンターに広がったことです。これまでにもグループでの協業はあったのですが、統合された通信基盤をベースに私たちとグループ会社が互いのサービスプラットフォームを、異なるエリアや用途で販売できるようになったことが大きいと思います」

各種サービスを1つのバックボーンへ統合できる「DCAN」

 たとえば、インテックが提供するIaaS「EINS/SPSシリーズ」は、大半の顧客がセットでDCANを導入していると言います。またデータセンター構内からAzure、AWSといったパブリッククラウドサービスへの接続も増大しています。さらにDCANでの拠点間接続に加え、東京と大阪のデータセンターでIaaSを契約して冗長化するケースも増えており、BCP、DR対策を強化するソリューションとして根付きつつあります。

 鍛原氏はサービスを提供する側にも大きなメリットが生まれたことを実感しています。

「DCANを自社構築していちばん良かったのは、能動的なアクションが取れるようになったことです。たとえば、お客さまの厳しい納期を受けてモバイル回線で暫定的に接続し、次に本丸の専用線を引き込むようなことが柔軟にできるようになりました。これまではキャリアさんに問い合わせなければ判断できなかったことが、私たちの判断で迅速に対応できるようになったことは大きいですね。サービス利用を前提としたネットワークを提供し、ワンストップで運用するという攻め方ができるようになりましたので」。もちろん一元提供によりシステム全体の構成が可視化できたため、故障切り分け、復旧対応がスムーズになったことは言うまでもありません。

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マルチテナント事業者との連携、TISインテックグループへの拡大でさらなる躍進へ

 今後、DCANでは新たな接続先の拡大に加え、SDNNFVといった技術のサービス実装も計画しています。鍛原氏は将来的な展望を「現在、DCANが接続するパブリッククラウドはAzure、AWSですが、将来的に拡大していく予定です。選択肢が広いほどメリットは大きくなりますので、Arcstar Universal One と親和性の高い『Enterprise Cloud』との接続も視野に入れています。一方でマネージドサービスは私たちの本業であり、そこに強みがあります。ネットワーク仮想化技術のユーザー操作を開放するサービスも登場していますが、お客さまの状況を理解し何が最適かを考え、改善する部分は、私たちにお任せいただきたいと考えています。いかにお客さまの運用負荷を軽減し、本業に集中していただけるようなサービスを提供していきたいですね」と話します。

 今後、DCANのさらなる拡販に向けて、神保氏は重点的にSaaSを提供する事業者にアプローチを図っていきたいと言います。

「SaaSと多数のお客さまをつなぐプライベートネットワークをDCANで構築したいのです。DCANなら、お客さまが個別に設置しているプライベート接続のテナント同士を一定の条件でつなげて、システムやサービスを共有してコストを抑えられる効果があります。個社別のネットワークをつなぐ際のセキュリティポリシーについても、DCANのもつファイアウォール機能などを使えばきちんとルール化して接続させることもできます。そこからお客さまの拠点ネットワークの統合、WAN同士を接続するといった働きかけで、相互にシェア拡大を図っていければと思っています」

 さらに将来的には同社の主導で異業種のサービス利用者同士を結び付けて、新たな協業モデルを生み出していくアプローチを計画しています。

 顧客とサービスを高い信頼性で接続できるDCANの拡大により、これからもインテックでは、TISインテックグループ相互でのシナジー強化に向けた取り組みを進めていく方針です。どういった顧客にアプローチするか、どのようなサービスに接続を拡大するかを考えることが総合ITベンダーの腕の見せどころだと神保氏は見据えます。「今後、私たちはどことどこ、誰と誰を”つなぐ”のかに知恵をしぼっていく必要があります。協業による新たなチャネル開拓に積極的に取り組むと同時に、今後もネットワークのインテックとして、更にネットワーク基盤を進化させていきたいと考えています」

 ともすれば競合といえるインテックとNTTコミュニケーションズですが、もはやそのような考えは古いのかもしれません。両社のコラボレーションによって誕生したDCANは、B2B2Xモデルのお手本と言えるでしょう。自らの利益追求のみではなく、相互でWIN-WINの関係を築き、次世代に受け継がれるようなスタンダードサービスを育てていく。たとえ近しい業種でも協業できることを教えてくれた好例と言えるのではないでしょうか。

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Bizコンパス編集部

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