企業のネットワークにおける通信量の増大と、柔軟性を欠くネットワーク構成は、将来のITインフラをデザインする上で大きな問題となっています。複数のSaaS利用、海外拠点との通信の増加、IoTやビッグデータの活用など、ネットワークへの負荷は高まるばかりです。ところが、運用を外部ベンダーに任せきりにしてきたことでブラックボックス化しているうえ、ネットワークやハードウェアにスキルを持つ社員がいないため、前述の問題を解決できず、デジタルトランスフォーメーションへのシナリオが描けない、といった事態に陥ってしまうのです。このような現状を打破する手立てはあるのでしょうか。
なぜいま、ネットワークを「所有」から「利用」へと変えるのか?
■増え続ける企業の通信トラフィック
ビジネスで利用するアプリケーションの多様化、そしてコンテンツの大容量化に伴って、ネットワークインフラの負荷は増大し続けています。
Office 365に代表されるSaaSの利用拡大は、インターネットに接続するためのインフラにも大きな影響を及ぼします。特に最近では、セキュリティやコンプライアンスの強化を目的として、インターネットとの接続点をデータセンターやクラウドに集約しインターネットゲートウェイを構築するケースが珍しくありません。インターネット向けのトラフィックが増えれば、このインターネットゲートウェイがネットワーク全体のボトルネックになり、SaaSのレスポンス低下などの問題が発生しかねないでしょう。
また、ここ数年、多くの日系企業が事業の海外シフトを積極的に推し進めており、これに伴って海外拠点と日本を結ぶネットワークのトラフィックが拡大し、帯域を圧迫する問題が表面化し始めています。これらの課題を解決するために回線を増強すれば、当然コストに跳ね返ってしまいます。
■ネットワークがデジタルトランスフォーメーションの足かせに
ITを駆使して新規ビジネスの創造や既存事業の拡大を目指す、デジタルトランスフォーメーションに向けた動きが加速しています。
デジタルトランスフォーメーションに対応するべく、システム開発や運用の現場ではアジャイル開発やDevOpsといった考え方が広まっています。こうした新たな潮流を支えるべく、クラウドサービスは新たなテクノロジーを矢継ぎ早に追加してきました。そのような中、ネットワークは十分に変化に追従できていないのが現実ではないでしょうか。
デジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みでは、その有効性を確かめるためにPoCを実施することが一般的です。この際、すばやくPoCを実施するために極力既存の環境を使って検証が行われますが、ここで柔軟性に乏しい既存のネットワークが足かせとなっていることに気付くケースが少なくありません。とはいえネットワークに手を加えれば既存の通信に影響が生じるため、身動きできない状況に陥ることも十分に予測できます。
デジタルトランスフォーメーションに対応するためには、ネットワークにも柔軟性と迅速性が必要だと言えるでしょう。