2021.03.12
ニューノーマル時代に求められる顧客体験の設計第2回
デジタルとリアルを掛け合わせれば、顧客体験の価値は最大化できる
著者 浅井 杏子
<ケース3>リアルのような“わくわく感”を伴うデジタル体験
サービスの一部に身体感覚を伴う体験を組み込んだり、敢えて“準備”や“移動”、“待ち時間”など、デジタルには不要なプロセスを取り入れたりすることで、現状ではデジタルで代替しがたい“臨場感・身体感覚”や“特別感”を演出する試みが、旅行やエンターテインメントの領域ではじまっています。
例えば、大手航空会社や大手旅行代理店の提供するオンライン旅行では、事前送付された現地のグルメを味わえたり、敢えて行程に“フライト”の時間を設けたりすることで、旅の醍醐味をなるべく損なわずに、デジタルで体験できる工夫が盛り込まれています。
また、VR空間上で行われるライブイベントなどでは、ステージを準備している過程を見せたり、ステージのあるポイントまで“移動”するプロセスを設けたりすることで、演者が現れるまでの高揚感・会場の一体感、ライブ後の余韻など、リアル体験で味わうことのできていた“特別な体験”をデジタルで演出している例がみられます。
このようなリアル体験の良さを組み込んだデジタル体験の演出は、これまでリアル体験に重きを置き、だからこそ現在のコロナ禍で苦境に立たされている旅行やエンターテインメントの領域ならではの工夫です。しかし、顧客の心をつかむ魅力あるデジタルサービスを設計するにあたり、全ての領域においてヒントになる考え方だといえます。