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消費者はコロナ禍を経て、新たなデジタル顧客体験を求めている
2021.02.17

ニューノーマル時代に求められる顧客体験の設計第1回

消費者はコロナ禍を経て、新たなデジタル顧客体験を求めている

著者 浅井 杏子

 新型コロナウイルス感染症との攻防が長期化するなか、対面・接触を伴う事業やサービスが苦境に立たされています。その一方で、テレワークなどデジタル技術を活用した社会活動が急速に普及し、これまであまりデジタルに馴染みがなかった消費者もデジタルの活用機会が増加しています。

 社会の急速なデジタル化進展は、消費者の行動や価値観に大きな変容をもたらしています。例えば、総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、東京では、緊急事態宣言下の2020年5月に、比較可能な2013年7月以降初めての転出超過に転じ、6月に転入超過に戻ったものの、再び7月から11月(最新値)まで転出超過が続いています。これは、テレワークの定着化や、在宅時間が長くなったことなどにより、都心部に通いやすい立地よりも、部屋の広さや近隣の環境を重視するようになったことが要因の一つとみられています。

 総務省「令和2年版情報通信白書(2020年8月)」では、「従来の社会活動が極端に制限される中で、急速かつ強制的に社会のデジタル化が進んだことで、一部のサービスを除き場所にとらわれない生活・働き方が可能であることが人々の体験として実感された。この変化は不可逆的なものである」としています。

 このような状況下で、これまで対面のみを前提としてきた事業も、事業継続上のリスク回避の方策として、デジタル技術の導入検討が必須になってきています。ただし、消費者の行動や価値観が不可逆的な変容を遂げているなか、提供側は“緊急時の(ちょっと不便な)代替手段”に留まっており、顧客体験価値が損なわれているケースも散見されます。

 コロナ禍を経て、消費者から新たに求められる新たな顧客体験の在り方とはどのようなものでしょうか。

コロナ禍を経て急速に進化を遂げた、消費者のデジタル/リアル使い分け

 NTTデータ経営研究所が2020年11月に実施したwebアンケートの結果によれば、オンライン会議、オンライン飲み会/食事会などのさまざまなオンライン体験は、いずれもコロナ禍を機に初めて経験した層により利用者が急拡大したことがわかります。

 未経験者においても、コンサート/ライブの生配信やオンラインセミナー/イベントに興味のある層は1~2割程度存在しており、コロナ禍の長期化に伴いさまざまなイベントがオンライン開催となるなかで、今後もオンライン体験は拡大していくことが見込まれます(図1参照)。

図1:オンライン〇〇に関する経験/興味

 コロナ禍を契機に体験者が急増した“オンライン〇〇”ですが、コロナ禍が収束した後の利用継続意向をみると、内容により異なる傾向が示されました(図2参照)。

 特にオンラインの継続意向が高いのは、会議やセミナー/イベントへの参加で、1割程度が「基本的にオンラインのみ」と回答しており、「リアル中心(必要に応じオンラインを選択)」まで合わせると、7割程度がオンラインの継続意向を示しています。一方で、旅行は「リアル中心(必要に応じオンラインを選択)」を合わせても2割弱に留まり、リアルの体験こそ重視されていることがうかがわれます。

 デジタルは消費者にとって、既に“緊急時の代替手段”ではなく、コロナ禍が収束した先も“目的や場面に応じて使い分けるもの”になってきていることがわかります。

図2:コロナ禍収束後のオンライン〇〇の継続意向

 それでは、消費者はどのような目的や場面においてデジタルを選択し、どのようなときはリアル体験が望ましいと考えているのでしょうか。

 デジタルをコロナ禍以前から積極的に活用している、またはコロナ禍を機に活用を開始した人を複数人抽出してインタビュー調査を実施した結果、デジタル/リアル体験のそれぞれの価値について、図3に示すような要素が示されました。

 デジタル体験の価値として、最も多く挙げられたのは「(1)物理的な制約を受けない」です。遠隔でコミュニケーションやサービス提供が可能になることで、コロナ禍において様々な事業継続、生活の維持に大いに貢献したのはもちろんのこと、移動コストやそれに伴う金銭的・心理的コストが下がることで、これまで参加を躊躇していたような様々なイベントに初挑戦しやすくなったとの声も聞かれました。

 次に、「(2)受発信情報をコントロール」として、カメラアングルや字幕、付加情報の表示を目的や好みに応じて選択できたり、また発信者としても顔を見せないままコミュニケーションできたりするとの利点も挙げられました。AR技術を用いて自分の空間に対象を表示させたり、部屋にあるものと合わせたコーディネートを提案するオンライン接客を実現したりする「(3)異なる物理空間をつなげる」要素も、デジタルならではの価値です。また、デジタルならもちろん「(4)現実にはできない体験」を演出することも可能です。

 一方で、デジタルで代替しがたいリアル体験の価値として、最も多く挙げられたのは「[1]臨場感・身体感覚」を伴う体験です。また、デジタル体験が物理的制約から解放される価値を実感した反面、リアル体験は準備や移動、待ち時間等のコストをかけてまで体験したい「[2]特別感を演出」するものとして改めて認識されています。

 さらに、デジタル体験が目的や好みに応じて情報を効率的にカスタマイズできる反面、目的外の「[3]偶然の出会いを誘発」することは難しく、リアル体験はノイズも多いが目的外の“余白”から生まれる新たな気づきや世界の広がりをもたらすことがかけがえのない価値と捉えられています。

 また、リアルな場で自然と視界に入ってくる「[4]他者の存在を感じる」だけで様々な言外の情報を得ていたり、モチベーションを維持したりすることに役立っているということも、デジタル体験を比較したリアル体験の価値として実感されています。

図3:消費者が感じるデジタル/リアル体験の価値

 このように、デジタルを積極的に活用している消費者は、単純に遠隔でサービスを享受できるだけでない、デジタルならではの利便性を評価しています。同時に、現状ではデジタルで代替しがたいリアル体験の価値を改めて認識し、目的や場面に応じて組み合わせ、使い分けをしています。

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