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Bizコンパス

DXの潮流、CDOの挑戦
2021.06.25

デジタルトランスフォーメーションの実現へ向けて第68回

有識者が解説する「誤解だらけのサブスクとDXの関係性」

著者 Bizコンパス編集部

サブスクは定額でもなく、新しくもなく、BtoCでもない

 次に「DXとサブスクリプション」というテーマでプレゼンテーションを行ったのは、株式会社サブスクリプション総合研究所の宮崎琢磨氏です。

 「世の中でサブスクリプションというと、『定額課金』であり、『新しいビジネス』で、なおかつ『コンシューマー向けのサービス』だと思われている方が多いと思いますが、これは誤解です。

 サブスクリプション型ビジネスの一形態である電気や電話料金は定額と従量課金の組み合わせですし、毎月定額の家賃を支払う不動産賃貸は江戸時代からあるので、決して新しいビジネスではありませんよね。

 最近では工作機械のメンテナンスサービスや消耗品をサブスクリプション的に提供するビジネスモデルも登場しており、これはBtoB向けのサービスです」

株式会社サブスクリプション総合研究所
代表取締役社長
宮崎琢磨氏

 では宮崎氏が定義する「サブスクリプション」とはどのようなものなのでしょうか。

 「顧客との継続的な関係が担保されていれば、それはすべてサブスクリプションと言っていいと考えています。そう考えると、定額課金かどうかなどは、商品やサービスを構成する一要素に過ぎないことになります」

 さらに宮崎氏は、サブスクリプションビジネスにおける収益構造にも言及。定額課金の弱点について指摘します。

 「一般的に、顧客がどれくらいの頻度でどれくらいのものを買うのか、そして顧客の数がどれだけいるのか。この掛け算が収益になりますが、定額課金にすると購入頻度と購入額を固定してしまうことにほかなりません。残っているのは顧客数だけです。

 そのため、顧客数を極大化していくモデル以外は成立しづらくなります。サブスクリプションビジネスと聞いて、多くの方がBtoC向けサービスを思い浮かべるのは、BtoCであれば、顧客の数がほぼ無限といえるからです」

 一方、B2Bの世界では顧客数が限定的であるようなビジネスが少なくありません。一例としてガソリンスタンドに給油機を販売するビジネスを宮崎氏は挙げ、「給油機は世の中にあるガソリンスタンドの数以上は絶対に売れない。そういった限定された領域のビジネスで定額課金を指向すると、顧客数が極大化できないがゆえに行き詰まってしまうことを考えるべきです」と注意を促しました。

“三河屋のサブちゃん”に見るサブスクビジネスの本質

 サブスクリプションを生かした事業設計の具体例として宮崎氏が紹介したのは漫画「サザエさん」に出てくる三河屋さんのビジネスモデルです。そのなかで、宮崎氏が注目したのは顧客とのタッチポイントです。

 「サブスクリプションでは顧客との継続的な関係が必要になりますが、三河屋の場合はサブちゃんという明確なタッチポイントがあります。この人がお客さんとしっかりつながっている、つまりエンゲージメントが非常に強いわけです」

 さらに月ごとに代金を支払う「つけ払い」は、顧客であるサザエさん宅にとってサービスの利用を継続するインセンティブにもつながります。

 「顧客をロックインすることができれば、スーパーとの価格競争に巻き込まれる可能性は低い。さらに定額課金ではなくても、これまでの顧客動向から収益予測性も高く、三河屋のビジネスはDXの要素はゼロだけど『非常にサブスク的なメリットを持った事業構造』と言えるでしょう」(宮崎氏)

 最後に宮崎氏は、サブスクリプションもDXもビジネスそのものを考えることが共通していると指摘します

 「顧客との継続的な関係を必要としないビジネスモデルはありません。サブスクリプションを考えることはビジネスをDXすることにもつながるのではないでしょうか」

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