DXの潮流、CDOの挑戦
2021.04.02
デジタルトランスフォーメーションの実現へ向けて第63回
味の素社のDX戦略「規模を追う経営から、DXで社会を変革するパーパス経営へ」
著者 Bizコンパス編集部
DX3.0:「食と健康の課題解決」を実現する新事業の創出に向けて
「DX3.0」は、イノベーション創出による事業モデル変革のステップと位置付けられます。味の素グループでは、「外部パートナーと協創、協業をおこないCOLLECTIVE IMPACTを強くする方法」、「コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)でスタートアップに投資する方法」、「社内外から新事業アイデアを募集する方法」、「未来社会からのバックキャストで新事業を創出する方法」の4つの手法を使って、新事業の創出を目指しています。
「新事業の創出には、トライ&エラーを繰り返す“多産多死”が不可欠との説がありますが、私は賛同できません。なぜなら、投資家は“多産多死”の株式会社に投資しないからです。もちろん、新事業のアイデア募集段階は多産で良いと思いますが、リソース投入時は冷静かつ厳しい評価を下して確率の高い有望なプランに絞らなくてはいけないと考えています」(福士氏)
今、味の素グループは新規事業として、革新的な製薬CDMO(開発受託製造)サービス、再生医療・細胞治療など医療・治療の新たなモダリティに寄与するトータルソリューションサービス、味の素ビルドアップフィルム(ABF)開発で培った技術をベースにした電子材料開発、アミノ酸の栄養・生理機能を活用するメディカルフード事業などのパーソナル栄養に取り組んでいるといいます。
「パーソナル栄養は、成長著しい新領域で、『食と健康の課題解決』というパーパスのど真ん中をいく事業として有望視しています。我々はデジタル技術を活用し、患者さまにパーソナライズされた栄養を食品、サプリメント、メディカルフードなどでお届けし、人々の快適な生活と健康寿命の延伸に貢献することを目指します」(福士氏)
DX4.0:多様な組織・団体と連携し、社会のデジタル変容のリーダーシップを発揮したい
最終ステップ「DX4.0」で、味の素グループが目指す社会変革は、食と健康の課題解決となる新たなソリューションを社会実装して行くことです。しかし、このような社会変革は、味の素グループだけで実現できるものではありません。実現のためには、アカデミアやNGO、国連など社会課題に対する知見と影響力を持つ主体との連携が不可欠です。その認識のもと、現在、味の素グループは、多様なステークホルダーとの連携を進めています。
「2020年4月1日にスタートした弘前大学との共同プロジェクト『デジタルニュートリション講座』は、『DX4.0』につながる取り組みと考えています。これは世界最大規模の健康ビッグデータを保有している弘前大学が主催する岩木健康増進プロジェクトなどで得られたビッグデータを基に、アミノ酸代謝を解析するデジタル技術を持つ我々の共創を通じて、生活者の健康増進・栄養改善への貢献を図る研究講座です。
味の素グループは、こうした活動を通じて未来社会の『食と健康の課題解決』というパーパス実現に向けて社会変革のリーダーシップを発揮していきます」
※本記事は2021年2月時点の情報に基づき作成されています。