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Bizコンパス

DXの潮流、CDOの挑戦
2021.04.02

デジタルトランスフォーメーションの実現へ向けて第63回

味の素社のDX戦略「規模を追う経営から、DXで社会を変革するパーパス経営へ」

著者 Bizコンパス編集部

DX1.0:トップ直轄のリーダーシップでオペレーショナル・エクセレンス(OE)を導入

 味の素グループは、DXを4つのステップで実現すると宣言していますが、福士氏はその前段に重要な意味を持つ「ステップゼロ(DX0.0)」があったと補足します。

 「ステップゼロとは、これまでに取り組んできたテレワーク導入などを含む、いわゆる『働き方改革』です。味の素グループでは、各社員が働き方の効率化を進め、1人当たり約2,000時間だった平均労働時間を1,800時間程度に減らすなど、さまざまな成果を上げてきました。一見その成果は会社が主導して実現したように見えるかもしれませんが、実は一人ひとりの創意工夫、マインドセットチェンジによる自己変革の賜物です。

 『DX1.0』で掲げる、全社規模のオペレーショナル・エクセレンス(OE:業務の生産性向上戦略)の導入は『働き方改革』で成し遂げた変革の延長線上にあると考えています。今までは自己変革でしたが、それが全社、組織としての変革になるということを、社員に理解してもらうため、時間をかけて説明を重ねてきました」

 オペレーションの変革は、組織や個人に根付いたカルチャーを変えることと同義であり、決して容易に実現できることではありません。しかし、福士氏は、その課題は必ず乗り越えられると自信を持っています。

 「私はアミノサイエンス事業本部長時代に、事業ポートフォリオを6年間で完全に入れ替えた経験があります。そのとき最初に取り組んだのは、組織文化の可視化でした。JMAC(日本能率協会コンサルティング)の『組織文化診断』を実施し、一人ひとりの仕事への意欲や満足度、事業の運営状態などを評価しました。

 結果は芳しいものではなく、このままでは事業を伸ばすことはできないと考え、カルチャーを変えるためのオペレーション変革を実施しました。その結果、6年後には事業ポートフォリオを完全に刷新。ROA(総資産利益率)を5%から15%まで上げることに成功しました。これが私の原体験です」

 福士氏はこの原体験をもとに、今度はCDOとして全社規模のオペレーション変革に挑みました。しかし、グローバルにしかも全社レベルとなるとCDOの福士氏が旗を振り上げても、変革のスピードは鈍かったといいます。

 このままでは「DX1.0」はスピーディーに進まないと考えた福士氏は、途中から西井CEO直轄のリーダーシップでオペレーション変革を推進する方法にシフトチェンジを行います。これが功を奏して全社規模のオペレーション変革が一気に進展することになりました。

 「ニワトリが先か、卵が先かは、常に意見がわかれるところですが、ことDXに関しては、ニワトリが先という結論に達しました。ニワトリに卵を産む意思がなければ、卵は産まれないからです。つまり、リーダーに組織文化や戦略を変える意思がなければ、ポートフォリオを変えることも、業績を伸ばすこともできないのです。

 オペレーション変革を社長直轄で進めようと決断したのは、そのためです。社長が企業文化を変える意思を示したことで、社員全員に変革の機運が浸透し、戦略志向に変われたのだと考えています」

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