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Bizコンパス

DXの潮流、CDOの挑戦
2021.03.17

デジタルトランスフォーメーションの実現へ向けて第61回

「DX・脱炭素」でSDGsに貢献するビジネスがある!エバンジェリストが解説

著者 Bizコンパス編集部

無駄な電力を抑えつつ、電力の需給バランスを取るにはどうすれば良いのか?

 冒頭で触れた通り、日本では再生可能エネルギーの利用率は低い状況です。境野氏は再生可能エネルギーの利用率を高めるためには、欧州のような制度設計とシステム整備が必要と指摘します。

 「どの国でも、災害や故障などで1カ所の発電所が緊急停止しても電力を安定供給できるように、実際に必要な電力容量より1割ほど多い電力(待機予備電力)を常時確保しておくことを電力会社に義務付けています。日本では火力発電所を余分に稼働させて待機予備電力を確保しており、CO2をムダに排出していると言えます。

 他方、欧州では、需要家、つまり電力の利用者側の応急的な節電(例えば非常用電源の使用や生産設備の一時休止など)によって待機予備電力の一定割合を確保することが法律で義務付けられています。そのため、電力会社がICTを使って需要家の電機設備に節電要請の信号を送り、必要な時に必要な量だけ節電できるシステムが普及しています。エネルギーを無駄にしなくても済むよう、こうした法律やシステムの整備を日本でも進めるべきでしょう」

 境野氏はさらに、再生可能エネルギーの「制御不確実性」をクリアすることも重要であると指摘します。たとえば、太陽光発電では晴天時の昼間はたくさん発電できますが、夜間や降雨、降雪時には発電量が減ります。風力発電も安定的に風が吹く場所は限られており、季節や気圧配置によって発電量は変化します。再生可能エネルギーは、人間が制御することが困難な太陽光や風力をエネルギー源とするため、安定供給が難しいというのが弱点です。

 「電力会社は、電力の発電量と消費量を常に一致させる必要があります。そのバランスが崩れると、電圧や周波数が乱れ、電化製品や機械が正常に動かなくなります。比較的容易に発電量を制御できる火力発電とは異なり、発電量が不規則に変動する再生可能エネルギーを大量導入する場合、IoTなどを用いて不確実な発電量に応じて需要量を繊細に制御する『デマンドレスポンス(DR)』や、太陽光発電所や風力発電所からの供給量を遠隔から調節する『出力制御』を組み合わせた電力需給調整サービスが必要です。

 すでに米国や欧州では、電力会社からの要請にもとづき、ICTネットワークを使って、消費電力を秒単位、分単位、時間単位、日単位にコントロールできるデマンドレスポンスが整備されています。たとえば、フランスのエナジープール社というアグリゲーター(電力会社と利用者の間に立って電力の節電容量を売り買いする事業者)は、電力会社から委託を受け、工場やデータセンター事業者などにお金を払って年間契約し、ICTを使ってそれぞれの電機設備の稼働状況と節電余力を把握して、電力会社が要請する時間帯に必要な節電容量をすぐ確保するデマンドレスポンスサービスを提供しています。電力事業者、通信事業者、ITベンダー、アグリゲーターが協力し、自律的な制御を行うデマンドレスポンスの実装は、日本のスマートシティにとっても必須の条件です」

 ただし、デマンドレスポンスにおける利用者への節電は要請であり、強制力はありません。調整に失敗すれば、必要な節電量が確保できなかったり、逆に必要以上の節電が行われたりして大規模停電を起こす懸念もあります。境野氏は、この問題を解決するには、電機設備とICTと市場原理を組み合わせた高度な節電シミュレーションシステムが必要になると指摘します。

 「具体的にいえば、分野や産業を横断して、電機設備や発電設備の稼働状況や電力需給の予測データを広域かつリアルタイムに共有し、一定のルールや法律にもとづいて必要な節電容量をほぼ自動的に迅速に入札、落札し、節電を確実に実行できる電力需給データ連携プラットフォームが必要でしょう。これが実現できれば、再生可能エネルギーの大量導入も可能となり、脱炭素のスマートシティを実現できます。

 現在、欧州では、分散型のオープンな産業分野横断データ連携基盤『GAIA-X』の整備計画が進んでいます。GAIA-Xのユースケースには産業振興と並んで気候変動対策(グリーンディール)も入っており、スマートシティで再生可能エネルギーを活用し新しいビジネスを生み出すためのプラットフォームとして参考にすべき好事例といえるでしょう」

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