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元ネスレ社長の高岡氏が語る 「“新しい現実”の発見がイノベーションを生む源泉になる」
2021.03.12

デジタルトランスフォーメーションの実現へ向けて第60回

元ネスレ社長の高岡氏が語る 「“新しい現実”の発見がイノベーションを生む源泉になる」

著者 Bizコンパス編集部

契約社員や派遣社員の方、間接部門の社員もイノベーションは生み出す可能性がある

――しかし、小規模とはいえテストには失敗が付きものです。失敗を受け入れる文化と財政的な余裕が必要ですね

 だから、テストは小規模で実施するのです。5,000件以上テストしても優れたイノベーションは、1個創出できるかどうかです。つまり、99.9%は大きな成果を生まないのです。イノベーションの創出を本気で考える企業にはそれを受け入れる度量と予算は欠かせません。

 ですから、ネスレは、「NRPS法」に基づいて社員全員がイノベーション創出にチャレンジする「イノベーションアワード」というプログラムを実施したのです。

 多くの人がイノベーションは、人事制度的に高い評価を受けている人材が起こすものだと思い込んでいますが、私はそうではないと思っています。契約社員や派遣社員の方、間接部門の社員もイノベーションは起こせる可能性は十分にあります。人事部には人事の、調達部門にはサプライチェーンの、それぞれ“新しい現実”がありますから、イノベーションはどこからでも生み出せるのです。

 しかし、アワードをアイディアコンテストで終わらせてはいけません。社員に“新しい現実”を発見させ、ソリューションをつくらせ、具体的かつ小規模なテストを実践して結果を出さなければ、アワードを実施する意味がありません。当然ながらテストを実施するには費用がかかります。そこでネスレでは、人事研修用の年間予算9,000万円を、すべて「イノベーションアワード」に振り替えて費用を捻出しました。

――アワードは具体的にどのようなものだったのでしょうか

 アワードのグランプリ獲得者には賞金100万円と、ネスレ本社があるスイスへの往復ペアチケット(ビジネスクラス)。さらに、翌年度に社長直轄プロジェクトとして、そのプランを実施し、応募者本人をプロジェクトリーダーに抜擢します。階層も年齢も関係なく社長直轄プロジェクトを任されることが、最大のモチベーションになるのです。

 初年度は79件しか応募がなかったので、人事評価の20%を「イノベーションアワード」で判断すると宣言したら、翌年度から応募件数が10倍になりました。その後も毎年応募が増え、私が退任する頃には社員2,500人から5,500件の応募があるまでになりました。

 キットカットの高級ブティック「キットカット Chocolatery」も、このアワードでグランプリを取り、実現したプランです。この「キットカット Chocolatery」は、今ではネスレが世界規模で展開するプレミアム戦略となっています。

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