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元ネスレ社長の高岡氏が語る 「“新しい現実”の発見がイノベーションを生む源泉になる」
2021.03.12

デジタルトランスフォーメーションの実現へ向けて第60回

元ネスレ社長の高岡氏が語る 「“新しい現実”の発見がイノベーションを生む源泉になる」

著者 Bizコンパス編集部

高岡浩三(たかおか こうぞう)
 神戸大学経営学部を卒業後、ネスレ日本株式会社に入社。各種ブランドマネジャーなどを経て、2014年には自信が手掛けた「ネスカフェアンバサダー」が第6回マーケティング大賞を受賞。同年「The Internationalist」による「37 OUTSTANDING MARKETERS NAMED INTERNATIONALISTS」にも選出された。2017年5月よりケイアンドカンパニー(株)を設立。代表取締役としてDXを通じたイノベーション創出のプロデューサーとして活動している。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展や、新型コロナウイルスの感染症拡大など、企業をめぐる状況は刻々と変化しています。このような新しい枠組みに対応するため、多くの企業が「イノベーション」を創出しようと努力していますが、良い成果が上がっていないというケースも少なくありません。

 日本企業がイノベーションを生み出すためには何が必要で、何が足りないのでしょうか。元ネスレ日本(以下ネスレ)の社長兼CEOとして「ネスカフェアンバサダー」をはじめとする、数々のイノベーションを創出、現在はイノベーションコンサルタントとして活躍する高岡浩三氏に話を伺いました。

イノベーション創出は「問題解決能力」より「問題発見能力」が重要

――日本の大企業は“イノベーション欠乏症”と言われていますが、なぜ日本ではイノベーションが生まれにくいのでしょうか

 自前でイノベーションの創出が難しくなっているのは、日本に限らず世界の大企業に共通しています。そもそもイノベーションとは、未知のチャレンジですからトライ&エラーが欠かせませんが、組織が大きくなるとそのスピードが遅くなり、イノベーション創出が難しくなってしまいます。

 GAFAクラスの企業でも、今は自前でイノベーションを創出できず、M&Aで買ってくるケースが多いです。イノベーティブな中小企業やスタートアップを取り込み、それを広げる手法が大企業におけるイノベーション戦略の主流になっているのだと思います。

 しかし、日本企業の場合、スタートアップを取り込むオープンイノベーションもうまく機能していません。その理由は、社内に目利きがいないからです。イノベーションで成功した経営者や役員がいないから、イノベーションのシードが上がってきても結論を出せないのです。

――高岡様はネスレ時代にイノベーションを連発して世界的な評価を受けましたが、どうやってイノベーションを生み出したのですか

 150年の歴史を持つネスレには、現地の社長を登用しないという不文律がありました。当然、日本法人も不文律が守られていましたが、人口減少や高齢化などの影響で業績低迷が続いており、本社から優秀な人材を送り込んでも経営が好転しない状態が20年以上続いていました。もう誰がやっても難しいという話になり、「高岡に任せる」といわれ、初めて日本人社長に就任したという次第です。

 大役を任された私は縮小し続ける日本市場で、どうすればターンアラウンドできるか考え抜き、新しいマーケティングとイノベーション以外に道はないと考えました。しかし、そもそも「新しいマーケティング」や「イノベーションとは何か」という明確な定義がなかったので、私なりに定義することから始めました。

 その定義とは、「マーケティングは、顧客の潜在的な問題と顕在的な問題を解決するために付加価値をつくる行動とプロセスのこと」、「イノベーションは、市場調査しても見つからない問題、あるいは解決できないと諦めている問題を解決すること」です。この定義を定めたことで、初めてイノベーション創出には、問題解決能力より問題発見能力の方が重要であることが明らかになりました。

 しかし、市場調査しても見つからない問題を発見することは簡単ではありません。そこで、私は“新しい現実(New Reality)”に目を向けました。過去には存在しなかったけれど、今、起きている現実を直視するということです。たとえば、昔は60歳で定年退職して自分の老後を心配する時代でしたが、現代は「老老介護」という“新しい現実”が生まれ、現役世代の人が経済的な不安、親の介護などの問題に直面しています。これを解決するビジネスをつくれば、それがイノベーションになるというわけです。

 このように“新しい現実(NR:New Reality)”を発見し、その問題(P: Problem)を解決(S: Solution)することでイノベーションを起こす手法を、私は「NRPS法」と名付けました。

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