日本のものづくり産業は、新型コロナウイルスの感染拡大や米中貿易摩擦、急激な気候変動や自然災害、非連続な技術革新といった要因により、将来を予測することが困難な時代を迎えています。
経済産業省の「ものづくり白書2020」によると、このような不確実性が当たり前となるニューノーマルの中で、日本の製造業が生き残るには「企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)」が重要であり、それを高めるには「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進が鍵となるとしています。
日本の製造業は、これからどのように変革すべきなのでしょうか。2020年9月10日(木)、日比谷にオープンした製造業DXを体感できる世界唯一のショールーム「スマラボ東京(SMART FACTORY LABO TOKYO)」のコンセプトや展示からヒントを探っていきます。

製造業DXを加速させる「スマラボ東京」の狙い

Team Cross FA
ビジネス統轄
貴田義和氏
スマラボ東京は、ロボットとIoT技術を駆使したデモ機を展示し、製造業のDXから生産ロボットシステムをリアルに体感できるショールームです。同施設を運営するTeam Cross FAは、製造業のスマートファクトリー化に寄与する日本初のファクトリービルダーコンソーシアムとして発足。ビジネス統轄を務める貴田義和氏はTeam Cross FAを次のように説明します。
「私たちは幹事会社7社を中心としたシステムインテグレーター集団です。公式パートナーや公共機関と緊密な連携を取ることで、実ビジネスとして製造業のDXを一気通貫でサポートしています。強みは全プロセスを1つの窓口で提供できることにあります」(貴田氏)
プロデュース統括の天野眞也氏は、日本の製造業が抱える課題を設備投資が進まないことによる、生産性の低下だと指摘します。

Team Cross FA
プロデュース統轄
天野眞也氏
「国内製造業の設備投資は停滞傾向にあります。旧型設備が残っているために生産性が低迷し、さらに人手不足によって立ち行かない工場も少なくありません。このような課題を解決するキーワードは、ダイナミック・ケイパビリティとDXしかありません。
日本の製造業でDXが加速しない最大の要因は、デジタルデータがリアルな工場設備と連携できていないことにあります。スマラボ東京は、これらを高度に連携させ、生産設備から生み出されるデータを最大限活用し、実際の生産ラインの自律コントロールだけではなく、リアルタイムに必要な情報を把握し、迅速な経営判断に結び付けるという実プロセスを体験できるショールームです」(天野氏)
スマラボ東京のロケーションは、東京・日比谷です。拠点を都心に据えたのは、製造や物流業界を中心とした企業の経営層や、産業政策の立案・実行に関わる官公庁、最新トピックスを配信するメディア、製造業DXに取り組むイノベーターなどが気軽に集える場を目指しているためです。
「足を運んでいただきたいのは、ダイナミック・ケイパビリティの必要性を本質的に理解していて、変化を恐れずに新しい一歩を踏み出すイノベーターの方たちです。スマラボ東京の狙いは、自社のDXを加速する技術やアイデアに出会えたり、未来の製造業やDXの姿などを自由に語り合えたりするような“機会”の提供にあります」(貴田氏)
貴田氏はスマラボ東京には、3つのコンセプトがあるといいます。
「1つ目は“デジタルとリアルを融合した本質的な製造業DXソリューションを、目の前で体験・体感できること”です。一般的なDXは、デジタルで新しい価値を生み出すストーリーによって語られます。しかし、工場の多くはリアルです。
実はデジタルなストーリーにリアルの設備が追従し、連動して動いているケースは世界にも前例がありません。これを実現できるモデルケースを、デモ機やデモ動画で皆さまに体感していただきたいと思っています。
2つ目は“自社の本質的な課題を発見し、DX実現のステップを明確にする気づきを与えること”にあります。製造業のDXを実現させるゴールの描き方や構想の立て方、ステップを進めるノウハウを展示物やセミナー動画などで提供しています。
3つ目は“特定のベンダー、メーカーにとらわれないDXの仕組みが構築できること”です。適材適所のマルチメーカーおよび最適化ソリューションをできることもスマラボ東京の重要なコンセプトです」