スマラボ東京の展示の目玉は、「DX型ロボットジョブショップ」です。これは「ジョブショップ」と呼ばれる機能別に配置された生産工程をデジタルツインに基づく自律制御で最適化する次世代DXコンセプトラインです。
次世代DXコンセプトライン「DX型ロボットジョブショップ」

全工程汎用ロボット+最新センシングで完全自動化、段取りレスを実現したロボットシステムパッケージ。生産投入指示コントロール、タクトや工程数需給変動対応、エネルギーマネジメントなどをデジタルツインで最適化する
DX型ロボットジョブショップの開発に当たったTeam Cross FAの飯野英城氏は、開発の経緯を次のように解説します。

Team Cross FA
技術統轄
飯野英城氏
「これまでの生産ラインの多くは直線的なコンベアラインで構成されているため、追い越しができず、順番通りにしか製品が作れませんでした。これでは、デジタルで変革を進めようと思っても現場では追従できません。そのため、直列ではなく並列で製品が作れるシンプルな構造や、デジタルで考えたことをストレートに具現化できる仕組みが必要だと考えました」(飯野氏)
在庫や受注の状況が刻々と変化する現代において、固定された直線的な従来の生産ラインではスピーディで柔軟な対応ができません。いくら優れたアイデアがあったとしても、現実の生産ラインがガチガチに固定されていてはDXを成し遂げることはできないのです。そこで飯野氏が考えたのは、状況に応じて工場の生産ラインが自律的に変化する仕組みでした。
「DX型ロボットジョブショップの生産ラインは、治具レスのねじ締め、組み立てなど単機能の設備の組み合わせで構成されています。このため生産計画に応じた生産ラインのレイアウト変更が可能です。さらにAGV(Automatic Guided Vehicle)という自動搬送機が各工程をどんどんわたり歩いて、ときには前のAGVを追い越して製品を作っていきます。つまり、DXがデジタルツインで検証した最適なものづくりのオーダーに柔軟に対応できるのです」(飯野氏)
もちろん、DX型ロボットジョブショップの生産ラインのデータはリアルタイムにクラウドにアップされ、さらにデジタルツインで検証を行うことで次の生産計画にフィードバックされます。現場の生産ラインを稼働させながらPDCAを回し、状況の変化に迅速に対応できる変種変量生産が実現できるようになるのです。
そのほかにも、スマラボ東京には未来のものづくりの気づきにつながる展示が多くあります。
「展示しているものの多くは、人手による作業を自動化するものですが、人の仕事が奪われるという心配はありません。製造業DXによるスマートファクトリー化が進んでいけば、たとえばモノづくりからコトづくりへのシフトなど、人にしかできない創造的な仕事がデジタルな領域で増えるからです」(天野氏)
3Dピック&治具レス組立システム

3Dビジョン連携によるバラ積みピッキング、ロボット・サーボによる協調制御で多品種少量生産に対応した治具レスの嵌めあい動作を実現している
AI食品ピッキングシステム

従来、自動化が困難といわれていた千切りキャベツのような不定形な食材の自動定量ピッキングを、機械学習の一種「強化学習」の技術を用いて実現している
お弁当盛り付けロボットシステム

人手以外では無理とされていたから揚げなどのおかずの盛り付けからふた閉め、番重への積み付けなどの自動化を最新画像センサとロボットにより実現している。