「SDGs」という言葉を、ビジネスシーンで目にした、あるいは耳にしたことがある人は多いでしょう。SDGsとは「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals)を意味する言葉で、2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2016年から2030年までの国際社会が目指すべき共通の目標です。
SDGsでは、持続可能な世界を実現するために、17のゴール、169のターゲット(達成基準)が設けられています。すでに世界各国で、産官学が連携してSDGs達成に向けた取り組みが推進されています。
しかし、NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)のエバンジェリストである境野哲氏によると、日本におけるSDGsへの取り組みは欧州などに比べると遅れている面があり、この遅れが日本企業のビジネスにもマイナスの影響をもたらす可能性があるといいます。
日本は、SDGsの取り組みにどのような点で遅れを取っているのでしょうか。境野氏に、日本や世界の現状と日本企業がSDGsに取り組む意義やそのポイントを聞きます。
SDGsに貢献するICT活用について、次ページより簡易アンケートが表示されます。最も多かった回答についてエバンジェリスト境野氏の解説記事を後日掲載します。ぜひご協力ください(全1問)
目次
日本は「環境」「人権」への対応が遅れる“SDGs後進国”
日本のSDGs達成に向けた取り組みは、世界でどのように評価されているのでしょうか?たとえばケンブリッジ大学が今年発表したレポート「Sustainable Development Report 2020」の国別のSDGs達成度ランキングでは、日本の総合順位は116カ国中17位となっています。
一見すると、日本の17位という順位は、日本よりGDPが大きいアメリカ(31位)や中国(48位)よりも高い順位となっており、良い数値のように受け取られるかもしれません。
しかし境野氏は、この総合順位を額面通りに受け取るのは早計であると注意を促します。
NTTコミュニケーションズ株式会社
エバンジェリスト
境野哲氏
イノベーションセンタープロデュース部門スマートファクトリー推進室/スマートシティ推進室を兼務。RRI(ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会)、building SMART Japan、経産省 新たなガバナンスモデル検討会等に参画。RRIでは「IoTによる製造ビジネス変革WG」内に「グローバルデータ流通管理基盤検討サブWG」を立ち上げ、社会課題を解決するための国際データ管理の要件を検討。「未来の社会に役立つ産業データを適切に管理・共有できる社会基盤(インフラ)をつくり、日本の産業力を向上させる」ことを目的に、ドイツIDSAなどと協力して製造業界のデータ流通基盤の議論・提言に取り組む。
「たとえば、気候変動対策では、アメリカは、トランプ大統領がパリ協定からの脱退を決めるなど消極的な姿勢を示していますが、州政府レベルで見ると気候変動対策に着々と取り組んでいる州もあります。また、中国は、太陽光発電や風力発電など自然エネルギーの年間導入量が世界1位で、電気自動車への転換でも世界のトップ水準にあります。
ケンブリッジ大学のレポートでは、日本のSDGs達成度について、SDGsの17の分野のうち『平和』『教育の普及』『産業インフラ』といった点を高く評価しています。一方、『気候変動対策』、『陸上の生命』、『水中の生命』といった地球環境に関する課題や、『男女平等』の人権的な課題、海外に対する経済支援などに関する『目標に向けたパートナーシップ』の取り組みでは、残念ながら不十分という評価をくだされてしまっています」(境野氏)
つまり日本におけるSDGsの達成状況は、分野によって偏りがあり、地球環境や人権保護など比較的新しい社会課題に対する取り組みがまだまだ進んでいない、“SDGs後進国”のような状況にあるともいえそうです。