企業規模が大きくなるほど、社内に根付いたルールを変える難易度は高くなります。多くの社内関係者にルール変更の必要性を納得させる必要があるためです。
そこでSmart Workstyle推進室ではNTT Com社内に、まず社内ルール適用外のエリア「特区」をつくりました。そこで「交通費申請プロセスの削減」「調達プロセスの自由化」という2つの施策のトライアルをスタートさせています。
交通費精算プロセスの削減は、「モバイルSuica」へのチャージを法人クレジットカードで行い、交通機関を利用するという非常にシンプルな施策です。
「これにより従業員は交通費の立て替えや申請業務がなくなりますし、管理者も振り込む手間がなくなります。さらに、利用データをチェックする場合、人手であれば膨大なログからピックアップしてチェックしなければならず、時間もコストもかかります。
一方、コンピューター(AI)であれば入館ログやスケジューラー、位置・エリア情報も含めた全データの適正チェックを過去に遡って全件監査できます。この網羅性は不正利用に対する牽制にもなるでしょう」(川田氏)
実際に、NTT Comの営業部を対象にトライアルを行った結果、満足度調査では100%を記録しました。忙しい月末に発生する、面倒な交通費申請の手間がなくなったことが満足度につながったといいます。
調達プロセスの自由化は、従業員に法人プリペイドカードを配布し、AmazonなどのECサイトで商品購入ができるようにする施策です。この施策の狙いは、従業員に会社で定めた調達システム以外の選択肢を与えることにあります。
「社内で定められた調達システムで購入する場合、社内稟議に2時間、在庫がない場合には納期まで2週間かかることもあります。プリペイドカードを利用して、発注先を限定しなければ、発注は5分で済み、早ければ翌日には商品が届くようになります。しかも、頼んだ商品が会社に届く調達システムと異なり、自宅での受け取りも可能です」(川田氏)
各施策から見えてきた従業員のニーズ
これらの施策を通して、従業員から寄せられた声を整理すると、「自ら働き方を選べる」「自分で考え行動できる」「無駄な作業から解放される」という3つのポイントが見えてきました。
「このニーズに答えることで業務の無駄がなくなり、生産性が高まるだけではなく、従業員のモチベーションを高める、健康面を改善するといった副次的な効果も生まれてくるのではないかという仮説に辿り着きました。このような取り組みを続けることで、すべての従業員が自由に活躍できる世界をつくりたいと思っています」(川田氏)
施策から生まれたサービス「Smart Go™」と「Staple」
