新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛要請を受けて、多くの企業でテレワークが普及するなど、従来の働き方を見直す動きが加速しています。しかし、その一方でピークが過ぎたと判断するや否や、満員電車での通勤を再開し、従来のオフィスワークに戻した企業も少なくありません。
そもそも、コロナ以前から政府主導で「働き方改革」は推進されてきました。それでも多くの企業で、働き方改革はいまだ重要な経営課題の一つとなっています。
なぜ、働き方改革はなかなか根付かないのでしょうか。NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)は社内外に見られるこの課題を解決するために、組織変革を前提とした働き方改革を推進。2019年10月には、「Smart World」構想の柱の1つとして、「Smart Workstyle推進室」を設立しました。
Smart Workstyleは従業員のパフォーマンス最大化と組織の枠組みを超えた新たなコミュニケーションにより、新たな価値を創出するワークスタイルの実現を支援するDXソリューションです。同室長である川田英司氏は、この取り組みの大前提として従業員を“信じる”ことの重要性を説きます。
働き方改革を妨げるのは“性悪説”かもしれない
NTT ComのSmart Workstyle推進室は、働き方の発想を変えて「全ての働く人が、最適な働き方を選び、活躍できる世界」を、あたりまえにすることを目標に掲げています。
あたりまえの“手本”は、スマートフォンとネットワークさえあれば簡単に人とつながり、欲しいものが手に入るコンシューマーの世界です。

NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部 事業推進部
Smart Workstyle推進室 室長
川田英司氏
「現在、コンシューマーの世界にはGAFAなどによる便利なサービスがあふれており、不便なサービスは淘汰されます。一方ビジネス、エンプロイーの世界には、利便性よりもルールが重視されるので、まだまだ使いづらい仕組みが存在し、他に選択肢がないため淘汰もされません。
このため、申請書や帳票を作成・印刷し、上長承認サインをもらい、PDFファイルにして申請・提出する、分厚い操作マニュアルを数十ページ読まないと利用できない非効率な社内システムがなくならないのです。」(川田氏)
川田氏は、問題の根本は “性悪説”でルールがつくられていることにあると指摘します。
「ルールを重視するあまり、利便性は二の次になってしまっています。一度、不正が発生すると再発防止策として、手間のかかるプロセスを追加したり、社内のバックエンド側では、複数人の担当者・管理者が不正を見落とさないようチェックを重ねています。ここに日本での働き方改革が進まない落とし穴があります。様々なものをデジタル化し、適正かどうかの判定は、人からコンピュータ(AI)へシフトさせることで、無駄な業務はなくなり、時間も短縮でき、結果的にコストも抑えられるのではというのが取り組みの発端です」
Workstyle変革DXソリューションのコンセプト
現在、Smart Workstyle推進室では「Workstyle変革DXソリューション」という取り組みを進めています。これはデータ利活用、デジタル化、モバイルファーストの視点から「全ての働く人が、最適な働き方を選び、活躍できる世界」の実現を目指すものです。
このようなデジタル面からの取り組みに加え、川田氏は企業内の制度やカルチャーを変えていくことも重要になるといいます。
「私たちは、社会やビジネスで将来の予測が困難な状態である“VUCA(ブーカ)”の時代に突入しています。この時代に、従来の全社一律で全従業員に平等なルールでは、突発的な変化には対応できません。
これからは従業員を“信頼し、適正チェックはコンピュータ(AI)に任せる”という前提のもと、一人ひとりが柔軟に状況を判断し、自律的に行動できる“従業員ファースト”のルールづくりや、環境の見直しが必要になってくるはずです」