そもそも企業が取り組む事業は、独自の技術やノウハウといった利益を生み出すコアコンピタンスの領域と、他の企業も同じように取り組んでいる収益に直結しない共通する普遍的な領域に二分されます。
たとえば銀行ではマネーロンダリング対策は必須の取り組みですが、売上や収益拡大といった価値を生むことはありません。そのような銀行のお客さまとの対話から、赤堀氏は製造業を変革するアイデアがひらめいたといいます。
「思いついたのは、“業界協調型デジタルプラットフォーム”の構築です。製造業のお客さまが共通して抱える無駄や重複の多い業務を“共創協調領域”と名付け、個社別ではなく業界全体でデジタル化、ユーティリティ化したプラットフォームを実現できればと考えています。このプラットフォームを利用すれば、これまで共創協調領域に割いていたリソースをコアコンピタンス領域に集中させることが可能になります」
業界協調型デジタルプラットフォームをうまく運用していくためには、企業間のデータ連携が不可欠ですが、当然そこにはデータを安全に流通させる仕組みが必要になります。
「共創協調領域であっても、場合によっては競合する企業のデータを一緒に扱うことになりますので、各社のデータをセキュリティやガバナンスの観点から安心、安全に取り扱う『DATA Trust®』構想を具現化する開発を進めています。加えていままで私たちが培ってきた製造業向けAIやデータ分析の知見を生かし、お客さまのコアコンピタンスを高めるサポートも行います」(赤堀氏)
Smart Factoryのコンセプト
製造業のお客さまから相談を受けた際、赤堀氏はまず抱えている課題や目標を共有し、安易にPoCを回さないというアプローチを大切にしているといいます。
「私たちはCoB(Consideration of Business)というビジネス性の検証を行う標準的なプロセスを持っており、それを用いて施策が生み出す価値を算定します。そこでお互いが納得いく予測ができたらソリューションやサービスの選定に入ります。“PoC貧乏”という言葉があるように、お客さまや市場に認められないビジネス性の欠如した施策は継続が困難だからです」