2020年8月の人口推計によると、日本の65歳以上の人口は約3,614万人(概算値)で、総人口の約39%を占めています。
このように高齢化が進む日本社会では現在、「MedTech(メドテック)」や「ヘルスケアIT」と呼ばれる、テクノロジーを医療領域に活用する取り組みが進められています。たとえば、電話やビデオ会議の仕組みを使って診療を行うオンライン診療も、テクノロジーの活用例の1つです。日本も現在、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染症防止のために、オンラインによる診療や服薬指導が、特例的に認められています。
こうした医療・ヘルスケア分野におけるテクノロジーは、我々の健康を、どのように支えてくれるのでしょうか?
NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)では、「Smart World」構想の柱の1つとして、医療プロセスの革新を支援する「Smart Healthcare」という取り組みを進めています。今回は、Smart Healthcare推進室の室長である田畑 雅章氏に、医療・ヘルスケア分野におけるテクノロジーの活用法について、話を聞きました。
散らばったデータをデジタルで集約すれば、「健康」の分析ができる
田畑氏は、医療・ヘルスケア業界のDXを推進する「Smart Healthcare」をスタートさせた背景として、医療・ヘルスケア領域では、データが“偏在”しており、うまく活用できていない現状を指摘しました。

NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部 事業推進部
Smart Healthcare推進室 室長
田畑 雅章氏
「人間は生まれてから死ぬまで、病院で受診をしたり、健康診断を受けるなど、医療やヘルスケアに関わるさまざまなサービスを利用することになります。その過程において、健康に関するデータが数多く生成されます。
これらのデータは、各医療機関やサービスごとにばらばらに偏在していますが、デジタル化し、個人に紐づく形で連携すれば、散らばっていたデータに横串を通して活用することができます。そのような形でデータを連携すれば、たとえば“どのような人がどのような病気にかかりやすいのか”といったような健康に関する傾向が分析できるようになり、ヘルスケア分野における新たな価値創造につながるでしょう」
しかし、各医療機関やサービスに散らばっているデータを、どのように連携すれば良いのでしょうか。田畑氏はそのための手段として「ID連携」を挙げました。サービスによって異なるID同士を連携することで、偏在しているデータがまとめられるといいます。
こうしてまとめたデータを、業界では「ライフコースデータ(※)」と呼びます。多くの人のライフコースデータをビッグデータとして分析・活用すれば、医療関連の研究や創薬、ヘルスケア商品の開発につなげることも可能になります。
※ライフコースデータ…乳幼期・幼少期から学童期、成人、高齢期に至るまでのデータを一元管理し、予防医療や医療全体の評価に役立てられるデータのこと。
ライフコースデータの連携・蓄積・分析・活用