経産省ではDXに取り組む企業を増やすために、DXレポート発表後も「デジタル経営改革のための評価指標(DX推進指標)」や東京証券取引所と共同で選定を行う「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」などの施策を展開しています。
田辺氏はこれらについて、IT部門が経営層とコミュニケーションするきっかけにして欲しいといいます。
「IT部門はまだまだ、経営層からコストセンターとして安くシステムを作ることが仕事と捉えられている面があります。ビジネスの根幹としてITを考えるのではなく、人が対応していた業務をITに置き換える、業務効率化や改善といったコンテクストでのIT活用です。
一方、欧米ではプロフィットを生み出すツールとしてITを捉え、DXを加速させています。
これまで発表したレポートや指標などのツールは、IT部門がプロフィットを生み出すためにどのような取り組みが必要か?という視点からまとめています。ですので、経営層にIT投資を提案するとき、説得材料のひとつにしてください。例えば、DX推進指標にある自己診断シートを使って『この9つのキークエスチョンだけ回答してください』といった依頼をすることも、DXについての経営層との対話のきっかけになるのではと思います」
政府もDXを後押しするべく、2020年5月に「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」を施行しています。この法律では、DXに関する優良な取り組みを行う事業者を認定する制度を設けており、この秋から本格的な運用が始まる予定です。
「コロナ禍によってビジネスが厳しくなり、2025年問題も迫る中でDXに取り組むことは簡単ではないと思います。そのため一部の企業では、どこかのタイミングでレガシーシステムとの決別を判断する必要が出てくるかもしれません。既存システムをすべて新たなシステムに乗せ換えるのではなく、例えば、5年以上前のデータはもう移行しないと割り切る。2025年の崖への対応を、ビジネスの新たなスタートラインと捉える。そうすることで、システム移行に伴う検討事項も大幅に減らすことができます」
田辺氏が話すように、“崖”は目前に迫ってきています。企業はDXの取り組みを本格的に開始すべきでしょう。